臨床試験(治験)について
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現在、課長1名(兼務)、実施部門として臨床試験コーディネーター(CRC)4名(専任)、CRC補助3名と事務部門5名(専任)で構成されています。
臨床試験管理室事務局では治験(GCPに規定されている)と製造販売後臨床試験、使用成績調査等に関する事務を行っています。
また「治験審査委員会」「倫理審査委員会」「利益相反委員会」の事務局業務を行っています。
1少人数の健康な成人が対象:(第 Ⅰ 相)
「くすり」の量を徐々に増やし、「くすり」として安全かどうか調べます。
2少人数の健康な成人が対象:(第 Ⅱ 相)
「くすり」の使い方・使用量(用法・用量など)を調べます。
3少人数の健康な成人が対象:(第 Ⅲ 相)
患者さんの協力で最終的な「くすり」の効果と安全性の確認を行います。
4厚生労働省に結果を提出
審査の結果、承認された後に医薬品として医療機関で使用されます。
1少人数のがんと診断されている患者さんが対象:(第 Ⅰ 相)
安全性をみながら「くすり」の量を徐々に増やし、安全な最大量を求めます。副作用についても十分調査します。
また、体内での動き方を調べます。
2少人数のがんと診断されている患者さんが対象(1)より多い人数の患者さんが対象:(第 Ⅱ 相)
(1)で求められた「くすり」の適切な使用量で腫瘍の縮小率を確認し、副作用についても調査します。
3がんと診断された多くの患者さんが対象:(第 Ⅲ 相)
従来使用している「くすり」と比べて安全性と効果を比較し、よりすぐれたものであるか否かを確認します。
4厚生労働省に結果を提出
審査の結果、承認された後に医薬品として医療機関で使用されます。
治験では「くすりの候補」を人に使用することになるため、治験に参加していただく方々の人権や安全が最大限に守られなければなりません。それと同時に、「くすり」の候補の効果と安全性を科学的な方法で調査する必要があります。そのため治験を行うにあたり厳しいルールが国によって定められています。そのルールを「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」(GCP※と呼びます)といいます。このルールに従って製薬会社や病院が治験を行っています。
※GCPとは?
「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」という厚生労働省令が定められ、この省令がGCPと呼ばれています。この省令の実施に関しては、「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について」という厚生労働省からの通知があります。 この省令に従って、厚生労働省(審査、承認を行う)、製薬会社(治験依頼者)、病院(治験実施医療機関)が治験を行っています。 当センターでもGCPに従って、院内に委員会を設置して審査を行っています。この委員会は「治験審査委員会」と言います。この委員会では医療関係者以外の委員や当センター職員以外の外部委員も交え、申請のあった治験を実施してもよいかどうか、倫理性や試験の科学性について審査します。
医師から現在の病状や治療方法も含め、治験について文書を用いて説明を受けます。 その説明の内容をよく理解した上で、患者さんの自由意思で治験に参加するかどうかをお決めください。説明を受けたその場ですぐに返事をしていただく必要はありません。持ち帰っていただき、ご家族と相談されるなど、よく考えていただいてから返事をしてください。 治験への参加をお断りになられても、今後の治療等について不利益な取り扱いを受けることはありません。また参加を決定された後でも途中で参加を取りやめることができます。その場合も不利益な取り扱いを受けることはありません。
治験に参加するメリットは、いくつかあります。
ポイント1 | 多くの専門医師が共同で作成した治験計画書に従って計画された診断や治療が受けられます。治験は試験的側面もあるため通常の診察より詳しい検査や診察が行われ、病状などをより詳しく知ることができます。 |
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ポイント2 | 新しい薬や新しい組み合わせの治療を受けることができます。今ある薬より、効果があると予想される新しい薬や医療をより早く受けることができます。 |
ポイント3 |
治療費の負担と治験参加に伴う負担の軽減 治験に参加した場合、費用について国の定める制度(保険外併用療養費制度)が適用される場合があります。この対象となる期間と対象部分は治験の参加同意日から終了時検査日(又は追跡終了日)までの期間で、この間に患者さんが受けた検査(血液検査や尿検査、レントゲン、CT等の画像診断など)の費用は治験を実施(依頼)している製薬会社から支払われます。そのため普段患者さんが診察を受けた際に支払っている健康保険などの一部負担が少なくなる場合があります。 ただし治験に参加していただくことで、決められた日に来院していただく日数が通常の治療よりも多くなることがあります。そのため、患者さんに交通費などに充てていただく「患者負担軽減費」を当院からお支払いしています。 ※ただし、製造販売後試験は原則として対象にはなりません。 |
ポイント4 |
CRCがサポートします 担当となったCRCが同意日から終了まで診察時のサポートも含め、来院時の面談や電話でのご相談、質問などに対応しています。 ※「臨床試験コーディネーターとは?」をご覧ください。 |
ポイント5 | 将来同じ病気で苦しむ患者さんの治療に役立つ「新しい薬」を誕生させるという社会貢献ができます。 |
治験に参加するデメリットもいくつかあります。
ポイント1 | 有効性がみとめられない場合もあります。 参加していただく試験で使用する「治験薬」が必ずしも「標準的な薬」と同等あるいは優れているというわけではありません。そのため「治験薬」の有効性が、「標準的な薬」より高いと予測されている場合でも、有効性が認められない場合があります。 |
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ポイント2 |
予想しない副作用の可能性 治験は非臨床試験(動物などを用いた試験)などで安全性を確認した上で行っていますが、予想しない副作用が発生する可能性があります。 万が一、治験に参加したことによって副作用や健康被害が発生した場合、最善を尽くして治療にあたります。また、新たな副作用の情報を入手した場合、速やかにお知らせ致します。 |
ポイント3 |
通院回数が増える場合があります。 治験に参加することで、慎重に診察するため通常の診察より検査の頻度が多くなったり、通院回数が増え、患者さんの負担が増える場合があります。 |
ポイント4 |
CRCがサポートします 担当となったCRCが同意日から終了まで診察時のサポートも含め、来院時の面談や電話でのご相談、質問などに対応しています。 ※「臨床試験コーディネーターとは?」をご覧ください。 |
ポイント5 | 治験薬の内服方法や生活上の注意など、気を付けて守らなければならないことがあります。 |
ご自身の体調等については、細かいことであっても必ず担当医師や担当CRCにご相談ください。特に、安全面を確保するために治験期間中は市販薬の服用や、他の病院で診察を受けられる場合には必ず担当医師や担当CRCに連絡くださいますようお願いします。
臨床試験コーディネーターはCRCと呼ばれます。CRCとは「Clinical Research Coordinator:臨床研究コーディネーター」の略称です。わが国では、臨床試験コーディネーターと称されています。 CRCは患者さんと医師との橋渡しとして、病院の他のスタッフと連携を取りながら治験が適正かつ円滑に実施できるように調整する唯一の「臨床試験(治験)スタッフ」です。
当センターでは治験や製造販売後臨床試験を円滑に行うために「臨床試験管理室」を設置しており、現在3名のCRCが所属しています。 CRCの主な仕事の内容は、次のとおりです。
番号 | 実施診療科 | 対象疾患 | 治験段階 |
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1 | 消化器内科 | 胃がん | 第Ⅲ相 |
1 | 呼吸器内科 | NTRK1/2/3、ROS1 又はALK 遺伝子再構成陽性の固形癌 | Ⅱ相 |
2 | 呼吸器内科 | 肺がん (非小細胞肺がん) | Ⅲ相 |
3 | 消化器内科 | 食道がん | Ⅲ相 |
4 | 呼吸器外科 | 非小細胞肺がん | Ⅲ相 |
5 | 呼吸器内科 | RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌、甲状腺髄様癌、 及びRET活性が亢進したその他の癌を含む進行固形癌 | Ⅰ/Ⅱ相 |
6 | 腫瘍内科 | 子宮体がん | Ⅲ相 |
7 | 消化器内科 | 胃腺癌又は食道胃接合部腺癌 | Ⅲ相 |
8 | 腫瘍内科 | 乳がん | Ⅲ相 |
9 | 消化器内科 | HER2陰性の胃腺癌又は食道胃接合部腺癌 | Ⅲ相 |
10 | 腫瘍内科 | 子宮体がん | Ⅲ相 |
11 | 放射線治療科 | 肺がん | Ⅲ相 |
12 | 婦人科 | 卵巣癌、卵管癌又は原発性腹膜癌 | Ⅲ相 |
13 | 呼吸器内科 | 非小細胞肺がん | Ⅰ相 |
14 | 消化器内科 | 食道がん | Ⅲ相 |
15 | 腫瘍内科 | 卵巣がん | Ⅰ相 |
16 | 頭頸部外科 | 頭頸部がん | Ⅲ相 |
17 | 消化器内科 | 胆道がん | Ⅱ相 |
18 | 呼吸器内科 | 進展型小細胞肺がん | Ⅲ相 |
19 | 呼吸器内科 | 転移性非小細胞肺がん | Ⅲ相 |
20 | 呼吸器外科 | 非小細胞肺がん | Ⅲ相 |
21 | 呼吸器内科 | 肺がん | Ⅱ相 |
22 | 呼吸器内科 | 進行又は転移性食道癌・若しくは非小細胞肺癌 | Ⅰ相 |
23 | 腫瘍内科 | 乳がん | Ⅲ相 |
24 | 呼吸器内科 | 非小細胞肺がん | Ⅲ相 |
25 | 呼吸器内科 | 肺がん | Ⅲ相 |
26 | 婦人科 | 子宮体がん | Ⅲ相 |
27 | 腫瘍内科 | 乳がん、子宮内膜がん | Ⅲ相 |
28 | 呼吸器内科 | 肺がん | Ⅱ相 |
29 | 乳腺外科 | 乳がん | 医療機器 |
30 | 頭頸部外科 | 再発性または転移性頭頸部扁平上皮癌 | Ⅲ相 |
31 | 腫瘍内科 | 頭頸部扁平上皮癌 | Ⅲ相 |
32 | 腫瘍内科 | HER2陽性の手術不能又は再発乳癌 | Ⅱ相 |
33 | 腫瘍内科 | 卵巣がん | Ⅲ相 |
34 | 消化器内科 | 胃食道腺癌 | Ⅲ相 |
35 | 婦人科 | 再発または転移を有する子宮頸がん | Ⅲ相 |
36 | 腫瘍内科 | 乳がん | Ⅲ相 |
37 | 腫瘍内科 | 乳がん | Ⅲ相 |
38 | 呼吸器内科 | 非小細胞肺がん | Ⅲ相 |
39 | 腫瘍内科 | 乳がん | Ⅲ相 |
40 | 腫瘍内科 | 乳がん | Ⅲ相 |
41 | 頭頸部外科 | 頭頚部扁平上皮癌 | Ⅲ相 |
42 | 消化器内科 | 転移性結腸直腸がん(KRAS変異を有する) | Ⅲ相 |
43 | 消化器内科 | 胃癌又は胃食道接合部癌 | Ⅲ相 |
44 | 血液内科 | 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫 | Ⅱ相 |
45 | 消化器内科 | 転移性食道扁平上皮癌 | Ⅲ相 |
46 | 呼吸器内科 | RET 融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌 | Ⅱ相 |
47 | 腫瘍内科 | トリプルネガティブ乳がん | Ⅱ相 |
48 | 呼吸器内科 | 非小細胞肺がん | Ⅲ相 |
49 | 消化器内科 | 胃癌又は食道胃接合部腺癌 | Ⅲ相 |
50 | 頭頚部外科 | 頭頸部がん | Ⅲ相 |
51 | 呼吸器内科 | 肺がん | Ⅲ相 |
52 | 腫瘍内科 | 進行性乳がん | Ⅱ相 |
53 | 呼吸器内科 | 肺がん(NSCLC) | Ⅱ相 |
54 | 呼吸器内科 | 非小細胞肺がん、すい臓がん、または大腸がんのがん悪液質 | Ⅱ相 |
治験に参加していただくには参加基準があります。希望されても参加基準にあわなかったり試験実施予定人数に達していた場合、また募集期間が終了している場合は参加していただけない場合があります。
治験実績
がんセンターで実施している治験は、兵庫県内外から患者の関心が集まり問い合わせや参加があります。実施数は、年間約90件を維持しており、第1相試験(新薬開発初期段階)の受託も年々増加しています。