腫瘍循環器科

腫瘍循環器科

ご挨拶

当科は『腫瘍循環器科』といいます。
『がん患者さんのための循環器診療』 をしています。
高齢化社会の影響で、がん患者さんも循環器病の患者さんも増えており、その両方にかかってしまう方も少なくない昨今です。
従来からある一部の抗がん剤だけでなく、次々と開発される新しいがん治療薬は、有効性は高いのですが、その副作用で血圧が高くなったり、血液が固まる(血栓)病気、心臓の病気が新たに起こることがあります。
がん治療による循環器合併症はすべてが防げるわけではありませんが、『循環器病をコントロールしながら安全にがん治療を受けていただく』 ため、腫瘍循環器科は生理検査チームなど多職種と連携し、循環器合併症の早期発見のための仕組みを皆で考え、必要に応じた治療介入(主に内服などの薬物治療)をしています。
心臓カテーテル検査やカテーテル治療、ペースメーカー植え込みなど、当科で対応できない治療もありますが、その時は近隣の連携病院へ速やかに紹介します。
動悸や息切れなど、循環器疾患が疑われる症状があれば、遠慮なさらずにまずは主治医や看護師さんとご相談なさって当科に受診にいらしてください。

特徴・特色

当科では20年以上前からがん患者さんの循環器病(心臓病や血管の病気)の診療をしてまいりました。
『循環器病をコントロールしながら安全にがん治療を受けていただく』 ことを目標として掲げ、 15年ほど前からは多職種で周術期の肺動脈血栓塞栓症予防に取り組んできました。それ以降、術後の肺動脈血栓塞栓症による急変症例は回避できており、また、化学療法継続中の患者さんにおいても同様の急変症例は約6年もの間、回避できております。
5年ほど前からは、がん治療による心臓合併症の早期発見・早期治療介入にも注力しており、その結果、重症心不全での緊急入院症例は減少してきております。
手術や抗がん剤治療、放射線治療などのがん治療の開始前に、初めて循環器疾患が合併していることがわかる場合もありますが、その際にも、その時の病状に応じ、主に内服治療による循環器治療を開始し、がん治療がスムーズにできるようサポートしています。 とは言いましても、ECMOなどの補助循環装置による治療が必要な超重症心不全や心臓カテーテル治療、ペースメーカー植え込みなど、当科では対応できない治療もありますので、その時は近隣の連携病院へ可及的速やかに紹介させていただいております。

主な疾患

以下の疾患について、非侵襲的検査※での診断および薬物治療をしています。
※心臓超音波検査、血管超音波検査、心筋シンチグラフィー検査、心臓MRI検査、造影CT検査(冠動脈CT検査は不可)

  • 高血圧
  • 心不全
  • 虚血性心疾患(急性冠症候群・狭心症)
  • 弁膜症 ・不整脈(薬物治療)
  • 心アミロイドーシス(薬物導入は不可)
  • 心サルコイドーシス(薬物導入は不可)
  • 肺高血圧症
  • 慢性下肢閉塞性動脈硬化症
  • 深部静脈血栓症
  • 肺血栓塞栓症 

※カテーテル検査やペースメーカー留置、補助循環装置、心臓血管外科手術は対応しておりません。

※心アミロイドーシス、心サルコイドーシス、肺高血圧症の継続加療は行っています。

のなか あきこ

野中 顕子

      
役職

腫瘍循環器科部長(診療科長)

資格

日本内科学会 認定医

日本循環器学会 循環器専門医

日本超音波医学会 認定超音波指導医・専門医

卒業年度 1992年

ふくだ ゆうこ

福田 優子

      
役職

循環器内科部長

資格

日本内科学会 総合内科専門医

日本循環器科学会 専門医

日本超音波医学会 専門医

日本心臓リハビリテーション学会 指導士

卒業年度 2003年

外来診療表

 
腫瘍循環器科 1診 野中 野中 野中 野中 野中
2診 (午前)
福田
(午前)
福田
(午前)
福田 
(午前)
福田
(午前)
福田

休診・代診のお知らせ

急な都合による休診情報は掲載できない場合がありますので、ご了承ください。

診療実績他

2020年度 2021年度 2022年度
腫瘍循環器外来コンサルト 1826 1931 1787
検査 心臓超音波検査(経胸壁) 3067 3004 3095
  心筋シンチグラフィー検査 44 38 21
  下肢静脈エコー検査 2326 2341 2315
  心臓MRI検査 2 18 14
薬物治療 新規CTRCD※ 40 39 61
  新規irAE心筋炎※※(疑いも含む) 2 10 15
  新規CAT※※※ 350 370 410

CTRCD がん治療関連心機能障害

※※ irAE心筋炎 免疫チェックポイント阻害剤の副作用の心筋炎

※※※ CATがん関連血栓症

トピックス

2022年4月、腫瘍循環器科になりました。

2022年4月、兵庫県立がんセンター循環器内科は『腫瘍循環器科』と標榜を改めました。 一般病院での循環器内科診療とは異なり、がん患者さんの循環器疾患治療に携わっている現状でありますし、患者さんからも『がんも循環器の病気もどっちも持っているのじゃなくて、がんだから仕方なく循環器の病気にもなっちゃったという意味ですね』というご意見を頂いたりと名称変更はとても評判が良く、大変に安堵しております。 そして標榜変更により潜在的意識も高まったのか、腫瘍循環器科・生理機能検査室チーム医療の部門で2回も表彰していただくという光栄を経験させていただいた年度でありました。 当がんセンターでの腫瘍循環器診療は、20年前は、実情としては一般循環器寄りのことが多く、例えば胸痛や呼吸苦などの自覚症状があって初めて循環器診察が始まるといった具合で、当時は重症の術後肺血栓塞栓症や重症心不全合併も珍しくはありませんでした。 しかし近年では、種々のバイオマーカー異常値(BNP高値やD-dimer高値など)をきっかけに画像診断が行われる様になったため、循環器疾患が早期・軽症で診断され、軽症の合併症の段階での早期治療介入が可能になりました。 それゆえ、血栓症に関しては、周術期のみならず化学療法などのがん治療中も含めて重篤な血栓症による死亡はここ6年間回避できております(トルソー症候群以外)。 5年ほど前からは腫瘍循環器科が2人体制に増員され、心臓合併症の早期発見プロジェクトが開始されました。心エコー検査時にGLS(Global Longitudinal Strain)を測定して化学療法開始前と比べてGLS値の有意な低下があればそれをパニック値として扱い、直ちに主治医または腫瘍循環器医に報告する体制を構築しました。以降、重症心不全として発症するがん治療関連心機能障害(CTRCD)はほぼ回避できており、外来での合併心不全治療開始・継続が可能となっております。また仮にCTRCDが認められたとしてもがん治療継続可能な程度の軽症心不全であることが多く、がん治療完遂、心血管死亡の回避、がん患者さんのQOL向上に貢献できていると自負しております。 また2022年度は、世界初の腫瘍循環器ガイドラインが欧州から発刊された記念すべき年でもありました。 分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ゲノム治療などのがん治療薬の進歩のみならず、がん登録、患者さん参画のPPI(Patient and Public Involvement)など、がん治療とそれを取り巻く環境に関しては、他の疾患よりも圧倒的に系統だった改革がなされているため、総合的にもがん治療の進歩は他領域疾患の追随を許さないものになっていると思われます。 その様に、一般病院では味わえない様な治療の新風を肌で感じることのできる環境に恵まれながら日々腫瘍循環器診療をしておりますが、ざっくりまとめますと実はその心は、『おかん』、この一言につきるのではないかと思います。 がんだけでも大変なのに心臓の病気まで合併して患者さんはとても心細いことでしょうし、一方でがん治療医としても、あちゃー合併症起こしてもうた、、、としょんぼりされたりすることもあろうかと思います。 そんな時に、颯爽と(?)腫瘍循環器科が関わって、“皆をお守りいたす!”という『おかん』マインド炸裂させ、これからも縁の下の力持ち的な皆の『おかん』でいられたら良いな、そんな診療を心がけています(ガイドラインには掲載されないと思いますが)。 まだまだこれからの分野ですので、皆様からのご指導も賜りながら進歩していく所存です。 何卒よろしくお願いいたします。

紹介元の先生へ

当科ではかかりつけ医の先生からの直接の紹介は受けておりませんが、循環器疾患を合併しているがん患者さんの診療についてお困りのことがありましたら、我々の長期にわたる臨床経験が参考になることもあるかと思われますので、遠慮なくご相談いただけますと幸いです。 (腫瘍循環器科の野中または福田まで直接お電話などで連絡いただきましたら大丈夫です。) また、当科では心臓カテーテル治療などが必要な際には総合病院にご紹介申し上げることも多々あります。近隣の病院の先生方にはいつも迅速な対応をしていただき、心から感謝しております。 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。