婦人科

婦人科

ご挨拶

私たち婦人科が取り組んでいるミッションは次の3つです。 「患者さん一人一人にとって最適な医療をお届けすること」 「包括的なサポートを提供すること」 「温かみのある診療を心がけること」 ガイドラインに沿った標準的治療を基本に、その一歩先を行く臨床試験や治験など最新の治療を積極的に取り入れ、できる限り多くの選択肢を提供していきます。治療の選択においては個々の患者さんにとってのメリットとデメリットを十分に吟味して最適と思われる治療をおすすめします。また、治療に伴う合併症の軽減にも力を入れています。高度な医療を行っても最終的に治癒が得られない場合もあり、悪性腫瘍の治療には緩和ケアが必ず必要になります。緩和ケアチームとも密に連携し、看護師・薬剤師・放射線技師・栄養士・理学療法士・ソーシャルワーカーなど多職種の医療スタッフとともにチーム医療を実践しています。常に優しい診療姿勢で接し、「温かみのある診療」を心がけます。

特徴・特色

当科では婦人科悪性腫瘍とその前駆病変の診断および治療、そして再発がんに対する治療や緩和医療を行っています。 また、遺伝性腫瘍に対する予防的手術やサーベイランスも行っています。放射線治療以外、手術および化学療法(抗がん剤投与)、治療終了後の検診もすべて婦人科で責任をもって行います。  当科は、全国で有数の婦人科がん診療のハイボリュームセンターとなっております。日本産科婦人科学会の婦人科腫瘍委員会から報告された2021年度患者年報(新規に治療を開始した患者数の全国統計)によると、兵庫県立がんセンターは子宮頸部異形成:178人(全国2位)、子宮頸がん130人(全国2位)、子宮体がん127人(全国3位)、卵巣がん67人(全国3位)でした。多くの患者さんの治療に関わることができたことを誇らしく感じると同時に、その責任の重さを痛感しております。皆様の信頼に応えられるよう、より一層精進してまいります。

当科を受診される方へ

婦人科悪性腫瘍と診断された、または疑われる場合には、必ず紹介状を書いてもらって各医療機関より当院の地域医療連携室を通して予約を取得していただいた上で受診していただくようお願いいたします。  私たちは治療を進めるにあたって患者さんご本人およびご家族に治療内容とそのメリットとデメリットを理解していただくことが非常に重要と考えています。客観的な情報をもとに納得いただけるまで詳しく説明させていただきます。疑問な点がある場合にはご遠慮なく担当医にお尋ねください。  セカンドオピニオンにも積極的に取り組んでいます。当院の医師の意見をお聞きになりたい場合には担当の先生にご相談の上、各医療機関より当院の地域医療連携室を通してセカンドオピニオン外来の予約を取得していただきますようお願いいたします。

主な疾患

対象となるおもな疾患は次の通りです。

  • 子宮頸がんおよび子宮頸部異形成
  • 子宮体がんおよび子宮内膜異型増殖症
  • 子宮肉腫
  • 卵巣がん・卵管がん・腹膜がん
  • 卵巣境界悪性腫瘍
  • 絨毛性疾患(胞状奇胎を含む)
  • 外陰がん・膣がん
  • 遺伝性腫瘍(遺伝性乳癌卵巣癌症候群、リンチ症候群など)


ドクターインタビュー(ページリンク)

山口聡医師

やまぐち さとし

山口 聡

      
役職

副院長(診療支援担当) 兼

緩和ケアセンター長

栄養管理部長

婦人科部長(診療科長)

資格

日本産科婦人科学会 指導医・専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医・暫定教育医

日本婦人科腫瘍学会 指導医・婦人科腫瘍専門医・評議員

厚生労働省 認定臨床研修指導医

母体保護法指定医

厚生労働省後援・新リンパ浮腫研修修了

下部尿路機能障害講習会修了

ダビンチサージカルシステム術者認定資格

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 1990年

しおざき  たかや

塩﨑 隆也

      
役職

婦人科部長

資格

日本産科婦人科学会 指導医・専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

日本婦人科腫瘍学会 指導医・婦人科腫瘍専門医

日本臨床細胞学会 細胞診専門医

母体保護法指定医

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 2002年

やまもと かすみ

山本 香澄

      
役職

婦人科医長

資格

日本産科婦人科学会 指導医・専門医

日本婦人科腫瘍学会 指導医・婦人科腫瘍専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

日本経腸栄養学会 認定TNTドクター

緩和ケア研修会修了

厚生労働省 認定臨床研修指導医

厚生労働省後援・新リンパ浮腫研修修了

下部尿路機能障害講習会修了

卒業年度 2008年

しぶたに たかし

澁谷  剛志

      
役職

婦人科医長

資格

日本産科婦人科学会 指導医・専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

日本臨床細胞学会 細胞診専門医

日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医

日本遺伝性腫瘍学会 専門医

日本産科婦人科内視鏡学会 技術認定医(腹腔鏡・ロボット)

日本内視鏡外科学会 技術認定医

日本ロボット外科学会 国内B級ライセンス

日本周期・新生児学会 新生児蘇生法専門コース(Aコース)

厚生労働省後援・新リンパ浮腫研修修了

ダビンチサージカルシステム術者認定資格

緩和ケア研修会修了

卒業年度 2009年

うかい まゆ

鵜飼 真由

      
役職

婦人科医長

資格

日本産科婦人科学会 指導医・専門医

日本人類遺伝学会 専門医

日本産科婦人科内視鏡学会 技術認定医(腹腔鏡・ロボット)

日本周期・新生児学会 専門医

日本超音波医学会 超音波専門医

日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医

日本臨床細胞学会 細胞診専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

卒業年度 2010年

はまさき きょうこ

濵﨑 京子

      
役職

婦人科医長

資格

日本産科婦人科学会 指導医・専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医

日本産科婦人科内視鏡学会 技術認定医(腹腔鏡・ロボット)

日本ロボット外科学会 国内B級ライセンス

日本内視鏡外科学会 技術認定医

厚生労働省後援・新リンパ浮腫研修修了

ダビンチサージカルシステム術者認定資格

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 2011年

たなべ しょうへい

田邉 昌平

      
役職

婦人科フェロー

卒業年度 2015年

いちだ けいすけ

市田 啓佑

      
役職

婦人科医長

資格

日本産科婦人科学会 専門医

厚生労働省 麻酔科標榜医

緩和ケア研修会修了

卒業年度 2016年

おぎもと けいすけ

荻本 圭祐

      
役職

婦人科医長

資格

日本産科婦人科学会 専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

緩和ケア研修会修了

卒業年度 2017年

まつい かつのり

松井 克憲

      
役職

婦人科フェロー

資格

日本産科婦人科学会 専門医

緩和ケア研修会修了

卒業年度 2017年

みつおか まゆか

光岡 真優香

      
役職

婦人科フェロー

卒業年度 2018年

もりた やすゆき

森田 康之

      
役職

婦人科専攻医

卒業年度 2020年

ただ まえ

多田 真恵

      
役職

婦人科専攻医

卒業年度 2022年

外来診療表

婦人科 1診 塩﨑 山口 澁谷 山本(香) 山口
2診 市田 松井 山本(香) 荻本 濱崎
3診 澁谷 光岡

(午前)塩﨑

(午後)田辺

(午前)濵﨑
(午後)鵜飼
鵜飼
4診 山本(香) (午後)
HPVワクチン外来
   

休診・代診のお知らせ

急な都合による休診情報は掲載できない場合がありますので、ご了承ください。

診療実績他

婦人科主要疾患と、当科で行なっている取り組みを紹介します。

子宮頸がん

子宮頸がんの90%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で発生します。ほとんどの女性はたとえ子宮頸部にHPV感染が起こっても自己免疫力でウィルスを排除できます。しかし、一部の女性でHPVの持続感染が起こり、前癌病変である子宮頸部異形成を経て子宮頸がんに進行します。予防に最も有効なのは性交渉デビュー前のHPVワクチンです。12歳から16歳が公費による定期接種の対象であり、令和4年4月から積極的な接種勧奨が再開され、接種を逃した世代へのキャッチアップ接種も始まっています。また、令和5年からは新しい9価のHPVワクチンも使用可能です。

初期の子宮頸がんの治療方法は、基本的には手術療法が標準治療です。妊孕能温存の希望があり、条件を満たせば子宮を温存する術式(円錐切除術や広汎子宮頸部切除術)が可能です。温存の希望がない場合には準広汎子宮全摘術や広汎子宮全摘術が基本術式になります。

広汎子宮全摘術は、子宮頸部周囲の組織を大きく切除する手術です。この切除範囲内には骨盤神経(排尿機能をコントロールする神経)が含まれており、術後に排尿障害を発症することがあります。多くの場合は一時的ですが、長期にわたり自己排尿が困難になる場合もあります。当科では、排尿障害の合併症を減少させるために、可能な限り神経温存の広汎子宮全摘術を行なっています。また、骨盤内のリンパ節郭清も同時に行いますので、術後、術後の後遺症として、下肢を中心にリンパ浮腫(むくみ)が発生する場合があります。リンパ浮腫を発症した場合には、リンパ浮腫外来での指導や複合的理学療法を行うことでリンパ浮腫の改善に努めています。

ある程度進行した子宮頸がんの場合には放射線治療が選択されます。放射線治療に化学療法を併用する(同時化学放射線治療:CCRT)、子宮頸部に直接放射線をあてる小線源治療(腔内照射や組織内照射)、腫瘍に放射線を集中しつつ周囲の正常組織への線量を低減する(強度変調放射線治療:IMRT)などの導入により良好な治療成績が得られるようになりました。当科では放射線治療科と密に連絡を取り合いながら、協力して治療を行っています。

進行あるいは再発の子宮頸がんの治療法は全身治療である化学療法が主体となります。当科では分子標的治療薬の血管新生阻害薬(ベバシズマブ)や免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリツマブ)を併用した化学療法や免疫チェックポイント阻害薬(セミプリマブ)による免疫療法を行うことで治療成績の向上を目指しています。また、化学療法が奏効し局所治療が可能な状況にあれば、手術や放射線治療も取り入れています。

子宮体がん

多くの子宮体がんの発生には女性ホルモンが深く関わっており、子宮内膜異型増殖症という前癌病変を経て子宮体がん(子宮内膜がん)が発生することが知られています。一方で、女性ホルモンの刺激と関連なく生じるタイプの子宮体がんはがん関連遺伝子の異常に伴って発生するとされ、比較的高齢の方に多くみられます。
子宮体がんに対する根治治療は手術療法がまず選択されます。早期で再発のリスクが低い子宮体がんの患者さんには子宮、付属器(卵巣卵管)の摘出を行う術式が一般的です。リンパ節転移や再発のリスクが高いと判断された患者さんには骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節の郭清も同時に行います。当科では、早期の子宮体がんに対して、患者さんの身体的負担が少ない腹腔鏡やロボットを使用した低侵襲手術を積極的に導入しています。
摘出した子宮や卵巣、リンパ節を術後に病理組織検査で評価し、再発リスクを決定します。再発リスクが高いと診断された患者さんには、術後補助療法(主に化学療法)を推奨しています。化学療法は、パクリタキセル+カルボプラチン(TC療法)を使用しています。
再発のリスクが低く、手術のみで治療が終了した場合には、地域連携パスを活用してかかりつけ医と当院と交互に診療にあたる場合があります。該当する患者さんには担当医から入院中に説明を行います。
進行あるいは再発の子宮体がんの治療は、全身治療である化学療法が主に選択されます。化学療法が奏効した場合には、手術や放射線治療といった局所治療を選択することもあります。また、子宮体がんで比較的高頻度に認められる、マイクロサテライト不安定性(MSI)の検査も適切な時期に行い、MSI-High固形癌であれば免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリズマブ)の投与も検討します。また、再発症例には血管新生阻害薬(レンバチニブ)と免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリズマブ)の併用投与も保険収載されています。今、その患者さんに最適な治療方法は何かを常に考えながら治療にあたっています。

妊孕能温存を希望する患者さんに対するホルモン治療は、当院では症例を限定して行っています。適応に関しては、担当医にご相談ください。

卵巣がん

卵巣がんについて

卵巣は通常、母指頭大の大きさで子宮の両側に位置する腹腔内の臓器です。

卵巣をつくる主な組織には、卵巣の表面をおおっている表層上皮、卵子のもとになる胚細胞、性ホルモンを産生する性索間質があります。卵巣腫瘍はこれらすべてから発生するため、腫瘍が発生する組織によって大きく3つのグループに分けられます。また、卵巣腫瘍は良性、悪性だけでなく、これらの中間的な性格をもつ境界悪性腫瘍があり、卵巣腫瘍は非常に多種多様です。

  • 表層上皮性・間質性腫瘍

    卵巣腫瘍のうち、最も多い腫瘍です。また、悪性の卵巣腫瘍全体の約90%がこのタイプで、一般に「卵巣がん」はこの悪性腫瘍を指します。卵巣がんは症状に乏しく、見つかったときには60%以上の人は進行がんです。腹水からがんの診断がつくこともありますが、多くの場合は腫瘍が見つかっても腹腔内にあるため手術前に組織を採取することが困難で、手術時に採取した腫瘍組織からがんの診断が確定することが一般的です。

  • 性索間質性腫瘍

    性索間質には様々な細胞が存在します。女性ホルモンを産生する莢膜細胞と顆粒膜細胞、男性ホルモンを産生するセルトリ・間質細胞、線維芽細胞などから成ります。それぞれ良性から悪性まで様々な腫瘍が発生します。治療の基本は手術療法です。

  • 胚細胞腫瘍

    胚細胞腫瘍は10代から20代に多く発生します。この悪性腫瘍は卵巣がんの5%程度ですが、若年者に発症することが問題です。しかし、抗がん剤が非常によく効くので、適切に治療を受ければ治る可能性が高く、状況によっては妊娠できる能力も残すことも可能です。

卵巣がんの治療

卵巣がんの治療の基本は手術と抗がん剤治療の組み合わせから成ります。手術でできる限り体内に残る腫瘍を少なくした上で、その後に半年程度かけて抗がん剤治療を行って再発のリスクを最小にします。一方、進行した卵巣がんにおいて初回の手術時に腫瘍の切除が困難な場合には、あえて無理な手術をせず抗がん剤投与を行った後に改めて根治を目指した手術を行うこともあります。こうすることで治癒の可能性を維持しつつ合併症を減らせることが確かめられています。さらに近年は再発リスクが高い進行がんに対して、初回治療後に血管新生阻害薬(ベバシズマブ)やPARP阻害剤(オラパリブ・ニラパリブ)を用いた維持療法により治療成績が向上することが報告され、患者さんごとに最適な治療を検討します。

卵巣がんの抗がん剤治療は臨床試験や新薬開発治験も含めて当科で責任を持って行いますが、一部の該当する患者さんには腫瘍内科の新薬開発治験への参加をお勧めする場合もあります。その際には担当医から詳しく説明させていただきます。

卵巣がんの原因は生活環境による要因の他に遺伝による卵巣がんも注目されています。最近の研究の結果、約15%の方が特定の遺伝子に病的変異がある遺伝性乳がん卵巣がん症候群であることがわかっています。当院では遺伝外来も開設していますので、治療方針の決定に際し必要な場合には遺伝外来も併せて受診いただき、本人だけでなく血縁者のがんの予防や治療の選択を提案させていただいています。気になる患者さんは担当医にご相談ください。

低侵襲手術

従来、開腹手術(おなかを切って直視下で手術を行う方法)で手術は行われてきましたが、小さな傷からおなかの中にカメラと鉗子(手術の手となるもの)を入れて行う低侵襲手術が婦人科手術でも広く行われるようになっています。低侵襲手術は、手術後の体の負担が開腹手術と比較して軽いため、入院期間の短縮や早期社会復帰が可能となります。当院でも低侵襲手術が適応となる患者さんには積極的に導入しています。手術には日本産科婦人科内視鏡学会認定腹腔鏡技術認定医が参加し、より安全で確実な低侵襲手術を提供するように心がけています。低侵襲手術の方法として、腹腔鏡手術とロボット支援下手術があり、それぞれ適応に応じて手術方法を選択しており、全て保険診療内で治療を行っています。

当院で行っている低侵襲手術とおおよその入院期間は以下の通りです。ただし、入院期間に関しては、術後の経過によって延長することもあります。

  • 子宮体がん
    • 早期の子宮体がんに対する子宮全摘術+両側付属器摘出術(+骨盤内リンパ節郭清術):腹腔鏡、ロボットどちらでも対応可能です。入院期間は6日間です。
    • 再発高リスクの組織型である子宮体がんIA期に対する子宮全摘術+両側付属器摘出術+骨盤内リンパ節郭清術+傍大動脈リンパ節郭清術(+大網部分切除):腹腔鏡で対応可能です。入院期間は6日間です。
  • 子宮頸がん

    IA-IB1期と診断されたごく早期の子宮頸がん患者さんが対象です。術式は進行期によって決定しています。腹腔鏡での対応が可能です。入院期間は術式によって異なります。

    単純・準広汎子宮全摘術:6日間、広汎子宮全摘術:約2週間

  • 卵巣がん・原発不明がん

    進行した卵巣がんや原発不明がんに対する診断目的の審査腹腔鏡手術を行っています。手術が終わった後、なるべく早期に化学療法の導入を行うことでQOLの改善を目指します。入院期間は化学療法の日数も合わせて約7日〜10日間です。

  • 子宮頸部異形成や子宮内膜増殖症などの前癌病変

    腹腔鏡、ロボットどちらでも対応可能です。入院期間は6日間です。

  • 遺伝性乳がん卵巣がんに対するリスク低減卵管卵巣切除術(RRSO)

    腹腔鏡で対応可能です。入院期間は5日間です。

  • 子宮筋腫や卵巣嚢腫などの良性疾患

    悪性の可能性があると診断されて当院に紹介となった患者さんの中には、当院での精査の結果、良性であると診断される方もおられます。その場合には腹腔鏡やロボットでの手術を提案させていただくこともあります。入院期間は5-6日間です。

薬物療法

薬物療法は、がん治療においては、抗がん剤・ホルモン剤・血管新生阻害剤・免疫チェックポイント阻害剤・PARP阻害剤等の薬剤を使う治療の総称です。がんに伴う症状や治療に伴う副作用やその症状を和らげる、鎮痛剤・制吐剤・等の薬剤を使用することも薬物療法のひとつです。
化学療法は、抗がん剤・ホルモン剤等を使う治療の総称です。外科手術療法と放射線療法は、局所的ながんの治療には強力です。しかし、放射線を全身に照射することは副作用が強すぎて不可能ですし、全身に散らばったがん細胞のすべてを手術で取り出すことはできません。それに対して化学療法は全身に薬をいきわたらせる治療法です。当科では、基本的には外来通院で化学療法を行っています。副作用に対しての薬剤を予防的に使用しているため、非常に強い症状が出る方は少ないですが個人差があります。できるだけ副作用を抑えて治療を継続できるように心がけています。
免疫チェックポイント阻害剤等を使う治療を免疫療法と呼んでいます。婦人科ではペムブロリズマブ(商品名:キートルーダ)やセミプリマブ(商品名:リブタヨ)が保険収載されています。広義の免疫療法には有効性が認められていない治療も含まれますが、当院では基本的には治療の有効性が認められた薬剤での治療法(保険収載された薬剤での診療)のみを行っています。
当科では積極的に新薬の治験にも参加しています(臨床研究・臨床試験についての項を参照ください)。治験では、近い将来に婦人科がんで一般的に使用できるようになることが期待されている新薬の臨床研究を行っています。当科は国外の治験と国内の治験どちらにも登録しており、新薬が使うことができる場合は積極的に提案しています。

腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy : CART)

婦人科がんが原因で癌性腹膜炎を来たし、癌性腹水が貯留することがしばしばあります。大量腹水貯留下では腹部膨満感や呼吸苦などにより食事摂取が不十分になり生活の質の低下を招き、積極的な抗癌剤治療の継続が難しくなることもあります。近年単なる腹水穿刺による排液ではなく、腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy : CART)が注目されています。CARTは腹水を穿刺後、腹水中の細菌や癌細胞を除去し、腹水濾過器によって余分な水分を除水後、有用な蛋白成分を点滴静注し体に戻します。大量の腹水の除去と血中蛋白の補給が同時に行える利点があります。当院では卵巣がんの患者さんを中心に年間100件以上のCARTを行っております。

CARTについて詳しくご覧になりたい場合にはhttp://www.cart-info.jpをご覧ください。

緩和医療

病気の進行、再発・再燃時には治癒を目指すことは困難で、長期にわたって腫瘍の増殖を押さえ共存していくことが目標になることがあります。患者さんの生活の質(QOL: quality of life)をできるだけ落とさないよう配慮することで長期間の治療の継続が可能になります。当科では患者さんの病状や体調に応じて薬物療法、手術、放射線治療を多面的に組み合わせてがんの進行を押さえます。参加が可能な場合には新薬の開発治験をご紹介させていただくこともあります。いずれにしても患者さんのご希望に可能な限り沿えるように配慮していきます。
当院はがんの診断時からの緩和ケアを実践していますが、病状や体調の悪化により抗がん治療の継続が患者さんのメリットにならないと判断される場合にはこちらから積極的な抗がん治療の継続をお勧めしないことがあります。治療のどの段階においても婦人科だけでなく院内の緩和ケアチームにも適宜相談し、症状緩和に最善を尽くします。ご自宅近くの病院で緩和医療を希望される場合には対応していただける医療機関を地域連携より責任もってご紹介させていただきます。

診療実績グラフ(2023年11月更新)

子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんはいずれも近年は一定して多くの患者さんに受診していただいております。手術は年間約700件にのぼり、院内で最も多い診療科となっています。低侵襲手術が適応となる患者さんには積極的に導入しており、腹腔鏡下手術とロボット支援下手術のそれぞれを適応に応じて選択し全て保険診療内で治療を行っています。抗がん剤治療数は著明に増加しており、原則すべて婦人科で行っています。放射線治療に関しては放射線治療科と密に連絡を取り合いながら、協力して治療を行っています。

過去5年悪性腫瘍新規治療患者数(上皮内がん、境界悪性腫瘍、再発患者を除く)
  2017 2018 2019 2020 2021
子宮頸がん 130 129 124 130 133
子宮体がん 136 149 154 145 135
卵巣がん 78 101 77 78 89
その他 10 5 11 5 7
354 384 366 358 364
手術件数の推移
  2017 2018 2019 2020 2021
総手術件数 693 721 700 737 707
腹腔鏡下手術 85 165 151 176 152
ロボット支援下手術 0 13 9 28 41
鏡視下手術 合計 85 178 162 204 193

(集計は年度ごと)

術式の内訳
  2017 2018 2019 2020 2021
円錐切除術(CIN3以上) 174 186 171 185 168
子宮頸がん手術
単純子宮全摘 12 5 6 5 3
準広汎子宮全摘 6 8 6 8 2
広汎子宮全摘 60 48 54 57 46
腹腔鏡下手術 6 18 18 23 23
子宮体がん手術
開腹手術 71 84 79 79 64
腹腔鏡下手術 52 56 53 56 36
ロボット支援下手術 0 10 12 12 27
卵巣がん手術
根治手術 69 100 80 77 81
審査腹腔鏡 11 9 16 16 24
妊孕能温存手術 6 4 6 4 5
その他の悪性腫瘍手術 6 2 5 3 1
悪性手術件数 473 530 506 525 480
放射線治療件数の推移
2017 2018 2019 2020 2021
根治照射(子宮頸がん) CCRT 33 35 31 34 42
RT単独 11 11 15 12 11
術後照射(子宮頸がん) CCRT 10 13 8 9 9
RT単独 1 2 2 4 3
緩和照射(全ての婦人科がん) 6 20 15 31 16
化学療法患者数の推移
  2017 2018 2019 2020 2021
卵巣癌
術前化学療法 24 26 25 22 27
術後化学療法 62 82 66 68 42
再発がん 9 13 24 43 34
子宮体癌
術後化学療法 47 61 55 48 47
進行または再発がん 15 11 25 28 28
子宮頸癌
術前化学療法 25 18 12 20 10
進行または再発がん 26 43 42 52 44

子宮頸がん

進行期別生存曲線(2007年~2016年治療例)
進行期別患者数の推移(CIN3を含む)
進行期 2017 2018 2019 2020 2021
CIN3 187 173 180 179 173
Ⅰ期 65 64 63 54 64
 ⅠA1 9 6 8 9 7
 ⅠA2 2 3 2 1 2
 ⅠB1 42 37 44 35 39
 ⅠB2 12 18 9 9 16
Ⅱ期 37 33 30 41 26
 ⅡA 5 8 5 12 6
 ⅡB 32 25 25 29 20
Ⅲ期 19 18 17 19 19
 ⅢA 5 3 3 3 1
 ⅢB 14 15 14 16 18
Ⅳ期 9 13 14 16 24
 ⅣA 3 3 3 4 8
 ⅣB 6 10 11 1 16

子宮体がん

進行期別生存曲線(2007年~2016年治療例)
進行期別患者数の推移(旧分類)
進行期 2017 2018 2019 2020 2021
Ⅰ期 91 94 104 103 92
ⅠA 27 21 23 16 12
ⅠB 46 51 60 59 63
ⅠC 18 22 21 28 17
Ⅱ期 7 11 10 7 8
ⅡA 2 3 4 1 0
ⅡB 5 8 6 6 8
Ⅲ期 36 29 27 23 24
ⅢA 14 10 13 11 9
ⅢB 13 3 3 0 1
ⅢC 9 16 11 12 14
Ⅳ期 12 10 13 12 17
ⅣA 1 1 0 0 1
ⅣB 11 9 13 12 16

卵巣がん・卵管がん・腹膜がん

進行期別生存曲線(2007年~2016年治療例)
進行期別患者数の推移
進行期 2017 2018 2019 2020 2021
境界悪性 20 17 14 10 18
卵巣癌Ⅰ期 20 25 19 20 19
Ⅱ期 7 8 1 6 7
Ⅲ期 22 21 23 21 18
Ⅳ期 14 27 19 15 18
卵管癌 2 1 4 2 4
腹膜癌 11 10 11 7 11

臨床研究について

当科では最新の治療をみなさまに提供することを目的として「臨床研究」を積極的に行なっています。「臨床研究」とは人を対象として行われる医学研究全般のことをいいます。現在行われている治療法の改善点を検証すること、疾病の原因や病態生理を解明すること、患者さんの生活の質向上のための方法を探索することなどを目的に行われ、すでに治療が終了した患者さんの情報を振り返って調査する研究と新たに治療を開始する患者さんを対象とするものの双方を含みます。「臨床試験」は「臨床研究」の中で、特に新たに治療を開始する患者さんを対象に新しく考案された治療法や新しい薬が病気に対して有効かどうか、安全かどうかを実際に患者さんに協力していただいて調査する研究をいいます。さらに「臨床試験」の中で新規治療の保険承認を目的として行われる研究を「開発治験」と呼んでいます。

現在、日本および世界の婦人科がんの研究グループと協力し、多数の臨床試験を行っています。当科で治療を受けられる患者さんに疾患に対する現在の標準治療を提示すると同時に新薬の開発治験を含む臨床試験に参加していただくよう提案をさせていただくことがあります。説明をよくお聞きになった上で、患者さんご自身が納得できる治療を選択できるようしっかりサポートさせていただきます。

ご不明な点がございましたら、遠慮なく担当医にお尋ね下さい。

当科が参加している臨床試験グループは次の通りです。

日本臨床腫瘍研究グループ (略称:JCOG)  
http://www.jcog.jp

 国立がん研究センター研究開発費(旧がん研究助成金)研究班を中心とする共同研究グループで、国立がん研究センター研究支援センターが研究を直接支援する研究班の集合体です。がんに対する標準治療の確立と進歩を目的として様々な研究活動(多施設共同臨床試験)を行っています。

婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構 (略称:JGOG) 
http://www.jgog.gr.jp/

 230施設以上で構成される国内最大の婦人科がんの臨床試験グループです。国内の主な施設はほとんどが参加しています。

北関東婦人科がん臨床試験機構 (略称:GOTIC)
http://www.gotic.jp/

 北関東地区を中心とした婦人科がんを治療する拠点病院で構成される臨床試験グループで、多くの国際共同試験を行っています。主な参加施設は当院のほかに愛媛大学、鹿児島大学、国立がん研究センター中央病院、群馬県立がんセンター、群馬大学、埼玉医科大学国際医療センター、埼玉医科大学総合医療センター、自治医科大学、筑波大学、独協医科大学、防衛医大などです。

三海婦人科がん研究グループ (略称:SGSG) 
http://www.sgsg.biz/

中四国地方の病院を中心とした35施設からなる臨床試験グループです。主な参加施設は当院のほかに愛媛大学、岡山大学、四国がんセンター、島根医科大学、徳島大学、鳥取大学、姫路赤十字病院、広島市民病院、広島大学、山口大学などです。

現在実施中の臨床研究・臨床試験

現在参加可能、あるいは近日中に登録開始予定の主な臨床試験は次の通りです。

1.子宮頸がん

対象疾患 試験名 試験形態
(運営組織)
子宮頸癌
Ⅰb2-Ⅳa期
(同時放射線化学療法併用療法後)
局所進行子宮頸癌根治放射線療法施術に対するUFTによる補助化学療法のランダム化第Ⅲ相比較試験(LUFT試験/GOTIC-002)登録終了 国内多施設共同
第Ⅲ相比較試験(婦人科がん臨床試験コンソーシアム GOTIC)
子宮頸部異形成
子宮頸癌
思春期女性へのHPVワクチン公費助成開始後における子宮頸癌のHPV16/18陽性割合の推移に関する長期疫学研究(MINT study Ⅱ)(第Ⅱ期;2019年1月ー2026年12月)
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国内多施設共同
長期疫学研究(筑波大学、公益財団法人国際科学振興財団)
腫瘍径2cm以下の
子宮頸癌IB1期
腫瘍径2cm以下の子宮頸癌IB1期に対する準広汎子宮全摘術の非ランダム化検証的試験(JCOG1101試験)登録終了 国内多施設共同
検証的試験(日本臨床腫瘍研究グループ JCOG)
子宮頸癌 HPV関連子宮頸癌とフィラグリン遺伝子変異との関連性の検討
本研究は子宮頸癌の診断のもと当センター婦人科で実施された手術標本または生検標本を用いて実施されます。研究に参加を拒否される方はご遠慮なくお申し出ください。それにより診療上の不利益を被ることは全くありません。
院内試験
観察研究
(兵庫県立がんセンター)
子宮頸癌 転移性(IVB期)、残存、又は再発性の子宮頸癌患者を対象に、プラチナ製剤とパクリタキセルを含む化学療法にベバシズマブ、アテゾリズマブとの併用と、プラチナ製剤とパクリタキセルを含む化学療法とベバシズマブとの併用を比較する多施設共同ランダム化第Ⅲ相試験(BEATcc試験) 登録終了 国際多施設共同
第Ⅲ相試験(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)
子宮頸癌
Ⅰa-Ⅲb期の治療後
初発子宮頸がん患者を対象とした治療後のセクシュアリティの変化に関する前向きコホート研究(JGOG 9004) 国内多施設共同
コホート研究(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)
子宮頸癌
(閉経後骨粗鬆症女性)
選択的エストロゲン受容体モジュレーターによる放射線治療後の骨盤骨折予防の前向きコホート研究(Frap-SERM)登録終了 院内試験
コホート研究
早期子宮頸癌 早期子宮頸癌に対する新術式腹腔鏡下広汎子宮全摘術(new-Japanese LRH)の非ランダム化検証試験(JGOG1087) 国内多施設共同
非ランダム化検証試験(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)
子宮頸癌(放射線治療後) 選択的エストロゲン受容体モジュレーターによる放射線治療後の骨盤骨折予防の多施設共同前向きコホート研究(Frap-SERM) 国内多施設共同
前向きコホート研究(岡山大学)
再発進行子宮頸癌 プラチナ製剤併用化学療法に抵抗性の再発進行
子宮頸癌に対するセミプリマブ単剤療法の安全性と治療効果に関する前向き観察研究(CEMI-PLUS)
院内研究(兵庫県立がんセンター)
子宮頸部異形成、子宮頸癌 血液中のマイクロRNAを用いた婦人科がんの診断技術開発
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国内企業研究 開発研究(東レ)
子宮頸部すりガラス細胞癌 子宮頸部すりガラス細胞癌の臨床病理学的調査研究
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院内試験(兵庫県立がんセンター)

2.子宮体がん

対象疾患 試験名 試験形態
(運営組織)
子宮体癌 リンパ節転移リスクを有する子宮体癌に対する傍大動脈リンパ節郭清の 治療的意義に関するランダム化第Ⅲ相試験(JCOG1412試験) 国内多施設共同
第Ⅲ相試験(日本臨床腫瘍研究グループ JCOG)
子宮体癌、子宮内膜異型増殖症 子宮体癌/子宮内膜増殖症に対する妊孕性温存治療後の子宮内再発に対する反復高用量黄体ホルモン療法に関する第Ⅱ相試験(JGOG2051試験) 第Ⅱ相試験(婦人科悪性腫瘍研究グループ JGOG)
子宮体癌 本邦における子宮体癌に対する低侵襲手術(MIS)の実態調査
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院内試験(兵庫県立がんセンター)

3.卵巣がん、卵管がん、腹膜がん

対象疾患 試験名 試験形態
(運営組織)
卵巣明細胞腺癌IA期
他の組織型の上皮性卵巣癌IC期(片側性)グレード1/2
上皮性卵巣癌の妊孕性温存治療の対象拡大のための非ランダム化検証的試験(JCOG1203試験)
登録終了
国内多施設共同
コホート研究(日本臨床腫瘍研究グループ JCOG)
卵巣明細胞癌 TFPI2(tissue factor pathway inhibitor-2)の卵巣明細胞癌特異的新規腫瘍マーカーとしての有用性に関する多施設共同研究登録終了 国内企業研究
開発研究(東ソー)
上皮性卵巣癌
Ⅰ期
ステージング手術が行われた上皮性卵巣癌Ⅰ期に おける補助化学療法の必要性に関する ランダム化第Ⅲ相比較試験(JGOG3020試験) 国内多施設共同
第Ⅲ相試験(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構 JGOG)
上皮性卵巣癌、卵管癌、腹膜癌 PAOLA-1試験(オラパリブ+ベバシツマブ併用維持療法の第Ⅲ相試験)登録終了 国際多施設共同
第Ⅲ相試験(婦人科がん臨床試験コンソーシアム GOTIC)
卵管癌明細胞癌 卵管癌明細胞癌特異的新規腫瘍マーカーの後ろ向きコホート研究(TFP12after試験)
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国内企業研究
開発研究(東ソー)
卵管癌、卵管癌、腹膜癌 BRCA関連バイオマーカー(Mutational Signature-based Biomarker: MSBM)の探索研究(東大MSBM試験)登録終了 国内多施設共同
探索研究(東京大学)
高異形度卵巣癌 総合型ゲノム解析によるトランスレーショナルリサーチを用いた、高異形度卵巣癌患者を対象としたオラパリブ維持療法に関する多施設共同第Ⅱ相臨床試験(オラパリブ第Ⅱ期試験) 国内多施設共同
第Ⅱ相試験(東京大学)
高異形度卵巣癌 総合型ゲノム解析によるトランスレーショナルリサーチを用いた、高異形度卵巣癌患者を対象としたオラパリブ維持療法に関する多施設共同第Ⅱ相臨床試験(オラパリブ第Ⅱ期試験) 国内多施設共同
第Ⅱ相試験(東京大学)
再発卵巣癌(卵管癌、原発性腹膜癌を含む) 再発卵巣癌に対するニラパリブの安全性と有効性を検討する観察研究(JGOG3031) 国内多施設共同
観察研究(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)
卵巣がん 卵巣癌初回治療後のオラパリブおよびベバシズマブ併用維持療法の安全性と有効性を検討する観察研究(JGOG3030) 国内多施設共同
前向きコホート研究(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構 JGOG)
卵巣癌 卵巣がん治療奏功性に関連する新規バイオマーカー探索
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国内多施設共同研究 探索研究

4.その他

対象疾患 試験名 試験形態
(運営組織)
子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 婦人科悪性腫瘍患者の静脈血栓症に関する多施設共同前向き登録研究および単群検証的臨床試験(GOTIC-VTE・GOTIC-015試験)登録終了 国内多施設共同
前向き登録研究(婦人科がん臨床試験コンソーシアム GOTIC)
子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 兵庫県立がんセンター婦人科受診者を対象とした研究基盤としての血液および組織バンキング
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院内研究(兵庫県立がんセンター)
婦人科悪性腫瘍 婦人科悪性腫瘍におけるがん遺伝子パネル検査の現状に関する多機関共同観察研究
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国内多施設共同研究 観察研究
腹腔鏡およびロボット手術を受けられた方 日本産科婦人科内視鏡学会における手術および合併症登録
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日本産科婦人科内視鏡学会 調査普及委員会
子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌・卵巣境界悪性腫瘍・卵管癌・卵管境界悪性腫瘍、腹膜癌、外陰癌、腟癌、子宮肉腫、子宮腺肉腫、絨毛性疾患 日本産科婦人科学会 婦人科腫瘍員会 婦人科悪性腫瘍登録事業及び登録情報に基づく研究
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悪性腫瘍登録事業 日本産科婦人科学会/婦人科腫瘍委員会
子宮平滑筋肉腫、子宮体癌、子宮肉腫、子宮頸癌、外陰癌、腟癌 HRD陽性再発・難治性婦人科希少がんに対するNiraparibの安全性・有効性を評価する単群・非盲検第II相試験(JGOG2052) 医師主導治験 国内多施設共同
卵巣がん I期~IV期、子宮頸がん IV期、子宮体がん I期~IV期、またはいずれかの再発 化学療法中の婦人科腫瘍患者を対象とした”Comprehensive Score for financial Toxicity(COST)tool” 開発およびFinancial Toxicityに関する研究(J-COST 01) 国内多施設共同
JGOG臨床試験に参加登録された方の内、JGOG-ToMMoバイオバンク事業への生体試料提供と将来の橋渡し研究における生体試料の二次利用について同意が得られた方 JGOG-ToMMoバイオバンク事業 国内多施設共同(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)

実施中の開発治験については以下を参照ください。

兵庫県立がんセンターで実施されている治験・製造販売後臨床試験一覧からご確認いただけます。

※臨床試験への参加をご希望された場合でも以前に受けられた治療内容や病状、検査結果によっては参加できない場合もあります。詳しくは担当医または各試験の問い合わせ担当者にお尋ねください。

最後に

当科のホームページをご覧いただきありがとうございます。当科の診療内容について最新の情報を広く理解していただけるようできるだけ分かりやすい記載を心がけています。ご質問、ご意見等がありましたら管理責任者(山口聡)までお知らせください。

2024年1月

トピックス

子宮頸がんの治療法

初期の子宮頸がんの治療方法は手術療法が標準的です。一定の条件を満たす場合は子宮を温存する術式(円錐切除術や広汎子宮頸部切除術)が可能なことがあります。広汎子宮全摘術の切除範囲内には骨盤神経が含まれており、後遺症として術後に排尿障害を発症することがあります。当科では可能な限り神経温存の広汎子宮全摘術を行っています。また、骨盤内のリンパ節郭清によって、術後下肢を中心にリンパ浮腫(むくみ)を発症する場合があります。リンパ浮腫外来での指導や複合的理学療法を行うことでリンパ浮腫の改善に努めています。
ある程度進行した子宮頸がんの場合には放射線治療が選択されます。同時化学放射線治療、小線源治療(腔内照射や組織内照射)、強度変調放射線治療(IMRT)などの導入により良好な治療成績が得られるようになりました。
進行あるいは再発の子宮頸がんの治療法は全身治療である薬物療法が主体となります。血管新生阻害薬(ベバシズマブ)や免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリツマブ)を併用した化学療法や免疫チェックポイント阻害薬(セミプリマブ)による免疫療法を行うことで治療成績の向上を目指しています。

子宮体癌の治療法

子宮体がんに対する根治治療は手術療法がまず選択されます。妊孕能温存を希望する患者さんに対するホルモン治療(MPA療法)は、当院では症例を限定して行っています。
早期で再発のリスクが低い患者さんには子宮、付属器(卵巣卵管)の摘出を行う術式が一般的です。リンパ節転移や再発のリスクが高いと判断された患者さんには骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節の郭清も同時に行います。摘出した子宮や卵巣、リンパ節を術後に病理組織検査で評価し、再発リスクを決定します。再発リスクが高いと診断された患者さんには、術後抗がん剤などの追加治療を推奨しています。
再発のリスクが低く、手術のみで治療が終了した場合には、地域連携パスを活用してかかりつけ医と当院と交互に診療にあたる場合があります。該当する患者さんには担当医から入院中に説明を行います。
進行あるいは再発の子宮体がんの治療は、全身治療である薬物療法が主に選択されます。また、子宮体がんで比較的高頻度に認められる、マイクロサテライト不安定性(MSI)の検査も適切な時期に行い、MSI-High固形癌であれば免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリズマブ)の投与も検討します。また、再発症例には血管新生阻害薬(レンバチニブ)と免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリズマブ)の併用投与も保険収載されています。今、その患者さんに最適な治療方法は何かを常に考えながら治療にあたっています。

卵巣癌の治療法

卵巣がんの治療の基本は手術と抗がん剤治療の組み合わせから成ります。手術でできる限り体内に残る腫瘍を少なくした上で、その後に半年程度かけて抗がん剤治療を行って再発のリスクを最小にします。一方、進行した卵巣がんにおいて初回の手術時に腫瘍の切除が困難な場合には、あえて無理な手術をせず抗がん剤投与を行った後に改めて根治を目指した手術を行うこともあります。こうすることで治癒の可能性を維持しつつ合併症を減らせることが確かめられています。さらに近年は再発リスクが高い進行がんに対して、初回治療後に血管新生阻害薬(ベバシズマブ)やPARP阻害剤(オラパリブ・ニラパリブ)を用いた維持療法により治療成績が向上することが解り、患者さんごとに最適な治療を検討します。

近年遺伝による卵巣がんも注目されています。当院では遺伝外来も開設しており、必要な場合は遺伝外来も併せて受診することができます。

研修をご希望の先生方へ

当科では年間300例を超える婦人科悪性腫瘍の手術、化学療法、放射線治療を行っている全国有数のハイボリュームセンターです。日本婦人科腫瘍学会修練施設でもあり、また日本産科婦人科内視鏡学会認定研修施設でもあります。婦人科腫瘍専門医や内視鏡技術認定医の資格を目指している先生は、手術および化学療法、放射線治療の多くの経験を積むことができます。また、多くの国際共同臨床試験や国内の多施設共同臨床試験や治験にも参加しており、臨床試験についても学ぶことができます。
当科では出身大学や医局に関係なくやる気のある人材を幅広く求めています。現在在籍しているメンバーも出身大学、医局は多岐にわたっており、医局に所属していない医師もいます。少しでも興味のある方はお気軽に見学にお越し下さい。手術や病院見学のご希望の方は、<採用情報>のお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。専攻医、フェローの募集も<採用情報>で確認できます。

研修医の声

当科では常時複数名の後期研修医および婦人科腫瘍修練医が在籍しています。ここで現在在籍中の後期研修医と婦人科腫瘍修練医の声をご紹介します。

婦人科腫瘍修練医 (令和3年修練開始)

私は産婦人科専門医試験終了後の10月から兵庫県立がんセンター婦人科に入職し、腫瘍専門医の修練を開始しました。「がんセンター」という名前に圧倒され、正直やっていけるのだろうか?と不安でいっぱいの中のスタートでした。
当科は全国有数のハイボリュームセンターにして、手術・化学療法・緩和治療の全てを担っています。当然、常日頃から方針に迷うようなことばかりです。しかし、毎週のカンファレンスでそのような症例は相談できますし、ちょっとした相談・質問を嫌がるような先生もおらず、若手でも安心して修練ができる環境となっています。
手術に関しては、指導を受けながら週1回は少なくとも執刀症例があります。助手としても手術に入れるので常にbrush upしながら手技を習得できます。一般の市中病院ではなかなか見る機会のない広汎子宮全摘術に関しても、執刀医・助手として比較的短期間のうちに繰り返し学べるため、今まで曖昧であった部分に関しても日々理解を深めていけます。
外来に関しても、週1.5枠を担当させて頂いており、術後のfollow upだけではなく進行・再発の患者さんの治療もしっかり担当することができます。Academicな部分に関しても、定期的に抄読会が行われ、学会等での発表のテーマを自分で考え内容を組み立てていくといった修練もできます。また、様々な治験に参加している施設であるため、最先端を身近に感じられる施設です。
腫瘍にどっぷりと浸かった生活はメンタルタフネスが要求されますし、手術において肉体的なタフネスも必要であり、大変なことも多いですが、気付けばあっという間に一年が経とうとしています。
一度見学に来て頂ければ、それだけで魅力が伝わる施設だと思います。皆様の見学をお待ちしております。

婦人科腫瘍修練医 (令和4年修練開始)

産婦人科専攻医を終えて、今後のサブスペシャリティを考えたときに、私は手術が好きだったので、婦人科腫瘍の道に進もうと考えました。次のステップとして婦人科腫瘍専門医、内視鏡認定医のダブルライセンスを目指す上で、兵庫県立がんセンターが最善の研修先であると考え、専攻医終了後からここでフェローとして修練をさせていただいております。
この記事を書かせていただいている時、修練開始から4ヶ月ほどですが、私の選択は間違いでなかったと思っています。
実際に、腹式広汎子宮全摘術、卵巣癌PDS、腹腔鏡下腟式子宮全摘術などの症例を執刀医として数多く経験させていただいています。もちろんまだまだ未熟なので指導を頂きながらの手術ですが、経験豊富な先生方の手術は体系的で完成されており、非常にわかりやすく、再現性が高い手術であると感じます。また外科や泌尿器科との合同手術もある中で、他科の先生方も非常に優しく、ありがたいことに手術のコツなども教えていただくことができています。
術前、術後から外来まで、主治医として患者さん一人一人を責任持って担当するため、手術以外にも化学療法、放射線治療、さらには参加可能な臨床試験や治験はないかなど、その患者さん一人一人にとって最善の治療戦略を考えながら日々診療にあたっています。否が応にも勉強する必要があるためモチベーションを維持しつつ研修することができます。
兵庫県立がんセンターはJR新快速の停車駅である明石駅が最寄駅となっていますので、多少距離があっても通勤することはできると思います。
婦人科腫瘍専門医、内視鏡認定医のダブルライセンスを目指す方にとってはこれ以上ない環境かと思います。興味のある先生はぜひ見学にいらしてください。

後期研修医 (令和4年修練開始)

兵庫県立がんセンターの特徴として、とにかく症例が豊富であることが挙げられます。
専攻医でも週に1-2件の手術症例を執刀医(主治医)として当てていただき、手術,術後管理,術後フォローを学ぶことができます。単純子宮全摘の症例も数多く担当し、専門医取得に向けた充実した修練ができています。一筋縄ではいかない症例も多いですが、上級医の先生がしっかりサポートしてくださるため安心して手術に臨めます。
助手として手術に入らせていただくことも多く、広汎子宮全摘や骨盤リンパ節郭清,傍大動脈リンパ節郭清といった手術手技を間近でみることができて、非常にいい経験になります。手術が好きな方なら非常におすすめできる環境だと思います。また、化学療法を主治医として経験する機会もあります。
当直は月1-2回、オンコールは月1回程度のため、しっかり自分の勉強する時間をとることもできます。普段の症例カンファレンスでは、他施設ではあまり経験する機会がない腟癌や外陰癌、子宮肉腫等も症例検討にあがり、がんセンターならではのディスカッションに参加することができます。ハイレベルで分からないことも多いですが、最新の知見に基づいたディスカッションはとても勉強になります。
最後に当院の先生方は穏やかで優しく、わからないことがあればなんでも相談することができます。コメディカルの方も優しいです。そういう環境の良さもここで研修する大きな魅力の一つだと思います。興味のある方は、ぜひご気軽に見学にいらしてください。

紹介元の先生へ

日頃から当院のがん診療にご協力いただきありがとうございます。当科ではご紹介いただいた患者さんはできるだけお引き受けするように心掛けています。合併症のある方や婦人科がん以外の悪性腫瘍の可能性がある場合にも遠慮なくご紹介ください。必要があれば責任を持って適切な診療科、医療機関に当科より紹介させていただきます。紹介患者さんの増加に伴い、特に前癌病変や初期がんなど再発の可能性が極めて低いと思われる方の治療後の経過観察を近隣の先生方にお願いする場合があります。経過に問題がありましたら責任を持って対応させていただきますので、地域における診療連携に是非ご協力をお願いいたします。当科では、できるだけ広い視点で治療法を考えることで「患者さん一人一人にとって最適の治療を提供すること」を目指しています。また、ガイドラインに沿った標準治療の一歩先を行く最新の治療として様々な臨床試験や新薬の治験も積極的に取り入れ、できる限り多くの治療の選択肢を提供していきたいと考えています。手術内容や治療方針の決定にはカンファレンスの意見はもちろん病理診断科・放射線診断科・放射線治療科・腫瘍内科など幅広い診療科の専門医の意見も取り入れています。さらに看護師・薬剤師・栄養士・ソーシャルワーカーなど多くの医療スタッフとともにチーム医療を実践しています。患者様のご紹介どうかよろしくお願いいたします。
先生方とともに学び、親睦を深めるため、年1回夏に「兵庫県婦人科がん診療連携懇話会」を開催していますのでぜひご出席をお願いいたします。

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