腫瘍内科

腫瘍内科

ご挨拶

近年のがん薬物療法の進歩の結果、臨床腫瘍学の知識を背景として、薬物療法を中心に臓器横断的に各種悪性腫瘍の診療を行う、抗悪性腫瘍薬に精通した腫瘍内科医の必要性が高まってきました。一方で、本邦では従来、がんは多くの場合外科医などの臓器別専門医が中心となって薬物療法も含めて治療されてきた経緯があり、腫瘍内科を設置している病院は全国的にもまだ少ないのが現状です。当科は、がんの検査、治療、研究を行う当センターにおいて、がん薬物療法を専門的に扱う診療科として、平成17年4月に新設されました。令和5年10月からは、常勤医師8名の体制で診療を行っています。当科医師は腫瘍内科外来以外に、外来化学療法センターの運営や診療支援、遺伝外来、がんゲノム医療外来も担当しています。

特徴・特色

「兵庫県民に最新のがん薬物療法を提供する」を科のミッションとしています。 具体的には以下の3つを科の目標としています。
(1)固形がん全般に、科学的根拠に基づいた標準治療を提供する
(2)現存の標準治療をより向上させるべく、臨床試験に積極的に取り組む
(3)次世代の腫瘍内科医を育成する
(1) について、成人の固形がん全般に対して臓器横断的にがん薬物療法を中心とした専門的な診療を行っております。希少がん(原発不明がんや肉腫など)、乳腺、婦人科、頭頚部領域の悪性腫瘍について特に高い専門性を有しております
(2)について、新薬の開発治験について積極的に取り組んでいます。多数のグローバル治験を第1相(First in Human含む)から第3相まで幅広く受託しております。
(3)について、フェローや専攻医を積極的に採用し、日本臨床腫瘍学会認定のがん薬物療法専門医取得を目指してカリキュラムに沿った研修を受けて頂いています。当科発足から現在まで15年間で11名ががん薬物療法専門医を受検し、全員1回で合格されています。

当科を受診される方へ

受診の際には、基本的に現在の主治医の先生からの紹介状が必要です。

また、紹介状に加えて画像データ(X線、CT、MRIなど)や病理標本などの資料が必要になることもありますので、事前に地域連携室と現在の主治医の先生との間で確認をさせて頂きます。

受診時には全ての医療機関の投薬内容がわかるお薬手帳や処方箋をご持参ください。

当科の方針として、診療する患者さん全員に禁煙を約束頂き、また代替療法は全て禁止とさせて頂いています。ほぼ全ての患者さんにがん薬物療法を行う科の特性上、必要時に輸血を受けられない方や、受診時の体調や病状によって、要望にお応えできないことがございます。あしからずご了承下さい。

主な疾患

がん薬物療法の適応があれば成人の固形がん全般に対応しておりますが、当科の専門性が特に高いのは乳がん・婦人科がん・頭頸部がん・希少がんです。乳がんについては周術期薬物療法(手術の前後の抗がん剤治療や分子標的治療)の大部分と進行・再発患者さんの薬物療法の一部を乳腺外科と分担して行っています。他院からご紹介頂く進行・再発の患者さんの薬物療法は腫瘍内科で担当しています。婦人科がんについてはご紹介頂いた患者さんの薬物療法を行っています。卵巣がん、子宮体がん、子宮頚がんいずれもガイドラインに基づいた標準治療を実施しています。カルボプラチン脱感作療法と新薬の開発治験に力を入れています。頭頚部がんについては口腔外科が診療する患者さんの薬物療法全般と、頭頸部外科が診療する患者さんの薬物療法の一部を担当しています。希少がんについては「がんかも知れない」状態からの診断、必要に応じて手術や放射線治療などの局所治療のコーディネート、薬物療法及びその間必要な支持療法/緩和療法と幅広く担当しています。

まつもと こうじ

松本 光史

      
役職

研究部長兼ゲノム医療・臨床試験センター次長

腫瘍内科部長(診療科長)

資格

日本臨床腫瘍学会 指導医・がん薬物療法専門医・評議員

日本内科学会 総合内科専門医

日本乳癌学会 指導医・乳腺専門医

日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医

日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医

卒業年度 1999年

いけうち きょうこ

池内 香子

      
役職

腫瘍内科部長

資格

日本内科学会 総合内科専門医

日本消化器病学会 指導医・専門医

日本消化器内視鏡学会 指導医・専門医

日本肝臓学会 専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

日本医師会 認定産業医

京都大学 医学博士

卒業年度 2000年

おのえ たくま

尾上 琢磨

      
役職

腫瘍内科医

資格

日本臨床腫瘍学会 指導医・がん薬物療法専門医

日本内科学会 認定内科医

日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医

日本乳癌学会 乳腺認定医

日本乳がん検診制度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医

日本禁煙学会 認定専門指導者

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

卒業年度 2007年

さかい ひでき

境 秀樹

      
役職

腫瘍内科医

資格

日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医

日本内科学会 認定内科医

日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医

日本消化器病学会 専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

卒業年度 2010年

すとう ひろたか

須藤 洋崇

      
役職

腫瘍内科医長

資格

日本臨床腫瘍学会 指導医・がん薬物療法専門医

日本内科学会 総合内科専門医

日本乳癌学会 乳腺認定医

日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医

卒業年度 2010年

もりた みつのり

森田 充紀

      
役職

腫瘍内科医

資格

日本内科学会 総合内科専門医

日本呼吸器学会 指導医・呼吸器専門医

日本感染症学会 感染症専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

ICLS・JMECCインストラクター

卒業年度 2011年

おがた みさと

緒方 美里

      
役職

腫瘍内科医

資格

日本内科学会 認定内科医

日本乳がん検診制度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

卒業年度 2014年

かわむら みゆき

河村 美由紀

      
役職

腫瘍内科医

資格

日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医

日本内科学会 認定内科医

日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

日本医師会 認定産業医

卒業年度 2015年

外来診療表

腫瘍内科 1診 尾上 須藤 尾上 河村 森田
2診 河村 松本 須藤
3診   担当医   担当医  
4診   森田/担当医   松本(光)/担当医  

休診・代診のお知らせ

急な都合による休診情報は掲載できない場合がありますので、ご了承ください。

診療実績他

標準治療について

標準治療とは臨床試験で繰り返し比較されて勝ち残った、「現在の世界チャンピオン」であり「今できるベストの治療」を意味します。当科がよく担当するがんへの標準治療を以下に示しますが、個々の患者さんの病状によってこれとは異なる治療が最善のことがあります。

乳がん

周術期薬物療法(手術の前後の抗がん剤治療や分子標的治療)の大部分と進行・再発患者さんの薬物療法の一部を乳腺外科と分担して行っています。他院からご紹介頂く進行・再発の患者さんの薬物療法は腫瘍内科で担当しています。
周術期薬物療法については乳腺外科・放射線治療科・病理診断科と共同で最新のエビデンスや各種ガイドラインに基づいたマニュアルを作成し、なるべく治療強度を保った質の高い治療が提供できるよう努力しています。内容は複雑ですが一部抜粋して紹介します。
HER2陽性乳がんに対しては、抗HER2薬(トラスツズマブ・ペルツズマブ・T-DM1)を適切に投与することを重視した上で、再発リスクに応じてタキサン系抗がん剤とアンスラサイクリン系抗がん剤とを適宜単独又は逐次併用で投与しています。
HER2陰性乳がんに対しては、腫瘍の性質と再発リスクに応じてアンスラサイクリン系抗がん剤とタキサン系抗がん剤とを適宜単独又は逐次併用で投与しています。一部の患者さんにはdose dense 化学療法も行っております。一方でOncotypeDxのような精密なリスク評価に基づいた抗がん剤の省略を提案する場合もあります。
進行・再発患者さんの薬物療法も同様にエビデンス/ガイドラインに基づいて行いますが、生活の質(Quality of Life; QOL)を保つことをより重視して治療を行います。結果として選択肢は非常に多岐にわたりますので詳細は割愛します。

婦人科がん

ご紹介頂いた患者さんの薬物療法を行っています。卵巣がん、子宮体がん、子宮頚がんいずれもガイドラインに基づいた標準治療を実施しています。初回治療ではカルボプラチン・パクリタキセル併用療法が中心ですが、卵巣癌ではベバシズマブ、オラパリブ、ニラパリブなどの分子標的治療薬も併用することがあります。再発卵巣癌ではリポゾーマルドキソルビシン、ゲムシタビン、ノギテカン、ドセタキセル、経口エトポシドなど多くの殺細胞抗がん剤が使用可能です。カルボプラチン過敏性反応に対する脱感作投与に力を入れており、院内・院外からご紹介頂き現在日本でトップクラスの実績を有しています。もちろん脱感作投与以外の標準治療についても積極的に受け入れていますのでお気軽にご相談ください。

頭頸部がん

ご紹介頂いた患者さんの薬物療法を行っています。卵巣がん、子宮体がん、子宮頚がんいずれもガイドラインに基づいた標準治療を実施しています。初回治療ではカルボプラチン・パクリタキセル併用療法が中心ですが、卵巣癌ではベバシズマブ、オラパリブ、ニラパリブなどの分子標的治療薬も併用することがあります。再発卵巣癌ではリポゾーマルドキソルビシン、ゲムシタビン、ノギテカン、ドセタキセル、経口エトポシドなど多くの殺細胞抗がん剤が使用可能です。カルボプラチン過敏性反応に対する脱感作投与に力を入れており、院内・院外からご紹介頂き現在日本でトップクラスの実績を有しています。もちろん脱感作投与以外の標準治療についても積極的に受け入れていますのでお気軽にご相談ください。

希少がん

「がんかも知れない」状態からの診断、必要に応じて手術や放射線治療などの局所治療のコーディネート、薬物療法及びその間必要な支持療法/緩和療法と幅広く担当しています。薬物療法については標準治療が確立していない腫瘍がほとんどですが、原発不明がんや肉腫など専門家の間ではある程度共通認識がある腫瘍についてはそれに基づいて診療を行っています。がんゲノム医療を積極的に行っています。

治療成績について

過去5年の初診患者数(院外からの地域連携室経由でのご紹介、院内からのコンサルト、セカンドオピニオン、遺伝外来、がんゲノム医療外来での初診を含む)を図1に示します。おかげさまで毎年少しずつご紹介が増えてきています。

来院人数

また、ご紹介頂いた患者さんの内訳を図2に示します。
当科が特に専門性を有している乳がん、希少がん、頭頸部がん、婦人科がんの患者さんが約8割を占めています。

2022年度 がん領域別初診患者数※がんゲノム・遺伝含む

臨床研究、臨床試験、治験について

現在標準治療とされている様々ながん薬物療法も、過去に行われたこのような臨床試験の結果確立されてきたものです。当科では確立された標準的ながん薬物療法を行いますが、まだまだ満足できるものではありません。そこで、より優れたがん薬物療法などの治療法の開発に積極的に取り組んでいます。それらの研究の一覧を下記にお示しします。なお、これらの臨床研究、臨床試験、治験は、当センターの倫理審査委員会や治験審査委員会で承認を受けています。

現在実施中の臨床研究・臨床試験

  1. アベマシクリブ投与後の HR 陽性HER2 陰性転移再発乳癌に対するアベマシクリブのre-challenge 試験/ctDNA の継時的評価による薬剤耐性メカニズムの評価 (WJOG14220B AGAIN試験)

  2. HER2陽性乳癌のT-DXd治療に対するオランザピン併用制吐療法の有効性を検討するプラセボコントロール二重盲検ランダム化第II相比較試験(WJOG14320B ERICA試験)

  3. 生殖細胞系列BRCA1/2 変異陽性転移性乳癌におけるオラパリブ耐性の機序を探索する橋渡し研究 (WJOG15321B OLIVE試験)

  4. アベマシクリブを服用した転移性乳癌患者を対象に使用実態および有効性を評価する国際共同観察研究(ABCR2研究)

  5. 日本のリアルワールドデータを用いた進行・再発乳癌に対するオラパリブ治療の検討(JBCRG-C09 OPTIMAL試験)

  6. プラチナ系抗がん剤による過敏性反応の鑑別方法の構築

  7. カルボプラチン脱感作療法の実態調査

  8. 局所進行頭頸部扁平上皮癌に対する導入化学療法(ドセタキセル+カルボプラチン+セツキシマブ)の第I、II相試験

  9. プラチナ製剤と免疫チェックポイント阻害薬不応の再発または転移性頭頸部扁平上皮癌患者を対象としたパクリタキセル+セツキシマブの第II相臨床試験

  10. がんゲノム情報管理センター(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics: C- CAT) データを利用した治療効果とゲノムプロファイルの関係性に関する観察研究

トピックス

  • 松本光史部長(診療科長)が、delete Cの2023-HOPE-にてNRG-BR007試験(低再発リスクI期ER/and or PgR陽性乳癌への温存術後残存乳房照射省略を検証する研究)を対象にAWARDを受賞しました。
  • 森田充紀医長が2023年度日本がんサポーテイブケア学会学術集会で「12年間にわたる当院外来化学療法センターでの過敏性反応の実態と再投与についての検討」を発表し、最優秀演題を受賞しました。
  • 松本光史部長がJCOG婦人科腫瘍グループ代表委員、尾上琢磨医長が頭頸部がんグループ代表委員に任命されました
  • 松本光史部長と尾上琢磨医長が、Best doctors in Japan2022-2023に選出されました

紹介元の先生へ

固形腫瘍全般を診療しておりますが、特に希少がん・乳腺・婦人科・頭頸部がんの薬物療法に力を入れており、これらのがんについては周術期薬物療法を含めて対応可能です。希少がんセンターが発足しており、特に原発不明がんについては集学的治療で長期生存を含めた良い成績が得られる症例が一部にあるため、特に専門施設での診療のメリットが大きいと考え当科として注力しております。生検前の、「原発不明がん疑い」、の段階で構いませんので、どしどしご連絡下さい。また、急がれる場合は翌日、特に急がれる場合は当日に対応しておりますので、お気軽に電話でご相談頂ければ幸いです。