治療を受けられる方へのアドバイス

手術療法における治療前・中・後の過ごし方

患者さんが安心して治療を受けられるように、医師・看護師・検査技師・放射線技師・メディカルスタッフがひとつの医療チームとして、手術に向けての準備を外来・病棟・手術室とで連携をとりながら進めていきます。

1.手術治療前(入院までの準備)

入院決定までの期間は様々な検査を受けます。手術決定時に検査の予定をお知らせいたしますのでご確認ください。
ここでは、それ以外にご自身で整えることができる内容をお知らせします。しっかりと準備を整えることで手術後の生活の質がかわってきます。

お薬のチェック

  • 安全に手術を受けるために薬の情報は不可欠です。
  • 病院から処方された薬の中には、手術前に一旦止める場合があります。
  • それぞれの病気により対応が違ってきますので、内服中のお薬があれば入退院支援センターでご相談ください。

禁煙・呼吸訓練

喫煙により傷が化膿する頻度は6倍になるといわれています。逆に30日以上の禁煙により、傷が化膿する頻度が2%に低下します。タバコを吸われる方は手術に向けて禁煙しましょう。

手術後は傷の痛みのために呼吸の動作が制限されるため、腹式呼吸で深呼吸ができるよう練習しましょう。うまく呼吸することでたくさんの酸素をとりこむことができ、早期回復につながります。

体重管理

普通体型(BMI18.5~25㎏/m2)が目標です。やせすぎていても太りすぎていても手術や手術後の感染症や、キズの治りが遅いなどの合併症の危険性が増します。病気の症状がつらくない方は、目標体重に近づけるようできる限りで調整してみてください。

※BMI(骨格指数)=体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)

体力維持増進

きちんと食事管理をしながら運動することで筋肉を蓄えることができます。筋肉を蓄えることは手術後の生活において有利になります。病気の症状がつらくない方は運動しましょう。
食事については栄養士による相談も受け付けていますので、看護師へお気軽にお声掛けください。

スキンケア

【おへそのお手入れについて】

体を清潔に保ちましょう。胸から腹部の手術の場合、ご自分でおへその掃除ができる方は下記を参考にして入院までにきれいにしましょう。自分でお掃除が難しい方は、入院後に看護師が行いますのでご安心ください。

【おへその掃除の仕方】

仰向けに寝て、おへその穴にオイルをひたひたに垂らし、5分程度待ってください。
その後、綿棒で優しくクルクルと掃除します。痛みがあれば無理にやらなくてもよいです。
やりすぎは禁物です。お風呂上りが適しています。

【保湿について】

手術中や手術後は皮膚に様々な場面でテープ固定を行う機会があります。皮膚を清潔に保ち、保湿をしておくことでテープかぶれなどのスキントラブルを予防できます。乾燥がひどいとテープにより皮膚を傷つけてしまう恐れがあります。からだ用の保湿クリームなどを入浴後に顔を含めて全身に塗り保湿してください(顔は普段から保湿のために乳液をぬっている方は継続でかまいません)。手術まで続けましょう。スキンケアに関するさらに詳しいパンフレットは、入退院支援センターに設置していますのでお気軽にご利用ください。

【除毛について】

最近では手術する箇所の毛剃りは最小限にすることが主流となっています。ご自分でカミソリなどで毛剃りするとかえって傷ができたりし、手術後の傷の化膿につながります。くれぐれもご自分で毛剃りはせず、また清潔に保つよう心がけてください。

介護認定の申請について

介護認定の申請や見直しの申請、かかりつけのケアマネージャーへの相談・報告もしてください。

2.手術治療前(入院から手術まで)

入院後、手術までの期間は、だいたい1~3日と短いですが、細心の注意をはらいながら準備をすすめていきます。

  • 各種検査についての説明と結果の報告を行います
  • パンフレットにそって必要物品の準備を行います
  • それぞれの病気の治療に要する期間と入院生活の過ごし方、医療費や生活費、身体的・精神的負担など様々な問題を解決する福祉サービスの活用方法などについての説明と準備を行います
  • 手術室看護師、ICU看護師がお話を伺いに訪問します(ICU看護師の訪問はICUに一泊以上される方を対象にしています)
  • 主治医による手術方式などについての説明時には看護師が同席します
  • 口腔外科で歯のクリーニングを行います 全身麻酔時の呼吸を助ける装置の管が口を通過し気管の中に入ります。その際に歯が折れたり抜けたりすることを予防する準備をします。 また、お口をきれいにすることで口の中の細菌数を減らし、手術後の肺炎を予防します。上記以外にも、手術を受けられる患者さんが安心して手術に臨めるよう、また術後の早期回復を目指して看護を行います。心配なことやわからないことなどあれば看護師にいつでもお声掛けください。一緒に頑張りましょう。
  • 心配なこともあると思いますが、十分に睡眠をとりましょう。

3.手術治療中

  • 手術室では1~3人の看護師で担当させていただきます
  • 手術室入り口でお名前の確認を行いますのでフルネームで教えてください。手術前にもお名前や、予定手術名の確認を一緒に行います
  • 患者さんが安心できるコミュニケーションに努めています。安全・安楽を確保し、手術が円滑に進むよう看護します(術前パンフレットのリンク)
  • 手術室に入り、麻酔の直前であっても聞きたいことがあれば何でも看護師にお声掛けください
  • 予定時間を過ぎた場合などは心配されているご家族に経過を連絡させていただくことがあります。家族看護にも力を入れています
  • 対面で術後説明をご希望の場合、ご家族の方は家族控室でお待ちいただくか、手術室から連絡があれば5分程度で家族控室へ戻れる範囲でお待ちいただきます

4.手術治療後

手術治療後は体力の回復、傷の治癒のためのリハビリをおこなっていき、退院を目指します。退院までの道のりは山あり谷ありですが、安全・安楽に経過してゆけるよう医療チームがしっかりとガイドいたします。

  • 手術前の訓練を思い出し、合併症予防のために手術後は早く動いて痰をしっかり出しましょう。集中治療室でもベッドを起こして座ったり、手術当日からリハビリを開始します。痛みは我慢せずに早めに伝えてください
  • 患者さんが頑張れるよう、しっかりサポートしていきます。共に頑張りましょう

化学療法における治療前・治療中・治療後の過ごし方

1.治療前

がん化学療法は、全身治療に位置付けられ、病気の種類や患者さん自身の体の状態によって使う薬の種類は異なります。このため、治療経過や副作用も様々です。

  • 主治医より治療内容と治療スケジュール、予測される副作用とその対処方法等について詳しい説明があります。また、薬剤師、看護師からも薬の特徴や日常生活の過ごし方についてパンフレットを用いて説明があります
  • 最近では副作用をコントロールする薬を使う事で軽減でき、通院しながら外来で行われる治療も多くなっています。自宅で生活しながら副作用の対処を行い治療が継続できるよう十分な説明を行いますので、ご不明な点については何でも質問をしましょう

2.治療中

治療で使用する薬には点滴、飲み薬があります。方法としては点滴のみ、飲み薬のみ、そしてこれらを組み合わせて使用する場合があり、疾患や患者さんにより異なります。

  • 点滴は腕の血管に針を刺して始め、終了すれば抜きます。血管が細く腕の血管から針をいれることが難しい場合や、治療内容で必要な場合は、鎖骨付近らかの血管にカテーテルを挿入する処置(ポート留置)を行う場合もあります。このような処置が必要な場合はご説明させていただきます
  • 飲み薬の場合、内服のタイミングが治療効果に影響する場合があります。決められた時間に決められた量を正しく内服する事が重要です。退院後の生活習慣に合わせて内服できるよう薬剤師、看護師と一緒に考えましょう

【アレルギー反応の観察と早期対応】

治療中は薬によるアレルギー反応が出現する事があります。アレルギー反応は初めて使う薬だけでなく複数回使用している薬でも起こる場合があるので、点滴中に体調の変化がある場合(例:痒み、吐き気、お腹の痛みなど)はすぐに看護師に知らせてください。

【血管外漏出の予防と観察】

点滴が血管の外に漏れることを血管外漏出と言います。薬剤が血管の外に漏れると痛みや腫れ、炎症を起こすことがあります。薬が漏れないように予防することが重要となります。点滴中は針の周囲を観察し薬剤が漏れていないことを確認しながら治療を行いますので、痛みや違和感が出た場合はすぐに看護師に知らせてください。

治療後

治療後は体調に合わせた過ごし方をしましょう。治療スケジュールや体調に合わせて仕事も可能です。仕事の目安については主治医、看護師にご相談ください。

【副作用の確認】

治療後から出てくる様々な副作用を観察します。体調の変化があればすぐに知らせてください。予防、軽減できるよう観察します。副作用を予防、軽減するための薬の使い方やタイミングなどを一緒に考えていきましょう。ご自分の体調の変化を把握し管理していくために、当院では体調観察ノート「私のノート」の活用をお勧めしています。治療中や退院後、次回の治療までの期間、自宅での体調を書いていきましょう。
また、医療者への質問などがある場合はメモしておき、受診時に確認するなど、一緒に症状のコントロールを考えていきましょう。

私のノート

【副作用の確認】

退院後も無理せず体調に合わせた生活を行いましょう。
体調に変化がある場合、副作用症状の対応で困った時などは病院の代表に電話連絡し相談しましょう。

放射線治療における治療前・治療中・治療後の過ごし方

1.治療前

  • 治療の姿勢は仰向けで行います。動くと治療場所がズレますので、痛みや不安が強い場合は医療者に相談しましょう
  • 放射線治療医の説明やお渡ししたリーフレットでわからないこと、気になることがあれば、医療者に相談しましょう
  • 乳腺に治療をされる方で、手術の影響で腕が挙げにくい場合は、リハビリを継続するようにしましょう
  • 口の中が治療範囲に入っている方は、虫歯の治療や歯磨きなど、口のケアを行い、清潔を保つようにしましょう
  • 禁止事項は喫煙です。また、治療部位によっては禁酒も必要になります

2.治療中

  • 治療効果は、予定された治療期内に治療を終了することで得られます。治療期間中にけがなどしないように気をつけましょう
  • 毎日同じ場所に治療することで、効果が得られます。過度の体重減少や体に付けてあるマークが消えないように気をつけましょう
  • 治療中に起こる副作用は治療をしている場所だけに現れます。副作用を想定範囲内で抑えるためには、患者さんの協力が欠かせません。症状の出現時期は予測できますので、まずは些細な症状でも医療者に伝えましょう。尚、副作用のケア方法については、看護師が治療開始前にリーフレットを用いて説明させて頂きます。
  • 予防や薬剤などを使用しながら最小限の苦痛で終了するよう、医療者と最後まで一緒に乗り切りましょう
  • 多くの場合、長期間の治療になります。辛いときは独りで抱え込まないようにしましょう。多種の専門家でサポート致します

3.治療後

  • 治療中の副作用は、治療終了後2週間~1か月程度で回復します。回復するまでのケア方法と治療後の副作用症状については、看護師が治療終了前にリーフレットを用いて説明させて頂きます。
  • 治療部位によっては、治療終了後も味覚異常やドライマウスが続きます。回復が数ヶ月単位であること、また食生活に支障が生じることもあります。退院後のため相談できずに悩むこともあるでしょう。独りで悩まずに医療者に相談しましょう。
  • 治療終了後は定期診察を受けましょう。治療効果や頻度は低いですが晩期合併症や再発の早期発見につなげるための診察です

治療中の食事の工夫について

化学療法、放射線療法(頭頸部や胸部照射)の副作用などでおこることがある口内炎、食道炎、口腔乾燥や吐き気、嘔気、味覚変化など、それぞれの症状に合わせて食事の摂り方に工夫が必要となります。

TOP