呼吸器外科

呼吸器外科

ご挨拶

最近ではあらゆる外科領域で体腔鏡手術が盛んに行われるようになりました。確かに適切に施行されれば、「低侵襲性」という点で患者さんにとって有益なアプローチ法であることは間違いありませんが、稚拙な手技に起因する医療事故が物議を醸すこともしばしばです。当科では従来から施行していた小さな開胸創からの手術を発展させるかたちで2009年から段階的に完全胸腔鏡手術を導入し、2022年は原発性肺がん手術の90%を完全胸腔鏡手術で施行致しました。安全性を第一に、且つ、がん専門病院として標準手術の水準を維持するため、完全胸腔鏡下肺葉切除術1,100例超の経験を有する専門医が直接指導に当たっています。 当科では術後の補助化学療法にも積極的に取り組んでいます。我々、呼吸器外科医の本分はあくまでも外科治療におけるbest practiceを目指すことですが、最近の化学療法薬の進歩には目を見張るものがあります。術後切れ目なく補助化学療法の導入につなげることが出来れば、II期、III期肺がんの予後はさらに改善していくでしょう。

特徴・特色

当科の基本方針は根治性を損なわず、かつ「機能温存」と「低侵襲性」にも配慮した術式の選択であり、過去30年以上にわたって集積した膨大なデータベースに基づいたエビデンスを重視し手術適応を決定しています。 早期肺がんに対する積極的区域切除術、やや進行した肺がんに対する気管支・肺動脈の形成術は当科が伝統的に得意とするところですが、進行がんに対しても呼吸器内科、放射線治療科と連携し、集学的治療としての拡大手術に積極的に取り組んでいます。 2019年からは保険収載を受けて、肺がんと縦隔腫瘍に対するロボット支援胸腔鏡手術を開始しております。縦隔腫瘍に対しては剣状突起下アプローチによる胸腔鏡手術も施行しております。

当科を受診される方へ

現在、肺がんの手術・周術期治療は新しい治療データが続々と報告されている変革期ですが、最新のデータを生かして最良の治療を患者さんに提供することががん専門病院の使命と考えております。「根治性を損なわず、かつ術後の quality of life にも配慮した術式・治療の選択」という当科の基本方針に立ち返り、安易に新しい治療を導入せず、患者さんに本当に利益がある治療を取り入れて提供するように努めております。 これからも安全性を第一に、且つ、がん専門病院として標準手術の水準を維持するための取り組みを続けていきたいと考えております。 ご不明な点などがある場合には遠慮なく担当医にお尋ねください。

主な疾患

対象となるおもな疾患は次の通りです。

原発性肺がん

非小細胞肺がんと小細胞肺がんの二つに大きく分けて治療を計画します。全体の約80~ 85%を占める非小細胞肺がんのうち、進行度 I 期・II 期は外科治療が主体となります。I期のうち、腫瘍の大きさが小さい症例では手術単独療法となりますが、腫瘍が大きいI期と肺門リンパ節に転移を認めるII期では、手術後に再発を予防するための抗がん剤治療(術後補助化学療法)を行います。III 期では抗がん剤・放射線治療を組み合わせて治療することが多いですが、集学的治療の一環として手術を行う場合があります。
これに対して、残り約15~20%を占める小細胞肺がんは、比較的転移や進行の速いことが多いため外科治療の対象となることは稀ですが、リンパ節転移がない症例では手術と抗がん剤(術後補助化学療法)で積極的に根治を目指します。

転移性肺腫瘍

両側、多発転移であっても、切除によって予後の改善が期待される場合には手術を行います。

縦隔腫瘍

悪性胸膜中皮腫

その他胸部悪性腫瘍

にしお わたる

西尾 渉

      
役職

副院長(医療連携・医療情報担当)
呼吸器外科部長(科長)

資格

神戸大学医学部 臨床教授
外科専門医・指導医
呼吸器外科専門医
呼吸器専門医・指導医
がん治療認定医
日本胸部外科学会 指導医・評議員
日本呼吸器外科学会 修練責任者・評議員
日本内視鏡外科学会 評議員
日本肺癌学会 評議員
関西胸部外科学会 評議員
JCOG 肺がん外科グループ/施設研究責任者

卒業年度 1987年

きたむら よしたか

北村 嘉隆

      
役職

呼吸器外科医長

資格

外科専門医

呼吸器外科専門医

がん治療認定医

JCOG肺がん外科グループ/施設コーディネーター

卒業年度 2004年

しみず なほこ

清水 奈保子

      
役職

呼吸器外科医長

資格

外科専門医

呼吸器外科専門医

卒業年度 2010年

みうら けんじ

三浦 賢仁

      
役職

呼吸器外科医長

資格

外科専門医
呼吸器外科専門医

卒業年度 2013年

くろだ さなえ

黒田 紗菜恵

      
役職

呼吸器外科医長

資格

外科専門医

呼吸器外科専門医

卒業年度 2016年

にしくぼ めぐみ

西久保 愛実

      
役職

呼吸器外科医長

資格

外科専門医

呼吸器外科専門医

卒業年度 2016年

まえだ かずき

前田 和来

      
役職

呼吸器外科専攻医

卒業年度 2021年

外来診療表

 
呼吸器外科 1診   西尾、清水   三浦 (午前)西尾
(午後)担当医
2診   西久保
(1,3,5週は午後のみ)
  北村  
3診   黒田
(2,4週は午後のみ)
  清水  

休診・代診のお知らせ

急な都合による休診情報は掲載できない場合がありますので、ご了承ください。

診療実績他

当科の標準治療と治療成績

原発性肺がんを中心に転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、胸膜中皮腫などの胸部悪性疾患を対象として、外科的な診断・治療と術前術後の化学療法を行っています。

当科開設以来34年間の手術総数は7,804例にのぼり、その内訳は原発性肺がん5,064例、転移性肺腫瘍867例、縦隔腫瘍346例などです。胸部悪性疾患の患者数は高齢化を背景に年々増加しており、当科においても最近5年間の手術件数は年間250例以上で推移しています。

原発性肺がんの治療成績

  • 術後平均在院日数 12.4日
  • 在院死亡率 0.53%(全国平均※ 0.8%)
  • 長期予後 (2007/4/1 – 2011/3/31年手術)
病理病期 症例数 5年生存率
(全国平均
I A 339 85.1 %(86.8 %)
I B 195 71.8 %(73.9 %)
II A 91 61.8 %(61.6 %)
II B 51 72.0 %(49.8 %)
III A 118 50.7 %(40.9 %)

※J Thorac Oncol 2011;6:1229–1235.のデータ引用
✱病理病期は、肺癌取り扱い規約第7版を使用

臨床研究、臨床試験について

手術だけで根治する肺癌は増えていますが、その反面、手術だけでは治りきらない再発率の高い進行肺癌も増加しています。当科では、肺癌など呼吸器悪性腫瘍に対する治療成績を一層向上させ、更に新たな標準治療の確立とその進歩を目的として、様々な研究活動(臨床研究、臨床試験)を行っています。

これらの臨床研究、臨床試験は当センターの倫理審査委員会や治験審査委員会で承認を受けています。(臨床試験のうち、治験に関しての詳細は、臨床試験(治験)についてのページをご参照下さい。)

現在参加可能、あるいは近日中に登録開始予定の主な臨床試験は次の通りです。

研究タイトル
高悪性度神経内分泌肺癌完全切除例に対するイリノテカン+シスプラチン療法とエトポシド+シスプラチン療法のランダム化比較試験 (JCOG1205/1206)
【対象疾患】肺癌(術後病理診断で高悪性度神経内分泌癌と診断された肺癌)
【試験概要】日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) が実施している国内多施設共同ランダム化第III相比較試験です。登録終了
胸部薄切CT所見に基づくすりガラス影優位のcT1N0肺癌に対する区域切除の非ランダム化検証的試験 (JCOG1211)
【対象疾患】臨床病期I期の非小細胞肺癌
【試験概要】日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) が実施している国内多施設共同非ランダム化検証的試験です。登録終了
臨床病期I/II期非小細胞肺癌に対する選択的リンパ節郭清の治療的意義に関するランダム化比較試験 (JCOG1413)
【対象疾患】臨床病期I期もしくはII期の非小細胞肺癌
【試験概要】日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) が実施している国内多施設共同ランダム化第III相比較試験です。登録終了
特発性肺線維症合併臨床病期I期非小細胞肺癌に対する肺縮小手術に関するランダム化比較第III相試験 (JCOG1708)
【対象疾患】特発性肺線維症の合併が疑われる臨床病期I期の非小細胞肺癌
【試験概要】日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) が実施している国内多施設共同ランダム化第III相比較試験です。
早期肺癌切除後の長期的転帰に関する観察研究(「JCOG0707:病理病期I期(T1>2 cm)非小細胞肺癌完全切除例に対する術後化学療法の臨床第III相試験」の附随研究) (JCOG0707A1)
【対象疾患】非小細胞肺癌 (WJOG0707試験に登録された方)
【試験概要】日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) が実施しています。以前実施されたJCOG0707「病理病期I期(T1>2 cm)非小細胞肺癌完全切除例に対する術後化学療法の臨床第III相試験」に参加いただいた患者さんが対象になります。
この研究は、JCOG0707試験に参加いただいた患者さんの長期的な経過を調べることによって、肺がん患者さんにとってどのような治療を行うことがより適切で、治療後にどのような点に気をつけるべきかを検討します。
詳しくはこちら
cIA期肺癌を対象として薄切CTと臨床所見から人工知能で病理・予後予測アルゴリズムを探索的に構築する統合解析研究 (JCOG2208A)
【対象疾患】非小細胞肺癌 (JCOG0802/WJOG4607、JCOG0804/WJOG4507L、JCOG1211試験に登録された方)
【試験概要】日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) が実施しています。
この研究は、上記の臨床試験にて得られた画像検査や血液検査などの検査データと臨床データから組織分類を予測するアルゴリズムを、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いて構築します。その後、国立がん研究センター東病院の後ろ向きのデータを使用して、前者で作成したAIアルゴリズムを用いて、予後・再発予測の転移学習を行い、さらに精度の高い予後・再発予測アルゴリズムを構築します。

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特発性肺線維症(IPF)合併非小細胞肺癌に対する周術期ピルフェニドン療法の術後急性増悪抑制効果に関する第Ⅲ相試験
【対象疾患】特発性肺線維症の合併が疑われる非小細胞肺癌
【試験概要】North East Japan Study Group (NEJSG) が実施している国内多施設共同ランダム化第III相比較試験です。
間質性肺炎合併肺癌切除患者における術後急性増悪予測リスクスコアバリデーションスタディ
【対象疾患】間質性肺炎の合併が疑われる非小細胞肺癌
【研究概要】日本呼吸器外科学会主導で実施している国内多施設共同前向き観察研究です。
多施設共同での前向き研究により、間質性肺炎の術後急性増悪を予測するリスクスコアの有効性を検証することを主な目的としています。
肺癌センチネルリンパ節に関する研究
【対象疾患】非小細胞肺癌
【研究概要】ICGを用いた蛍光イメージング法による肺癌センチネルリンパ節の手技を確立するために、その同定率やその精度を検討する臨床研究です。
第8次全国肺癌登録事業 胸腺上皮性腫瘍の前方視的データベース研究
【対象疾患】胸腺上皮性腫瘍(胸腺腫、胸腺癌、胸腺神経内分泌性腫瘍)
【研究概要】肺癌登録合同委員会(日本肺癌学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器内視鏡学会の共同で運営)が実施している国内多施設共同前向き観察研究です。胸腺上皮性腫瘍の患者さんのデータを匿名化した上でデータベースに登録し、本邦の治療の現状と治療成績を調査することで、胸腺上皮性腫瘍に関する研究ならびに診療の進歩・普及を図ることを目的にしています。
第9次全国肺癌登録事業 悪性胸膜中皮腫の前方視的データベース研究
【対象疾患】悪性胸膜中皮腫
【研究概要】肺癌登録合同委員会(日本肺癌学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器内視鏡学会の共同で運営)が実施している国内多施設共同前向き観察研究です。悪性胸膜中皮腫の患者さんのデータを匿名化した上でデータベースに登録し、本邦の治療の現状と治療成績を調査することで、悪性胸膜中皮腫に関する研究ならびに診療の進歩・普及を図ることを目的にしています。
第11次全国肺癌登録事業 2021年に外科治療を施行された肺癌患者の前方視的データベース研究
【対象疾患】2021年1月1日~2021年12月31日に原発性肺癌の外科治療を受ける方
【研究概要】肺癌登録合同委員会(日本肺癌学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器内視鏡学会、日本胸部外科学会の共同で運営)が実施している国内多施設共同前向き観察研究です。原発性肺癌の患者さんのデータを匿名化した上でデータベースに登録し、本邦の治療の現状と治療成績を調査することで、原発性肺癌に関する研究ならびに診療の進歩・普及を図ることを目的にしています。
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第12次全国肺癌登録事業 NCDを用いた本邦における悪性胸膜中皮腫に対する根治術の有用性および予後予測因子の検討
【対象疾患】悪性胸膜中皮腫 (2014年1月1日~2019年12月31日に当院で悪性胸膜中皮腫に対して根治目的に手術を受けられた方)
【研究概要】公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンターを主体として行われます。以前実施されたCSPOR-LC03試験「本邦における術後補助化学療法の実態を調査した大規模多施設観察研究」に参加いただいた患者さんが対象になります。
以前収集したデータまたは余剰検体を用いて、EGFR遺伝子変異陽性の肺癌患者さんに対する最適な術後補助療法を選定する手がかりを得ることを目的としています。
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完全切除されたリンパ節転移陰性の非小細胞肺癌(> 2cm)患者に対する、UFTを用いた術後補助化学療法におけるEGFR遺伝子変異の影響:CSPOR-LC03試験副次解析としての多施設共同後ろ向き観察研究
【対象疾患】病理病期I期の非小細胞肺癌 (CSPOR-LC03試験に参加いただいた方)
【研究概要】公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンターを主体として行われます。以前実施されたCSPOR-LC03試験「本邦における術後補助化学療法の実態を調査した大規模多施設観察研究」に参加いただいた患者さんが対象になります。
以前収集したデータまたは余剰検体を用いて、EGFR遺伝子変異陽性の肺癌患者さんに対する最適な術後補助療法を選定する手がかりを得ることを目的としています。
詳しくはこちら
切除可能非小細胞肺癌 II-IIIA 期における血漿検体を用いた可溶性免疫因子のバイオマーカー研究 (WJOG12319LTR)
【対象疾患】非小細胞肺癌 (WJOG4107試験に登録された方)
【研究概要】西日本がん研究機構(WJOG)が実施しています。以前実施されたWJOG4107試験:非小細胞肺癌術後アジュバント治療におけるTS-1 vs CDDP+TS-1の無作為化第II相臨床試験に登録され、且つ化学療法効果予測因子の探索研究のために血漿検体を提出頂いた患者さんが対象になります。
残余血漿検体または保存血漿検体を用いて可溶性免疫因子(可溶性PD-L1、可溶性PD-1、可溶性CTLA-4)を測定し、これらの因子の肺がんにおけるバイオマーカーとしての意義を検討します。
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がん幹細胞系マーカー及びTumor mutation burden と術後再発の関連性を評価する後ろ向き観察研究 (WJOG12219LTR)
【対象疾患】非小細胞肺癌 (WJOG4107試験に登録された方)
【研究概要】西日本がん研究機構(WJOG)が実施しています。以前実施されたWJOG4107試験:非小細胞肺癌術後アジュバント治療におけるTS-1 vs CDDP+TS-1の無作為化第II相臨床試験に登録され、且つ化学療法効果予測因子の探索研究のために血漿検体を提出頂いた患者さんが対象になります。
残余血漿検体または余剰検体を用いて可溶性免疫因子(可溶性PD-L1、可溶性PD-1、可溶性CTLA-4)を測定し、これらの因子と生存期間の関連を検討します。
詳しくはこちら
肺悪性腫瘍に対する癌オルガノイド培養に関する研究
【対象疾患】手術により切除できた非小細胞肺癌患者および転移性肺癌患者
【研究概要】手術で切除した癌組織を特殊な培養条件で培養することにより、元の癌と似た形態を維持し、増殖する癌オルガノイド培養が可能になってきています。本手法により、癌細胞を生きたままの状態で解析したり保存したりすることができるようになるため、今後の癌研究において重要な手法になってきております。
肺悪性腫瘍に対して手術により切除できた腫瘍組織の一部を用いて癌オルガノイド培養を行い、その最適な培養条件等を検討し、臨床への実用化に繋げることを目的とした院内研究です。
詳しくはこちら

トピックス

完全胸腔鏡手術の導入

従来の肺がん手術は30cmほどの開胸創により行われていましたが、当科では手術の低侵襲化を目指し、1990年頃より他施設に先駆けて胸腔鏡補助手術を導入しました。さらに2009年からは、主として進行度I期(リンパ節転移のない5cm以下)の肺がんを対象に完全胸腔鏡手術を導入致しました。術者はモニター画像のみを見て手術を遂行するため、肋骨と肋骨を開く操作が不要となり、術後に生じる胸痛(術後創部痛、または肋間神経痛)がさらに軽減されました。早期離床、術後在院日数の短縮に効果を挙げています。

完全胸腔鏡手術 手術風景

完全胸腔鏡手術 手術の術野

胸腔鏡補助手術

完全胸腔鏡手術

肺癌がん、縦隔腫瘍に対するロボット支援手術(ダ・ヴィンチ)の導入

平成30年度の診療報酬改定により、「肺悪性腫瘍」、「縦隔悪性腫瘍」、「縦隔良性腫瘍」に対するダ・ヴィンチを用いた肺癌がんロボット支援手術が保険適応になりました。
ロボット支援下胸腔鏡手術は、従来の完全胸腔鏡手術と比較して手術道具のより細やかな動きが可能となり、かつ手術道具が身体に負担をかけにくい動きをするため、完全胸腔鏡手術の欠点を補い、より低侵襲となる可能性が期待されています。2019年5月に導入後、計145名の患者さんに同手術を施行しております (2022年12月31日現在)。

胸腺腫瘍摘出に対する剣状突起下アプローチ

胸腺は、胸の中央、心臓の少し上で、胸骨のすぐ後ろに位置しています。従来、胸腺にできた腫瘍を摘出する場合、胸骨縦切開が必要でしたが、当科では豊富な完全胸腔鏡下手術の経験を活かして2016年より剣状突起下アプローチによる胸腺・胸腺腫摘出術を行っています。痛みが少なく、整容的にも優れた、体への負担の少ない手術です。
適応については当科の外来担当医師にご相談下さい。

肺がんに対する術後補助化学療法

肺がんは完全切除したとしても残念ながら一定数の再発がみられ、手術後のステージが進むにつれ再発率は高くなります。手術後のステージが2期・3期の場合には、殺細胞性抗がん剤(シスプラチンを併用した2剤抗がん剤療法)による術後補助化学療法が再発率を抑えかつ根治率を上げるために有効であると2008年に報告されて以降、この術後補助化学療法が行われてきましたが、その効果は限定的でした。
2020年以降になり免疫チェックポイント阻害薬、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が肺がん切除後の再発率の抑制に有効であるとの大規模臨床試験の結果がたて続けに報告されました。これらの結果を受けて、2022年に肺がん術後補助化学療法の治療薬として、免疫チェックポイント阻害薬ではテセントリク、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬ではタグリッソが保険承認され、本邦でも使用できるようになりました。
しかし、現在報告されているデータは短期的な成績のみであり、また薬剤による重篤な副作用も報告されているため、使用に関しては慎重な検討が必要です。当院では当科、呼吸器内科、放射線治療科・診断科、病理診断科で週1回合同カンファレンスを行っており、それぞれの患者さんに適した術後補助化学療法を検討しています。

紹介元の先生へ

当科は常勤医7名(うち呼吸器外科専門医6名)体制で診療に当たっており、夜間・休日や学会開催期間も常時オンコール体制を敷き、術後患者さんの急変時にも迅速に対応しております。
また術後の状態が安定した後は、「地域連携パス」を活用することで、かかりつけ医の先生方と情報交換を行い、患者さんの視点に立った安心で質の高い医療を提供して参ります。お気付きの点がございましたら、ぜひ外来担当医にお声掛けください。