乳腺外科
ご挨拶
近年の乳癌に対する診断法、治療法の進歩、及び乳癌の遺伝・生物学の解明は目を見張るものがあります。また、乳がん患者数の増加や遺伝性乳癌に対する理解も広がり社会的関心も日増しに高まっています。その結果、乳癌診療にあたっては個々の癌の特徴を踏まえた診断・治療法の選択が求められ、高度の専門的判断が要求されるようになってきました。全国的に有数の乳癌診療施設である当センターでは2003年6月1日より乳腺科が新設され、年間約250例の乳癌手術を実施しています。兵庫県癌拠点病院である当センターでは、最新の診断機器を取り揃え、乳癌手術には欠かせない各種診断・検査部門の充実がなされ、各診療部門とも連携し精度の高い医療を提供しております。日本乳癌学会認定研修病院にも登録されており、全国レベルで評価の高い当センターの乳癌診断・治療を更に発展させ、今後も全国更に世界の乳癌治療の進歩に貢献したいと考えております。
特徴・特色
乳癌は、固形癌のなかでも、放射線療法や化学療法・内分泌療法などの薬物治療に対する反応性が高いことが知られています。また、トラスツズマブに代表される分子標的薬も以前から使用され、乳癌の治療成績向上に多大な貢献をしています。近年、この分子標的薬の開発がさらに大きな広がりをみせ、そしてかつてないスピードで実臨床に応用されています。近い将来、手術が不要になる可能性もあります。しかし、現時点では、外科治療・放射線療法の局所療法と、上記の薬物療法を組み合わせた集学的治療が必要です。世界的に標準治療とされる治療法も、次々に発表されるエビデンスにより、その内容や対象が変化し、乳がん基礎分野の進歩も相まって、より個別化されるようになってきました。当科では、このような最新の技術や知識(エビデンス)を取り入れ、最先端の乳癌診療を行っています。一方で、臨床試験・治験に積極的に参加し、エビデンスを作る方にも貢献しています。
当科を受診される方へ
当科は外来完全予約制を導入しており、乳腺悪性腫瘍に特化した診療を目指しています。当科初診を希望される方は、近隣医療施設より当院地域連携室に診察予約をおとり下さい。外来診療は月~金、毎日行っております。 当科は、新規患者さん以外にも、多くの術前・術後、さらには再発治療中の再診乳がん患者さんを診療しています。この中で、再発治療の患者さんは、治療に難渋していたり、病状が重症であったり、多くの場合診療に十分な時間を要します。そのため、しばしば予定通りの診療時間が守られず、待ち時間が長くなったり、診療終了時間も大幅に遅れることがあります。患者の皆様には大変ご迷惑をお掛けすることになりますが、上記の事情に鑑みご容赦をお願い致します。
主な疾患
乳腺悪性腫瘍全般
きん しょうしん
金 昇晋
役職 | 乳腺外科部長(診療科長) |
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資格 | 日本外科学会 指導医・専門医 日本乳癌学会 指導医・専門医・近畿地方会世話人 日本内分泌・甲状腺外科学会 指導医・専門医 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 日本遺伝性腫瘍学会 専門医 NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構 マンモグラフィ読影認定医 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 乳房再建用エキスパンダー/インプラント 責任医師 近畿外科学会 評議員 |
卒業年度 | 1989年 |
ひろかが こういち
廣利 浩一
役職 | 乳腺外科部長 |
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資格 | 日本外科学会 指導医・専門医 日本乳癌学会 指導医・専門医・評議員 教育研修委員会委員 画像診断小委員会委員 日本遺伝性腫瘍学会 専門医 日本乳癌検診学会 理事・評議員・研修委員会副委員長 日本超音波医学会 指導医(乳腺・甲状腺)・専門医・関西地方会運営委員会委員 日本乳腺甲状腺超音波医学会 評議員・乳腺用語診断基準委員会委員・教育委員会委員・インターベンション小委員会副委員長 日本乳がん検診精度管理中央機構 理事・教育・研修委員会委員・乳房超音波部門部門長・マンモグラフィ部門読影委員 日本がん治療認定医機構 認定医 日本乳房オンコプラステックサージャリー学会 乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師 日本乳癌画像研究会世話人 近畿外科学会 評議員 兵庫県医師会 乳癌検診推進検討会議委員長 兵庫県健康財団 マンモグラフィ専門委員会委員 |
卒業年度 | 1992年 |
たね かおり
田根 香織
役職 | 乳腺外科医長 |
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資格 | 日本外科学会 専門医 日本乳癌学会 指導医・専門医・評議員・国際委員会・学術委員会・学術総会企画委員会委員 日本がん治療認定医機構 認定医 緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会修了 日本超音波医学会 専門医(乳腺・甲状腺) 日本遺伝性腫瘍学会 専門医 日本乳腺甲状腺超音波医学会 評議員 近畿外科学会 評議員 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 乳房再建用エキスパンダー/インプラント 実施医師 KBCOG 副理事長 Member of the International Education Steering Group,ASCO |
卒業年度 | 2005年 |
たぐち ふみか
田口 芙佳
役職 | 乳腺外科医長 |
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資格 | 日本外科学会 専門医 日本乳癌学会 乳腺認定医 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 乳房再建用エキスパンダー/インプラント 実施医師 |
卒業年度 | 2015年 |
なかむら はるな
中村 はる菜
役職 | 乳腺外科医長 |
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資格 | 日本外科学会 専門医 日本乳癌学会 専門医 日本遺伝性腫瘍学会 専門医 |
卒業年度 | 2016年 |
かわばた ともよ
川端 知世
役職 | 乳腺外科専攻医 |
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資格 | 乳がん検診精度管理中央機構 マンモグラフィ読影認定医 |
卒業年度 | 2021年 |
外来診療表
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||
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乳腺外科 | 1診 | 金 |
(午前) |
金 | 中村(は) | |
2診 | 廣利 | 廣利 | 田口 | (午前) 廣利 |
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3診 | (午前) 田根(香) (午後) 田口 |
田根(香) | 田根(香) |
休診・代診のお知らせ
急な都合による休診情報は掲載できない場合がありますので、ご了承ください。
診療実績他
乳房温存手術 | 乳房切除術 | その他 | センチネルリンパ節生検 | 原発乳癌手術数 | |
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2003 | 91 | 129 | 2 | 116 | 222 |
2004 | 127 | 85 | 1 | 150 | 212 |
2005 | 95 | 106 | 1 | 152 | 202 |
2006 | 95 | 116 | 4 | 151 | 211 |
2007 | 77 | 98 | 6 | 106 | 175 |
2008 | 77 | 101 | 1 | 122 | 179 |
2009 | 92 | 100 | 0 | 125 | 192 |
2010 | 74 | 111 | 2 | 115 | 187 |
2011 | 98 | 101 | 2 | 133 | 201 |
2012 | 76 | 150 | 1 | 145 | 227 |
2013 | 80 | 142 | 2 | 151 | 224 |
2014 | 82 | 149 | 0 | 143 | 231 |
2015 | 62 | 147 | 2 | 116 | 211 |
2016 | 53 | 158 | 5 | 136 | 211 |
2017 | 53 | 165 | 2 | 147 | 220 |
2018 | 49 | 191 | 1 | 151 | 241 |
2019 | 68 | 175 | 5 | 156 | 248 |
2020 | 65 | 207 | 1 | 175 | 273 |
2021 | 83 | 176 | 0 | 167 | 259 |
2022 | 95 | 164 | 0 | 181 | 259 |
2023 | 43 | 191 | 2 | 166 | 234 |
標準治療について
当科の乳癌治療は、乳腺科、腫瘍内科、放射線科、病理診断科の協議のもとに作成された乳癌治療マニュアルをもとに行っています。基本的には、日本乳癌学会による乳癌診療ガイドラインをベースに、ザンクトガレン会議でのコンセンサス、NCCNガイドラインなど、その時点での世界的な標準治療指針を参考にしながら治療方針を決定しています。
*手術は、マンモグラフィ、エコー検査、造影MRI検査、病理検査を参考に、上記4科合同の術前カンファレンスで各症例の術式を検討しています。乳房温存手術に際しては、術中断端病理診断を行い、断端陰性(摘出標本の最外側に癌細胞が広がっていないこと)を高い精度で診断・確認しています。また、早い時期からセンチネルリンパ節生検を導入、実施しており、2500例以上の経験があります。ラジオアイソトープ法と色素法を併用し、より正確なセンチネルリンパ節生検を実施しています。
2014年からは、内視鏡補助下乳癌手術を導入し、適応症例に対して行い、高い整容性と根治性を実現しています。さらに整容性の向上として、形成外科の協力の元、一次一期および一次二期再建術として、自家組織(広背筋や血管柄つき遊離脂肪皮弁)や人工物(インプラント)を用いた乳房再建方法を、患者さんの要望や病状・体形などに合わせて実施しています。
*術前・術後化学療法は、腫瘍内科との協力のもと、県下多施設共同臨床試験や全国規模、さらにはグローバル(世界的な)の臨床試験にも参加し、世界的標準治療を遵守するだけでなく、それらを開発するための治療にも努めています。
*再発乳癌に対しては、患者さん個々の病態や社会的環境なども考慮し集学的治療を行っています。また、緩和治療も含めた病病連携、病診連携により地域の医療機関との連携をはかりながら、患者さんのQOL(生活の質)が低下することがないように切れ目のない診療を行っています。終末期患者さんに対しては、必要に応じて入院加療を行いますが、緩和医療へのスムーズな移行を導入することにより、可能な限り在宅療養への移行を援助し、最期まで家族とともに安楽に過ごせるように配慮しています。
トピックス
疫学研究・臨床研究について
当院では、疫学研究・臨床研究に積極的に取り組み、医療の進歩に貢献したいと考えています。詳細は下記の研究一覧を参照して下さい。
臨床試験・治験について
臨床試験というのは、新しい治療法を評価するために行う臨床研究のことです。臨床試験は、新しいがん治療薬、改良されたがん治療薬、新しい薬物投与法、手術や放射線治療への新しい取り組み、様々な治療法の組み合わせなどの安全性と有効性を評価します。日本では、がん治療にかかわるすべての新しい取り組みについて、許容できるレベルの安全性があることと、特定のがん患者さんに恩恵をもたらすことを証明するような臨床試験の評価プロセスをきちんと踏まなければ、一般の患者さんに使えるようにはなりません。標準治療として皆さんに提供している方法は、常に改良が加えられ、これまでの標準治療との比較試験によって確立されてきました。特に薬物療法では、この数年の間にも多くの新薬が承認され、これまで標準とされた薬剤の組み合わせ、投与順序も、新薬の登場で改良していく必要がでてきました。また、これまで国外の臨床試験に先導され、その結果に準じてきた日本の乳癌治療も転換期を迎え、日本国内での積極的な臨床試験、国際的な臨床試験への参加が求められることになってきました。当科では、以前より神戸乳癌研究グループ(NPO法人 KBCOG)が主催する、医師主導型臨床試験に積極的に参加し、その結果を国内、外の学会に発表してきました。この臨床試験はKBCOG-01~13試験へと続き、現在も10~13試験が進行中です。また、全国規模の臨床試験グループである、JBCRG, WJOG, CSPORが主催する医師主導型臨床試験にも積極的に参加しています。 また、これらの実績が評価され、新薬を用いた国際臨床治験参加施設に選定され、まだ国内では使用不可の新薬をいち早く皆さんに提供できる機会を得ています。下記に紹介する臨床試験、国際臨床治験参加にご興味をお持ちの先生方、患者さんは、ご連絡ください。
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当科は外来完全予約制を導入しており、週5日毎日、乳腺悪性腫瘍患者に特化した外来診療をおこなっています。当科受診を希望される患者さんがおられましたら、地域連携室を通じていつでも診察予約をお取り下さい。なお、『悪性腫瘍が確定』していなく、『疑いの状態』でもご紹介して頂いて結構です。しかし、乳がん検診で要精査になっただけもしくは、患者さん自身が腫瘤や疼痛を訴えるだけなどの場合は、できれば当院よりも近医乳腺クリニックにまずはご紹介して頂けると幸いです。
今後も、病病連携、病診連携を通じて、地域乳癌診療の拠点病院としての役割を果たしていく所存ですので、よろしくお願い致します。