泌尿器科

泌尿器科

ご挨拶

泌尿器科では、患者さん目線での治療を心がけています。

同じがんであっても、患者さん毎に病態は様々です。 早期がんであっても、手術療法以外に、放射線治療や薬物治療が選択可能となっています。特に進行がんでは、経過が長期化し、病気と長い付き合いになります。治療方法を選択するにあたり、その患者さんに、一番適切で、患者さんご自身にも納得頂ける治療を提供することを心掛けて、日々診療に励んでおります。

特徴・特色

泌尿器科では、後腹膜、尿路および男性生殖器の悪性腫瘍に対する治療をおこなっています。
検診や人間ドッグでのCTやエコー検査、PSA検査の普及など、一般診療において泌尿器がんが発見される機会も増えてきており、当科でも年々手術件数の増加がみられ、年間400件以上の手術が行われています。 手術は低侵襲化が進み、2012年に手術支援ロボットを用いた腹腔鏡手術が初めて前立腺がんで保険適用になって以来、現在では、膀胱、腎臓・尿管、副腎、などへと適応が拡大、標準的な術式となっています。 手術侵襲の低減により高齢の患者さんでも安全に手術を受けることが可能となり、入院期間も短縮しています。また、転移を有する進行がんや再発がん、また手術前後の補助療法など、多くの薬物療法も行っています。従来からの抗がん剤に加えて、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤など、新しい薬剤の開発が数多く進んで、進行がんであっても長期の生存が可能になってきています。

当科を受診される方へ

当センターは医師5人で診療にあたっております。
当センターの性格より、原則、悪性腫瘍に対する治療が対象です。排尿障害や良性疾患の治療は近隣の泌尿器科にお願いいたしております。スタッフは泌尿器がんに対し豊富な治療経験、技術を有しています。手術を中心に化学療法、放射線療法など集学的治療をおこなっています。医療技術の進歩にともなって新しい治療法もどんどん開発がすすんでいます。腹腔鏡手術やロボット手術など体に負担の少ない低侵襲で最先端の治療を積極的に取り入れています。

主な疾患

  • 前立腺癌・・・根治療法としてロボット支援手術、放射線治療が検討されます。転移症例では薬物療法が中心です。
  • 膀胱癌・・・筋層非浸潤癌では経尿道的切除術、筋層浸潤癌では、膀胱全摘(ロボット支援)、尿路変更術が基本ですが、薬物療法を併用した放射線治療も選択されます。転移を有する場合は薬物療法が中心となります。
  • 腎癌・・・可能な限り腎機能を温存した腎部分切除術(ロボット支援)を検討します。腫瘍径が大きい場合は、全摘術が必要です。また、転移症例では、薬物療法が中心となります。
  • 腎盂・尿管癌・・・基本的には患側の腎尿管全摘除術が標準です。(ロボット支援、体腔鏡下)
  • 精巣癌・・・転移がない場合は手術療法、転移症例では薬物療法が標準です。
  • 後腹膜悪性腫瘍・・・基本的には手術療法が標準です。大きな症例では他科と合同での手術も必要となります。症例により、放射線治療や薬物治療等集学的な治療を検討します。

くらはし としふみ

倉橋 俊史

      
役職

泌尿器科部長(診療科長)

資格

日本泌尿器科学会 指導医・専門医

日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医

日本内視鏡外科学会 技術認定医(泌尿器腹腔鏡)

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

認定資格・ロボット支援手術プロクター

卒業年度 1997年

でん ひろゆき

田 寛之

      
役職

泌尿器科医長

資格

日本泌尿器科学会 専門医

日本泌尿器内視鏡・ロギティクス学会

卒業年度 2015年

ふじさわ しゅんすけ

藤澤 俊介

      
役職

泌尿器科医長

卒業年度 2018年

さえき よしき

佐伯 義樹

      
役職

泌尿器専攻医

卒業年度 2020年

りょうもと まさよし

良本 大昌

      
役職

泌尿器科専攻医

卒業年度 2022年

外来診療表

 
泌尿器科 1診 倉橋 佐伯 倉橋
2診 藤澤
3診 看護外来
(スキンケア)
担当医 看護外来
(スキンケア)
担当医 看護外来
(スキンケア)

休診・代診のお知らせ

急な都合による休診情報は掲載できない場合がありますので、ご了承ください。

診療実績他

当科が扱う疾患および標準治療について

当科の扱う疾患は、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、副腎腫瘍、後腹膜腫瘍などです。

腎がんの治療

癌の存在する腎を全摘出する手術を原則とします。ただし小径の癌(<4cm)では、癌の部分のみを切除する腎部分切除と全摘出の予後に差がないことから、機能温存を目的に部分切除を行っています。いずれも開腹手術と腹腔鏡手術がありますが、近年は腹腔鏡手術の比率が高くなっています。また、転移性腎がんや術後の再発例では、新しく開発された分子標的治療薬により著しい予後の改善がみられており、進行性腎がんの標準的な治療となっています。分子標的薬の開発も次々とすすみ、現在6種類の分子標的薬が使用可能であり、治療選択肢も増えています。

腎盂尿管がんの治療

がんの存在する側の腎臓および尿管を一塊として摘出する腎尿管全摘術を行ないます。また、進行度により術前、術後の抗がん剤治療を追加します。腎尿管切除術でも開腹手術と腹腔鏡手術がありますが、近年では腹腔鏡手術が主となっています。初診時より遠隔転移を有したり、手術後に再発した場合は抗がん剤治療が中心になります。抗がん剤治療は、以前はMVAC療法が中心で副作用も強く長期入院が必要でしたが、近年は新しい抗がん剤を使用したGC療法(ジェムシタビン+シスプラチン)を行っており、有効かつ副作用の少ない治療が可能になっています。投与は外来化学療法を取り入れており、患者さんの負担が大きく軽減しています。

膀胱がんの治療

膀胱壁内への浸潤が浅いがん(筋層非浸潤性)では経尿道的に内視鏡にて切除が可能です。ただし、術後の膀胱内再発が高率にみられるため、BCGや抗癌剤の膀胱内注入療法の追加がよく行なわれます。一方、膀胱壁内へ深く浸潤するがん(筋層浸潤性)では膀胱全摘術が標準的な治療です。膀胱温存的治療も行われますが、標準的治療とはいえず当科では原則行っていません。膀胱を摘出した場合は尿路変更術が必要となります。ストーマ型(尿管皮膚瘻、回腸導管)に加えて、病状より可能と考えられる場合はQOLの観点から腸管を使用した新膀胱造設術もおこないます。初診時より遠隔転移を有したり、手術後に再発した場合(膀胱内再発は除く)は、抗がん剤治療が行なわれます。投与法は腎盂尿管がんと同じくGC療法を行います。

前立腺がんの治療

早期がんでは手術または放射線治療による根治的治療が行なわれます。手術は根治性の高い治療で、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援腹腔鏡手術などの術式があります。ロボット手術は、出血が少ない、傷口が小さく疼痛が少ない、術後の回復が早い、尿失禁や勃起不全などの機能障害が少ないなどの利点があります。前立腺がんに対しては保険が適用されており一般手術と同じように受けることが可能です。放射線治療では外照射法と組織内照射法があります。外照射法では周囲臓器への影響を最小限におさえ前立腺に高線量を投与できるIMRT(強度変調放射線療法)が多く行なわれるようになっています。がんの悪性度や進行度により照射前、照射後のホルモン療法が併用されます。組織内照射法は当院では行っておりません。周囲への浸潤の疑いのある局所浸潤癌では、手術、放射線治療、ホルモン治療を組み合わせた併用治療を行います。このように早期の前立腺がんでは、いろいろ治療法の選択肢がありますが、病状に加えて年齢や全身状態等を総合的に判断して治療法の選択が行われます。一方、骨転移やリンパ節転移を有するような進行がんではホルモン療法が最も有効な治療法です。ただし、ホルモン療法の初期効果は著明ですが、数年で治療に抵抗性となることが多く、以後の治療が非常に困難になります。このようなホルモン療法が効かなくなった前立腺がんを去勢抵抗性前立腺がんといいます。去勢抵抗性前立腺がんに対しては、抗癌剤(ドセタキセル)を使用した化学療法が行なわれていましたが、最近、新しい作用機序を有する新規のホルモン治療薬や抗がん剤が使用可能となり予後の改善が見られています。

副腎腫瘍

ホルモン産生腺腫(褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、クッシング病)、原発性および転移性副腎腫瘍などに対する外科的治療を行っています。多くは腹腔鏡で切除が可能です。

2021年度

2022年度

2023年度
年間総手術件数 399 364 470
前立腺がん
ロボット支援前立腺全摘除術 68 71 79
膀胱がん
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT) 194 153 246
膀胱全摘除術総数 13 26 17
開腹膀胱全摘回腸導管造設術/皮膚漏 2 5 3
開腹膀胱全摘新膀胱造設術 0 0 0
ロボット支援回腸導管造設術/皮膚瘻 11 18 14
ロボット支援自排尿型新膀胱造設術 0 3 0
腎がん
腎がん手術総数 53 43 40
体腔鏡下腎摘除術 19 8 13
開腹腎摘 3 4 4
腎部分切除術 0 1 1
ロボット支援腎部分切除術 31 30 22
腎盂・尿管がん
腎尿管全摘除術 20 22 22
体腔鏡下 17 21 22
開腹手術 3 1 0
精巣がん
高位精巣摘除術 9 5 7

主要手術件数

術式 2016 2017 2018 2019 2020
開腹手術 腎摘除術 9 4 11 9 3
腎部分切除術 2 1 0 1 1
腎尿管全摘術 4 1 1 3 2
膀胱全摘除術 21 15 18 20 11
前立腺全摘除術(開腹) 0 2 0 0 0
腹腔鏡手術 腎摘除術 28 24 20 27 23
腎部分切除術 12 0 1 0 0
腎尿管全摘術 22 19 32 23 35
ロボット支援
前立腺全摘除術
75 68 84 69 63
ロボット支援
腎部分切除術
0 14 21 26 40
ロボット支援
膀胱全摘除術
0 0 0 0 10

各がんの疾患特異生存率

病理学的T分類 症例数 3年 (%) 5年 (%)
腎がん T1、T2 150 96.8 96.8
T3、T4 37 76.1 72.6
全症例 187 92.1 91
腎盂尿管がん T1、T2 18 100 100
T3、T4 26 65.3 51.3
全症例 44 80.1 72.3
膀胱がん T1、T2 42 89.9 85.6
T3、T4 53 69.1 49.4
全症例 95 79.1 67.1
膀胱がん T2 105 100 100
T3、T4 67 100 100
全症例 172 100 100

各がんとも手術を施行した症例です。手術せずに抗がん剤や放射線などで治療された症例や膀胱がんで内視鏡手術のみの症例は含まれておりまん。T分類は原発部位の腫瘍進展度を表すものですが、摘出臓器の組織診断による病理学的分類を用いています。
生存率は、疾患特異生存率(治療をおこなった疾患が原因で死亡する場合のみを死亡として算出)をKaplan-Meier法を用いて算出しています。

2013年5月

現在実施中の臨床研究・臨床試験

前立腺癌患者におけるアビラテロン併用アンドロゲン遮断療法が骨量に与える影響の観察研究
前立腺癌神経内分泌転化症例におけるゲノム解析と臨床経過についての検討
転移性腎細胞がん患者を対象としたIーO based combination therapy後のTKI治療の有効性と安全性に関する多施設共同後方視的観察研究

トピックス

ロボット支援手術

2012年に前立腺癌手術にロボット支援手術が保険適応となり、約10年が経過し、2023年には、腎癌、腎盂・尿管癌、膀胱癌に保険適応が拡大されました。 ロボット支援手術の手術適応拡大に伴い、より安全かつ低侵襲な手術療法が可能となっています。術後の合併症発生率の低下、入院期間の短縮および早期の社会復帰等が可能となってきています。

主要な癌の術式

2021年度 2022年度 2023年度
ロボット支援手術 110 122 115
体腔鏡下手術 36 29 36
 開腹手術 8 11 12

紹介元の先生へ

いつも患者様のご紹介をいただき有難うございます。当科は県下におけるがん治療の中心施設としてあらゆる泌尿器科領域のがんに対応できるよう日々、努力しています。進行がんや難治症例でも、がんセンターの特色を生かし他の専門科の協力も仰いで積極的な治療をおこないます。患者さんに、安心して最良の治療を受けていただけるよう全力で診療にあたっておりますので、是非ご紹介をお願いします。一方、患者さんの増加とともに、検査や治療後のフォローについては地域の先生方にお世話になる機会がますます増えてきています。当科では基礎疾患を有する高齢の患者さんも多く、治療早期よりの連携診療が必要で、治療後も様々なサポートを要する方が少なくありません。地域連携室とともに、先生方との円滑な連携が行えるよう努めますので、皆様のご支援とご協力をよろしくお願いいたします。  外来は火~金曜日で診療をおこなっており、地域医療連携室を通じて予約をとっていただけますが、緊急を要する病態であれば、ご連絡頂けたら、当日の予約、受診も対応させて頂きます。

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