消化器外科

消化器外科

ご挨拶

当科は、都道府県型がん診療連携拠点病院の消化器外科として兵庫県下の消化器がん外科的治療の中心的な役割を担っています。年間の消化器外科手術症例数は約600-700件で、どの領域も豊富な手術症例を経験しています。近年では各疾患で鏡視下手術(ロボット支援下手術を含む)を導入し、その適応も徐々に拡大し、食道がんはほぼ100%、胃がんは約50%、大腸がんは約90%が鏡視下手術になっています。また肝部分切除や膵体尾部切除にも腹腔鏡下手術を施行しています。現在、ロボット支援下手術の導入も各疾患で進めており、さらなる患者さんの手術侵襲の軽減に努めています。一方で、特に肝胆膵領域では拡大肝葉切除~肝部分切除、膵頭十ニ指腸切除、膵体尾部切除などの高難度手術を含む積極的な切除に取り組んでいます。更に新規抗がん剤や分子標的薬の併用、粒子線をはじめとした放射線治療など集学的治療の幅が広がり、もともと切除不能例でも化学療法後に切除へと手術適応が拡大するケースも増加しています(conversion surgery)。

特徴・特色

消化器がんの臓器別専門医のもとでがん治療に取り組んでいます。それぞれの分野のエキスパートが連携を行い、カンファレンスを通じて治療方針や手術方法を決定し、開腹手術のみならず鏡視下手術(ロボット支援下手術を含む)の適応も拡大し、高度進行例でも手術・化学療法・放射線療法などを組み合わせる集学的治療により、予後や生活に質(QOL)の改善に努めています。さらに医師以外にも看護師・薬剤師・リハビリテーションの各療法士・栄養士などがチームとなって、患者さんのがん治療を支援しています。術後の経過観察や生活指導、栄養指導、精神的なサポートなども行っており、患者さんと家族の方が安心して治療を受けることができるように、総合的なケアを提供しています。

当科を受診される方へ

消化器がん(食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓等)の各分野の専門医を中心に治療に携わります。当該科のみならず消化器内科・放射線診断科・放射線治療科・病理診断科などとも連携をとりながら、病態に応じてその患者さんに最も適した外科的治療を提供しています。がんの診断がまだついていない患者さんや、セカンドオピニオンも含めてお気軽に御相談ください。また各病院・開業医の先生方とも交流をはかるとともに、地域連携を通じて患者さんのかかりつけ医とも密接にフォローアップを行っていきたいと考えています。

とみなが まさひろ

富永 正寛

      
役職

院長

資格

日本外科学会 指導医・専門医

日本消化器外科学会 指導医・専門医

          消化器がん外科治療認定医

日本消化器病学会 指導医・専門医・学会評議員

日本肝胆膵外科学会 高度技能指導医・評議員

日本肝臓学会 専門医

日本移植学会 移植認定医

近畿外科学会 評議員

臨床研修指導医

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 1983年

ふじの やすひろ

藤野 泰宏

      
役職

副院長(診療・新病院整備・医療安全・感染対策担当)

医療安全管理室長

消化器外科科長

資格

日本外科学会 指導医・専門医

日本消化器外科学会 指導医・専門医

          消化器がん外科治療認定医

日本消化器病学会 指導医・専門医・学会評議員

日本臨床外科学会 評議員

日本肝胆膵外科学会 高度技能指導医・評議員

日本消化器内視鏡学会 指導医・専門医

日本超音波医学会 指導医・専門医

日本膵臓学会 指導医・評議員

日本外科感染症学会 ICD(インフェクションコントロールドクター)

がん治療認定医機構 暫定教育医・認定医

近畿外科学会評議員

臨床研修指導医

医療安全管理者講習修了

緩和ケア研修会修了

医学博士

WJG, WJT, JGH Editortal Board

卒業年度 1985年

すずき さとし

鈴木 知志

      
役職

部長(がん登録、診療連携担当)兼

消化器外科部長

資格

日本外科学会 指導医・専門医

日本消化器外科学会 指導医・専門医

       消化器がん外科治療認定医・学会評議員

日本内視鏡外科学会 技術認定医

ダビンチサージカルシステム術者認定資格

日本胃癌学会 代議員

臨床研修指導医

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 1991年

おかざき たろう

岡﨑 太郎

      
役職

消化器外科部長

資格

日本外科学会 指導医・専門医

日本消化器外科学会 指導医・専門医

          消化器がん外科治療認定医

日本消化器病学会 指導医・専門医

日本臨床外科学会 評議員

日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医・評議員

日本内視鏡外科学会 技術認定医(消化器・一般外科)

日本胆道学会 指導医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

近畿外科学会 評議員

臨床研修指導医

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 1995年

たなか もとふみ

田中 基文

      
役職

消化器外科部長

資格

日本外科学会 指導医・専門医

日本消化器外科学会 指導医・専門医

日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医・評議員

日本肝臓学会 指導医・専門医

近畿外科学会 評議員

臨床研修指導医

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 1998年

よこやま くにお

横山 邦雄

      
役職

消化器外科部長

資格

日本外科学会 専門医

日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医・専門医

日本消化器病学会 専門医

日本内視鏡外科学会 技術認定医(消化器・一般外科)

臨床研修指導医

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 2002

おおつぼ だい

大坪 大

      
役職

消化器外科部長

資格

日本外科学会 指導医・専門医

日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医・専門医

日本消化器病学会 専門医

日本内視鏡外科学会 技術認定医

ダビンチサージカルシステム 術者認定資格

日本食道学会 食道外科専門医・食道科認定医・評議員

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

臨床研修指導医

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 2004年

うえだ やすひろ

上田 泰弘

      
役職

消化器外科部長

資格

日本外科学会 専門医

日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医・専門医

日本救急医学会 救急科専門医

日本Acute Care Surgery学会 認定外科医

緩和ケア研修会修了

卒業年度 2004

やまぎし たかし

山岸 農

      
役職

消化器外科医長

資格

日本外科学会 専門医

日本消化器外科学会 専門医

日本肝胆膵外科学会 評議員

日本内視鏡外科学会 技術認定医

ダビンチサージカルシステム 術者認定資格

臨床研修指導医

緩和ケア研修会修了

卒業年度 2007年

ひがしの のぶひで

東野 展英

      
役職

消化器外科医長

資格

日本外科学会 専門医

日本消化器外科学会 専門医

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 2009年

たなか ともこ

田中 智子

      
役職

消化器外科医長

資格

日本外科学会 専門医

日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医・専門医

日本消化器病学会 専門医

日本内視鏡外科学会 技術認定医

ダビンチサージカルシステム 術者認定資格

緩和ケア研修会修了

医学博士

卒業年度 2010年

もうり こういち

毛利 康一

      
役職

消化器外科医長

資格

日本外科学会 専門医

日本消化器外科学会 専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

臨床研修指導医

緩和ケア研修会修了

卒業年度 2012年

外来診療表

消化器外科 1診 鈴木※ 上田

(午前)鈴木※

(午後)藤野※

東野 藤野
2診 岡崎※ 山岸 田中(智)
3診 横山

田中(基)

岡崎
4診

毛利

  大坪

※初診

休診・代診のお知らせ

急な都合による休診情報は掲載できない場合がありますので、ご了承ください。

診療実績他

はじめに

都道府県型がん診療連携拠点病院として、兵庫県下の消化器がん外科的治療の中心的な役割を担っており、年間の消化器外科手術症例数は約600-700件です。 内訳は食道がん20-35例、胃がん80-100例、結腸・直腸がん160-200例、肝がん80-90例(原発性50-55例,転移性30-35例)、胆道がん15-20例、膵がん・膵腫瘍40-50例などで、どの領域も豊富な手術症例を経験しています。 最近では各疾患で鏡視下手術(ロボット支援下手術を含む)が導入され、特に食道胃腸手術では主流となり、患者さんの手術侵襲の軽減に努めています。 また肝胆膵領域では積極的な切除のみならず、新規抗がん剤や分子標的薬の併用、粒子線をはじめとした放射線治療など集学的治療の幅が広がっています。

治療成績について

食道

食道がん治療のガイドラインに準拠した院内治療方針を作成し、放射線科ならびに消化器内科の協力のもとに外科的切除、放射線治療、化学療法の3つを基軸として集学的治療を積極的に行なっています。 食道がんの手術はもともと開腹・開胸で行っていたため手術侵襲が大きく、術後の合併症も多かったのですが、手術を受ける患者さんの負担を少しでも減らすため、最近は原則全ての胸部食道がんの方に対し腹臥位胸腔鏡下食道切除術を標準術式としています(2021年よりロボット支援下食道切除術も導入しました)。 一方、頚部食道がんは当院の頭頚部外科とも協力しながら治療に取り組んでいます。鏡視下手術により、患者さんの身体への侵襲が大幅に軽減するとともに良好な結果を得ています。 また科学的根拠に基づいた治療を行うため日本臨床腫瘍グループ(JCOG)に参加し臨床試験を行っております。

胃がん治療ガイドラインに準拠した形で院内治療方針を作成し、それを基本方針として症例ごとに術式を検討しています。早期胃がんおよび一部の進行胃がんに対しては低侵襲の腹腔鏡下胃切除ロボット支援下胃切除を、日本内視鏡外科学会技術認定医(胃)を中心として積極的に行っています。 一方、高度進行胃がんに対しては、消化器内科との連携の下で、必要に応じて他臓器合併切除などの拡大手術を行い、化学療法を併用した集学的治療を行っております。また、患者さん皆さんに安定・継続して良質な診療をご提供するために、入院から退院後を通じてクリニカルパス・地域連携パスを積極的に利用し、近隣のかかりつけ医や医療機関との連携も強化しています。 さらに科学的根拠に基づいた治療を行うため日本臨床腫瘍グループ(JCOG)や各種研究会・学会に参加し、最先端の治療を追求すべく臨床試験も行っております。

結腸・直腸

大腸がん治療ガイドラインに準じた手術療法を中心に行っています。当院では2006年より腹腔鏡手術を導入していますが、手技および器具の改良に伴ない適応を拡大し、現在では約90%に鏡視下手術を行っています。 この鏡視下手術は、大腸がんの中でも頻度が高く骨盤底にある直腸がんにも行われるようになりました。2021年11月よりロボット支援下手術も開始し、難易度の高い骨盤深部でも繊細な手術が可能となりました。ただし、腫瘍を安全・確実に切除することが目的なので、他臓器浸潤がある場合や巨大腫瘍や腹腔内癒着が高度である場合等は症例に応じて開腹手術も検討します。 以前は肛門温存が困難であった肛門近傍の下部直腸がんでも、手術の進歩(経肛門的直腸間膜切除術内肛門筋切除術など)により症例によっては肛門温存手術も行うことが可能となりました。直腸がんの場合はがんの根治度と後遺症としての排便・排尿・性機能障害等とのバランスが大事であり、患者様の生活環境によっては肛門温存が最善でない場合もあります。 大腸がんは適切に手術を行えば比較的治癒しやすいStage I・II大腸がんと、補助化学療法が有用と考えられるStage III大腸がん、他臓器に転移を伴うStage IV大腸がんに分けられます。また、大腸がんの再発は肝臓・肺臓・局所などに認めます。他臓器転移があっても再発でも治癒切除が可能であれば積極的に切除を行います。 以前に比べ進行大腸がんの治療成績は格段に向上しましたが、最初は切除不能でも大腸外科のみならず消化器内科・腫瘍内科・放射線診断科・放射線診断治療科・呼吸器外科などと密接に連携をとって集学的治療を行い切除可能となった段階で外科的切除を行います。

肝臓

原発性肝がんの中で多くを占める肝細胞がんは背景疾患としてB型やC型肝炎が60-70%を占めていましたが、最近は脂肪肝をはじめとする非B非C型肝炎の患者さんが増えています。多くは慢性肝炎や肝硬変が併存するため、治療に関しては患者さんの肝予備能と腫瘍側の因子(大きさ、個数、部位、脈管との関係)を常に考慮しながらバランスのとれた治療法を選択する必要があります。肝予備能と腫瘍の病態から切除可能と判断し、長期生存が期待できる場合は根治性が最も高い肝切除を第一の治療法と考えています。 また切除が選択されなかった時でも腫瘍の状況に応じて経皮的や開腹下のラジオ波焼灼術や肝動脈化学塞栓療法(TACE-放射線科施行)を行っています。その他、粒子線をはじめとする放射線治療、分子標的薬などの薬物療法が選択肢としてあります。 さらに現在では低侵襲手術として腹腔鏡下肝切除を積極的に取り入れ、初発の肝細胞がんに加え再発した肝細胞がんに対しても可能な限り腹腔鏡下で切除するようにしており、最近は全体の肝切除のうち約5割を腹腔鏡下で行い、術後早期の退院を可能としています。 このように肝細胞がん治療は従来法に先進的治療が加わり、治療の幅が大きく広がりました。肝細胞がんの治療については消化器外科、消化器内科、放射線診断科や病理診断科などとの院内カンファレンスを通して個々の患者さんにとって最善の治療法を検討しています。 なお、肝細胞がん治療後の5年再発率は約70%と非常に高率ですが、再発後も肝切除を含めた積極的な治療を繰り返すことで、5年生存率は約50%と比較的良好な結果となっています。一方、胆管細胞がん、大腸がんや胃がんの転移性肝がんなどその他の悪性腫瘍に関しても積極的に切除を行っています。 最近では切除不能な大腸がんの肝転移に対しても、化学療法の進歩により腫瘍が縮小・消失して切除可能となる患者さんの割合も増えてきました。当院では消化器内科の協力のもと化学療法後に肝切除を行ったり、2回に分けて切除する二期的肝切除などを行うことで切除適応を拡大しています。

膵臓・胆道

膵疾患に関しては、膵がん・膵腫瘍(膵内分泌腫瘍・嚢胞性膵腫瘍など)・腫瘤形成性膵炎などの外科的治療を行っており、2008年以降2022年末までで500例以上の膵疾患手術症例を経験しています。術前には消化器内科や放射線診断科などと協力して質の高い診断を行なった上で、手術適応や切除範囲を決定しています。 手術に際しては工夫を凝らした膵切除法や膵吻合法を用いて手術成績の改善に努め、鏡視下手術の導入も図っています。また周術期管理も統一を図ることで結果として従来に比べ合併症の減少や在院日数の短縮につながっています。 膵がんに対しては、膵頭十二指腸切除や膵体尾部(脾合併)切除を標準術式としながら拡大リンパ節郭清や血管・大腸などの積極的な合併切除も行ない、切除率や根治性の向上に努めるとともに、集学的治療として消化器内科や放射線治療科などと協力し、手術前後に化学療法などを積極的に行っています。
一方で切除不能症例に対しては、患者さんの「生活の質」(QOL) を考慮してバイパス術や化学療法などを行なう中で、化学療法にて腫瘍を縮小後に切除を行なった症例も経験しています。また特殊な治療法としては、粒子線治療(紹介)など独自性の高い治療も選択枝に加えているほか、最近は鏡視下膵体尾部切除も行っています。 胆道疾患の悪性腫瘍は肝外胆管がん・肝門部胆管がん・胆嚢がん・乳頭部がんと多岐にわたり、2008年以降2022年末までで260例ほどの手術症例を経験しています。消化器内科や放射線診断科と協力して質の高い診断を行なった上で、各疾患に応じて治療方針を決定し、肝切除や胆膵合併切除などを含めた積極的な手術治療を行なっています。 また、手術不能例に対しては消化器内科等の協力のもとで、内視鏡的ステント術などによる減黄処置などを行うとともに、化学療法・放射線療法などを病態に応じて施行しています。

いずれの疾患の場合にも、診療ガイドラインを基本として患者さん・御家族の方の意見を尊重しながら各領域の専門医がカンファレンスを通じて個々の患者さんに最も適した治療法を提供しています。

手術件数

主な術式別手術数 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
食道亜全摘 33(32) 26(25) 29(28) 26(26) 19(19)* 15(15)* 21(21)*
胃全摘 55(9) 29(4) 37(6) 25(3)* 27(3) 14(4)* 17(7)
幽門側胃切除 60(35) 60(36) 47(26) 58(29)* 39(21)* 42(33)* 53(45)*
噴門側胃切除
(下部食道切除含む)
3(1) 1 1(1) 9(2) 1 3(2) 2(1)
胃部分切除 9(1) 7(5) 5(2) 7(5) 8(4) 6(3) 8(5)
結腸切除 88(68) 74(62) 86(73) 63(57) 125(96) 103(79)* 99(89)
前方切除 62(57) 62(61) 57(56) 50(39)* 49(40)* 67(52)* 59(46)
大腸(亜)全摘 0 0 0 3(2) 0 0 1(1)
内肛門括約筋切除 (ISR) 4(4) 2(2) 0 0 0 2(2) 0
マイルス手術 10(9) 15(15) 10(9) 13(13) 8(8) 8(8) 8(8)*
骨盤内臓全摘 5 1 3 4 1 1 5(5)
肝葉切除
/中央2区域切除
16 15 20 12 12 6 7
肝区域切除
/亜区域切除
7 8 15 13 19(7) 12 13(8)
肝部分切除 46(1) 33(13) 40(27) 38(27) 55(31) 37(29) 49(38)
膵頭十二指腸切除
/膵全摘
31 36 24 20 29 19 22
膵体尾部切除 18 10(2) 15 10(1) 15(8) 11(5) 17(13)
拡大胆摘 7 8 3 7 3 4 2
総手術数 659 615 597 593 657 632 593

(鏡視下手術数)
*ロボット含む

臨床試験について

I.臨床試験とは

ある病気に対して有効であることが予想・期待される新しい薬や治療法・診断法が見いだされたときには、基礎研究(動物・生理・生化学実験等)で検証した後、実際にその安全性や効果について患者さんのご協力を得て調べなければなりません。それらを臨床の現場で科学的に調べるための研究の方法が「臨床試験」です。現在すでに使用されている多くの薬や治療法・診断法も、これまでの多くの患者さんの御協力を得て国内および海外での臨床試験によって実証され進歩してきた結果です。また患者さんが臨床試験に参加される場合には、参加することで新しい治療法を受けられる可能性がある一方で、まだ確立されているわけではない治療だけに被る不利益(予想したほどの効果がない、副作用が出現した等)もあり得ることを十分に理解していただく必要があります。
当院の消化器外科は日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)に参加しています。JCOGは厚生労働省の研究費に基づいて運営されているがんの研究組織です。国内で限定された50前後の施設が参加しており、当院はその一つに認定されております。現在JCOGをはじめ、他にも各領域における専門の医師・医療機関が集まって、各々の臨床試験を実施・検証を行っています。
そこでいろいろながん患者さんに関して、臨床試験が行われている領域で一定の条件を満たす場合には、臨床試験のお話をさせていただくことがあります。参加の可否は患者さんの自由意思に委ねられており、参加していただいた場合は臨床試験に登録された医師によってその治療をさせていただきます。また不参加の場合でも当院の治療方針に従って従来の治療を行い、患者さんに不利益となることはありません。主治医や各疾患責任医師から内容の説明をうけ、十分に御理解いただいた上でご自由に選択して下さい。

臨床試験への参加をご希望されない方は辞退することが可能ですので、各疾患の責任医師または科長までご相談ください。またご不明の点は遠慮なく責任医師または主治医にお尋ね下さい。

連絡先
兵庫県明石市北王子町13-70 TEL:078-929-1151
兵庫県立がんセンター 消化器外科 各試験責任医師 または 科長 藤野泰宏

II.現在行われている臨床試験など

臨床試験管理課

NCD/各臓器のデータ登録に関して

我が国ではすでに関連する多くの外科系臨床学会が連携し、日本の医療の現状を把握して情報を共有するとともに治療の均沾化と質の向上を目指して『一般社団法人National Clinical Database』(以下NCD)を立ち上げ、データベース事業を開始しています。 この事業を通じて患者さんに対してより適切な医療を提供し、また各領域において専門医の適正配置や最善の医療の提供といった取り組みを支援することが可能となります。 当センターにおいては本事業に消化器外科、乳腺外科、呼吸器外科が参加しており、手術・治療をうけられるすべての患者さんを対象にデータを登録させていただいています。 NCDへの登録を希望されない方は主治医にお申し出ください。 尚、NCDに登録する際には、患者さんの氏名やカルテ番号等の個人を識別できる情報は登録しませんので、個人情報が外部に漏洩することはありません。 何卒趣旨をご理解の上、ご協力賜りますようよろしくお願い申し上げます。
加えて消化器のがんにおいては、その領域が広範囲の臓器に及ぶため、NCDに関連して或はこれとは別に各専門領域別学会・研究会が主導して専門臓器別のさらに詳細なデータ登録が行われています(膵がん登録・胆道がん登録・肝臓がん登録・食道がん登録・胃がん登録・大腸がん登録等)。 こうしたデータも、各専門領域の研究会や学会が責任を持って集計・解析し、我が国の各臓器のがんの状況を正確に把握するとともにその治療の発展に寄与できるように努めています。
こちらの登録も個人が特定される情報は一切登録いたしませんので、個人情報の漏洩はありません。
こうした各臓器別の登録も希望されない方は主治医にお申し出ください。
重ねてご協力の程、お願い申し上げます。

後期研修医・フェローについて

兵庫県立がんセンター・消化器外科では、県下のがん診療拠点病院として食道胃腸領域、肝胆膵領域ともに豊富な手術症例を経験しています。これに伴い、初期研修終了後の後期研修医(医師免許取得後3-5年)およびフェロー(医師免許取得後6-7年以降)も広く募集しております。 兵庫県立がんセンターでの研修を考えておられる先生、少しでも消化器外科、特にがん診療に興味のある若い外科医、またがんセンターでの手術を見学してみたい先生などお気軽に御相談ください。

問い合わせは副院長・消化器外科科長 藤野泰宏まで。

紹介元の先生へ

がん拠点病院として、消化器がんの臓器ごとに専門医をおき、当該科のみならず消化器内科・放射線診断科・放射線治療科・病理診断科などとも連携をとりながら、カンファレンスを通じて、最新治療も含めて開腹手術から鏡視下手術(ロボット手術を含む)まで病態に応じてその患者さんに最も適した外科的治療を提供しています。がんの診断がまだついていない患者さんや、セカンドオピニオンも含めてお気軽に御紹介ください。また各病院・開業医の先生方とも交流をはかるとともに、地域連携を通じて患者さんのかかりつけ医とも密接にフォローアップを行っていきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。