整形外科

整形外科

ご挨拶

整形外科では、旧成人病センター時代より、約40年にわたって骨・軟部腫瘍に特化した診療を行っており、県下でも有数の症例数を経験しています。がん専門病院ではありますが、整形外科では良性の骨・軟部腫瘍の診療も行なっています。 悪性の骨・軟部腫瘍は希少がんに分類され診断や治療が難しいとされていますが、がん診療の専門家が揃うがん診療拠点病院の特性を生かし、腫瘍内科、放射線治療科、放射線科診断科、病理診断科、形成外科などの診療科をはじめ、看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師などの協力のもとチーム医療で骨・軟部腫瘍の診断、治療にあたっております。

特徴・特色

骨腫瘍は骨に発生する腫瘍で、原発性骨腫瘍と転移性骨腫瘍に分類されます。軟部腫瘍は筋肉、皮下組織、神経などに発生する腫瘍で原発性軟部腫瘍、転移性軟部腫瘍に分類されます。 原発性の悪性骨腫瘍・軟部腫瘍(肉腫、サルコーマ)の治療は手術を中心に抗がん剤、放射線治療を併用します。手術では腫瘍を共に周りの骨や筋肉を大きく切除します。その結果生じた組織の欠損を人工関節や、別の筋肉を利用して再建します。手術ができない場合は、県立粒子線医療センター、神戸陽子線センターと連携して粒子線治療を行なっています。 転移性骨腫瘍(内臓などの癌が骨に転移するタイプ)の治療は患者さんの状態に応じて薬物療法、放射線治療、手術を組み合わせて行います。整形外科は元々の癌の主治医と協力して、転移性骨腫瘍の診断、骨折の危険性の評価、コルセットや杖などを用いた骨折の予防、骨折の手術を担当しています。

当科を受診される方へ

整形外科では充分なインフォームドコンセントを行った上で治療を行っています。 病気の情報については原則として良性・悪性を含め全てお伝えしています。その上で考えられる治療法、予想される治療効果、副作用、合併症、治療の見込みなど説明します。それらの内容をご理解頂いた上で患者さんに最適な治療法を選んで頂き、ご希望に沿った治療が行えるよう努めています。また治療法を迷われる場合はセカンドオピニオンとして他の医療施設の専門医の意見を聞いて頂く事もできますので、ご遠慮なくご相談ください。 前述の通り整形外科は骨・軟部腫瘍の診療を専門に行っています。したがって診察の結果、その他の整形外科疾患(骨折、変形性関節症、関節リウマチ、頚椎症、腰椎症など)とわかった場合は他の医療機関に紹介させていただきます。

主な疾患

  1. 骨腫瘍
    (ア) 良性骨腫瘍:骨軟骨腫(外骨腫)、内軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、骨芽細胞腫、骨巨細胞腫、孤立性骨嚢腫、動脈瘤様骨嚢腫、線維性骨異形成、線維性骨皮質欠損・非骨化性線維腫など
    (イ) 悪性骨腫瘍:骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨悪性線維性組織球腫、脊索腫など
    (ウ) 転移性骨腫瘍:内蔵などに発生した癌の骨への転移(がん骨転移)
  2. 軟部腫瘍
    (ア) 良性軟部腫瘍:脂肪腫、神経鞘腫、神経線維腫、デスモイド、腱鞘巨細胞腫・色素性結節性絨毛滑膜炎、血管腫、弾性線維腫など
    (イ) 悪性軟部腫瘍(軟部肉腫、サルコーマ):未分化多形肉腫(悪性線維性組織球腫)、脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、未熟神経外胚葉性腫瘍(PNET)・ユーイング肉腫、血管肉腫、胞巣状軟部肉腫、骨外性骨肉腫、骨外性粘液型軟骨肉腫、明細胞肉腫、類上皮肉腫など

ふじた いくお

藤田 郁夫

      
役職

診療部長 兼

リハビリテーション部長

整形外科部長(科長)

資格

日本整形外科学会認定 整形外科専門医・骨軟部腫瘍医・脊椎脊髄病医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

中部日本整形外科災害外科学会 評議員

卒業年度 1991年

ふじもと たくや

藤本 卓也

      
役職

整形外科部長

資格

日本整形外科学会認定 整形外科専門医・骨軟部腫瘍医

日本中性子捕捉療法(NCT)学会 認定医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

卒業年度 1995年

やひろ しゅんすけ

八尋 俊輔

      
役職

整形外科医長

資格

日本整形外科学会認定 整形外科専門医・運動器リハビリテーション医

卒業年度 2012年

なかむら しょうたろう

中村 翔太郎

      
役職

整形外科フェロー

卒業年度 2019

外来診療表

整形外 1診 藤田 藤本 藤田 藤本
2診 藤本(A) (午前)八尋(A) 八尋 藤田(A)

休診・代診のお知らせ

急な都合による休診情報は掲載できない場合がありますので、ご了承ください。

診療実績他

組織診断

悪性骨腫瘍
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
軟骨肉腫 3 1 1 3 2 2
淡明細胞型軟骨肉腫 1 1
間葉性軟骨肉腫 1
骨肉腫 1 1 1 4 3
血管内皮腫 1
脊索腫 2 1 2
未分化多形肉腫 1 1
その他 1 1
合計 5 4 0 4 12 8 2
良性骨腫瘍
2015 年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
骨軟骨腫 16 14 8 14 5 17 10
内軟骨腫 1 17 12 12 13 11 15
軟骨芽細胞腫 1 2
爪下外骨腫 2 3
傍骨性骨軟骨異形増生 1 1
類骨骨腫 1 2 3
類腱線維腫 1 3
血管腫 4 2 8 3 5 7
動脈瘤様骨嚢腫 1 1 1
骨巨細胞腫 2 3 1 1 3 4
非骨化性線維腫 13 3 5 12 2 11 7
骨線維性異形成 1 1 1 1 2
単発性骨嚢腫 5 10 4 6 3 4 3
線維性骨異形成 2 4 6 2 5 3
脂肪腫 6 3 3 8 4 5
神経鞘腫 1
骨内類皮様嚢腫 1
その他 1 1 1
合計 61 61 51 60 41 66 44
悪性軟部腫瘍
2015 年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
脂肪肉腫 9 12 21 19 18 12 16
線維肉腫 2
粘液線維肉腫 4 8 3 4 11 11 5
低悪性度線維粘液性肉腫 1
血管肉腫 1 1
平滑筋肉腫 4 3 2 1 2
横紋筋肉腫 1 1
骨外性骨肉腫 1 1
骨外性軟骨肉腫 1
悪性末梢神経鞘腫瘍 2 1 2
滑膜肉腫 3 1 1 1 1 1
胞巣状軟部肉腫 1 1 1
明細胞肉腫 1
未分化多形肉腫 3 1 5 5 9 5
骨外性Ewing肉腫・未熟神経外胚葉性腫瘍 1
その他 2 4 5 1 1 4 1
合計 25 34 34 32 39 41 33
中間性軟部腫瘍
2015 年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
デスモイド型線維腫症 1 2 4 2 2 2 1
隆起性皮膚線維肉腫 1 1 1 5
軟部の孤在性線維性腫瘍 1 1 1
化骨性線維粘液性腫瘍
血管内皮腫 1
その他 1 1
合計 2 3 4 4 5 3 7
良性軟部腫瘍
2015 年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
脂肪腫 51 70 67 54 60 53 45
血管脂肪腫 4 1 1 2 1 2
結節性筋膜炎 3 1 1 1
弾性線維腫 3 2 2 3 5 3 6
線維腫 4 5 3 3 5 6 5
腱滑膜巨細胞腫 8 4 10 8 8 10 9
血管腫 27 20 19 13 11 14 18
グロムス腫瘍 1 1 2
平滑筋腫 3 1 1 3
骨外性軟骨腫 1 2 2
神経鞘腫 23 32 23 31 42 41 26
神経線維腫 3 1 1 2 1
粘液腫 5 1 6 4 1
その他 3 10 8 8 5 4 6
合計 122 152 143 127 149 140 123

トピックス

骨・軟部腫瘍の診断

(ア) 画像検査 外来で診察を行った後に画像診断を行います。症状に応じてレントゲン、CT、MRI、骨シンチグラム、腫瘍シンチグラム、PET-CTなど行い典型的な腫瘍はほぼ診断が可能です。

(イ) 生検術 診断のために腫瘍組織を採取する検査を生検術と呼びます。画像検査で診断がつかない例や悪性が疑われる例に行います。採取した組織をもとに病理診断医が顕微鏡での組織診断を行います。腫瘍によっては遺伝子を解析して診断を行ないます。

① 針生検:局所麻酔で行います。エコー、レントゲン、CTなどで腫瘍の部位を確認しながら組織採取用の針で少量の組織を採取します。

② 切開生検:主に全身麻酔で行います。腫瘍を切開して、腫瘍の一部を採取します。

③ 切除生検:腫瘍を全て切除して病理診断を行い、診断と治療を兼ねた生検方法です。適切な画像診断が行われた2cm以下の皮下腫瘍で神経、血管が近くにない場合に適応があります。

良性骨腫瘍の治療

手術で切除します

① 手術の適応

  1. 骨巨細胞腫など進行性の腫瘍
  2. 骨折を来した、もしくは骨折が生じる危険性がある
  3. 痛み、変形などの自覚症状がある

② 手術方法 

  1. 病巣掻爬術:多くの良性骨腫瘍は骨の内部に発生します。骨の表面に穴を開けて、腫瘍を掻き出し、できた空洞に人工骨を充填します。
  2. 腫瘍切除術:骨軟骨(外骨腫)など骨の外に膨隆する腫瘍では、正常の骨との間で腫瘍を切除します。 術後は骨の強度に応じて歩行練習などのリハビリテーションを行います。 

③ 手術をしない場合:小さく、症状が無いなど、手術適応がない場合は、外来で定期的に経過を観察します。

悪性骨腫瘍の治療

(イ) 悪性骨腫瘍

① 骨肉腫、ユーイング肉腫など抗がん剤が有効な腫瘍 術前・術後の化学療法と手術を組み合わせて行ないます。

  1. 術前化学療法:抗がん剤で腫瘍を小さくして手術を行いやすくするためと、全身に転移している(可能性のある)腫瘍細胞を撲滅する目的で行います。
  2. 手術:腫瘍が発生した骨と周囲の筋肉を一塊として切除します(広範切除術)。骨の欠損部は人工関節や自家処理骨(切除した骨を液体窒素で凍結、殺腫瘍処理して元に戻す)で再建します(骨格再建術)。腫瘍が重要な血管を巻き込んでいたり、抗がん剤が効かない場合は切断術が必要になることがあります。手術ができない場合は重粒子線治療などを行います。
  3. 術後化学療法:手術後にさらに抗がん剤を投与し再発、転移を予防します

② 軟骨肉腫、脊索腫など抗がん剤が効きにくい腫瘍 手術(広範切除、骨格再建術)を行います。手術ができない場合は重粒子線治療などを行います。

悪性軟部腫瘍(軟部肉腫、サルコーマ)の治療

手術が第一選択の治療法となります。
① 手術:腫瘍と周囲の組織(筋肉など)を一塊として切除します(広範切除術)。切除後に皮膚、筋肉に欠損が生じた場合は形成外科の応援を得て筋皮弁形成術、植皮術などの再建術を行います。
② 化学療法:小円形細胞肉腫は原則として抗がん剤を投与します。それら以外で効果の期待できる腫瘍(未分化多形肉腫、高分化型以外の脂肪肉腫、滑膜肉腫など)は腫瘍の病期(ステージ)、年齢、全身状態などを考慮して行ないます。遠隔転移が生じた場合は、腫瘍内科で病気の進行を遅らせる目的で化学療法を行います。
③ 放射線治療:軟部肉腫は通常放射線が効きにくいので、手術に併用します。神経、血管の近くの腫瘍など切除が難しい場合は、手術前に放射線治療を行って腫瘍を縮小させてから切除します(術前放射線治療)。手術で充分に取りきれなかった、再発の危険性がある場合などは、手術後に照射します(術後放射線治療)。

紹介元の先生へ

整形外科では良性、悪性、原発性、転移性に関わらず全ての骨・軟部腫瘍に対応致しております。骨・軟部腫瘍は良悪性の鑑別、外傷、炎症性疾患などとの鑑別を含め臨床、画像、病理診断に難渋するケースが少なくありません。診断、治療方針に迷われる症例があればご遠慮なくご紹介、ご相談いただければ幸いです。

脊椎の手術について: 脊椎外科医不在のため、脊椎手術を行なっておりません。特に、脊椎転移による下肢麻痺など緊急手術を要する場合は、脊椎専門病院にご相談いただきますようお願いします。

小児患者について: がんセンターの診療対象年齢は15歳以上ですが、整形外科では外来診療は出来る限り年齢に制限なく対応するよう心がけております。入院治療は一人で入院生活を送れる年齢であること(おおよそ小学校校高学年以上)が前提となります。外来、入院治療ともに当院で対応が難しい場合は、小児専門施設に紹介させていただくことがあります。