兵庫県立がんセンターTIMES

がんセンタータイムズ

第9回 リンパ浮腫って怖いもの?

病院や病気のことで気になることを病院で働いている職員さんにインタビューする ともタンの院内散歩です。

ともタン:

こんにちは。兵庫県立がんセンターのマスコットキャラクター ともタンです。

第9回目は、「リンパ浮腫って怖いもの?」です。

リンパ浮腫について兵庫県立がんセンターのリンパ浮腫セラピストさんに聞きました。

よろしくお願いします。

リンパ浮腫セラピスト:

よろしくお願いします。

ともタン:

早速ですが、リンパ浮腫とはどのようなものなのでしょうか?

リンパ浮腫セラピスト:

まずは、リンパ浮腫について3点お伝えします。

リンパ浮腫とは、

  1. がんの治療でリンパ節の郭清や放射線治療により、リンパ節やリンパ管が損傷されたために生じるむくみである。(リンパ浮腫とはがん治療を受けた全ての方が発症するというわけではない)
  2. 一度発症すると治るのは難しい。(一度発症すると完全にはもとに戻らない)
  3. 100%予防できる方法は現在ない。ということです。


ここまで聞くと、怖いものだと思ってしまいますよね。皆さんが正しい知識を持って日常生活を送り、浮腫を早期発見できるようにお話しします。ただ恐怖に感じるのではなく、正しく知って落ち着いて過ごせるようにしたいと思っています。

ともタン:

そもそもリンパとはどのような働きをしているのでしょうか?

リンパ浮腫セラピスト:

では、リンパについて簡単にご説明します。リンパシステムの役割には大きく分けて2つあります。

  1. 血液から漏れ出た水分・老廃物・病原体などの成分を回収し心臓に向かって流していく排水管の役割があります。
  2. リンパは体を守る免疫機能のひとつです。リンパ管の途中にそら豆のようなものがついています。これをリンパ節と呼びます。リンパ節は全身に600~700個程あります。リンパ節では、免疫細胞であるリンパ球が集合して異物の情報を交換し、免疫抗体を作りリンパ球を増産し、細菌や異物を攻撃して破壊する、体を守る免疫の仕事もしています。リンパ管は帰りの道しかありません。リンパ管のスタートは皮下すぐの5mm程度下の浅いところから始まります。身体中の皮下から始まった毛細リンパ管で組織間液を回収します。そして、体を縦横6つに分けた区画の中でメインになるリンパ節に向かって身体中の表面を流れていきます。その後、体の深部へ潜り込み、深いところを通って心臓に流れていく仕組みとなります。


最後に、血液とリンパ液の関係についてですが、体の中の液体の移動として血管とリンパ管の流れがあります。心臓から100%の栄養・酸素・水分など体に必要な成分を含んだ動脈の血液が身体中に流れていき、その成分を細胞が使います。その後、90%の二酸化炭素・水分・老廃物などが静脈血液に乗って心臓に戻っていきます。残り10%の水分・タンパク質・脂肪・老廃物など大きな成分を心臓まで運んでいくのがリンパ管です。この流れが血液とリンパ液の流れとなります。そして細胞と細胞の間にある液体を組織間液(そしきかんえき)と呼んでいます。

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図:リンパの仕組み

ともタン:

リンパは身体にとってとても大切な器官なんですね。

リンパ浮腫ってむくんでいる状態のことを指すのでしょうか?むくみも漢字では浮腫って書きますよね。

リンパ浮腫セラピスト:

そうですね。むくみのことを医学用語で浮腫(ふしゅ)と呼びます。

では、むくみとリンパ浮腫の違いについてお話しします。正常に動脈から運ばれた液体成分が静脈から90%、リンパ管で10%回収されていると、細胞の間に余分な水分が残らないのでむくみは起こりません。体がむくんでいるという状態では、組織で不要となった水分がうまく回収されず、組織間液が溜まっている状態です。なんらかの理由で回収しなければいけない水分が十分回収されていないという状態です。リンパ浮腫とは、治療によってリンパ管が流れにくくなっているため、本来はリンパ管が流さなければならない高タンパクな液体が溜まっている状態です。

一般に体がむくむ原因となる疾患は、腎臓や心臓に負荷がかかっていたり、長い時間座ったままなど、浮腫が起こる原因はたくさんあります。リンパ浮腫はこのうちの一つです。むくみが出た場合、原因はたくさんあるので、まずは主治医に相談して、原因を知ることが大切です。

また、リンパ浮腫の状態では、組織間液にタンパク質や脂肪などの物質が多く含まれるようになります。症状が進むとタンパク質が増えたり、繊維組織となり硬くなったり、脂肪組織なども増えてきます。そうするとむくみが定着してくるので、寝て起きてもむくみが改善しなくなります。むくんでいる腕や足はリンパ液の循環が悪いために、免疫力が低下します。リンパ液は栄養が豊富なため、細菌が侵入すると増殖しやすく、感染や炎症を起こしやすくなります。感染や炎症を起こすことで、浮腫はさらに悪化していきます。まずは、むくみが出てきた時に早く見つけること、主治医に相談することが大切です。

ともタン:

リンパ浮腫の治療やケアにはどんなことがあるのでしょうか?

リンパ浮腫セラピスト:

現在のリンパ浮腫ケアの基本は複合的理学療法です。基本的に運動・圧迫・スキンケア・ドレナージ・日常生活上の注意点などですが、この5つを発症前から全て行うのは大変で、さらに予防効果がないものもあります。予防効果のあるものを無理なく普段のライフスタイルに組み込むことが大切です。

ともタン:

今日からできるケアについていくつか教えてください。

リンパ浮腫セラピスト:

今日からできるライフスタイルとして、スキンケア・早期発見・運動・体重管理についてお伝えします。

  1. スキンケア

    まずは最も大切なケアであるスキンケアです。スキンケアは、皮膚のバリア機能を高めて感染を防ぐ役割をしています。皮膚の表皮はとても薄いものの、強力なバリア機能を持っており、細菌などの異物の侵入を防いでいます。治療によってリンパの流れが滞りがちな腕や足の皮膚ではバリア機能や免疫機能が低下しがちです。もしも細菌が侵入して感染症が起こると重症化しやすく、感染によってリンパ浮腫発症につながる事があります。皮膚の清潔を保ち、傷や異物を避けるとともに、皮膚のバリア機能を高めるケアを心がけることは最もシンプルで効果的なリンパ浮腫の予防策です。

    スキンケアにはまず、清潔・保湿を習慣にしましょう。清潔は、『皮膚を清潔に保つ』・『体を洗うときは優しく』・『擦らず泡で洗う』ことを心がけましょう。手のひらや柔らかいタオルで優しく洗いましょう。ナイロンタオル等でゴシゴシ洗うと皮膚のバリア機能は破綻してしまいます。手足の指の間なども忘れずに洗いましょう。弱酸性などの低刺激の洗浄剤を使用しましょう。保湿は、乾燥している皮膚は角質層に隙間ができてバリア機能が低下します。お肌に合っているものを惜しみなくたっぷり使用しましょう。化粧水を塗った後、保湿クリームを塗るとより効果的です。皮膚の乾燥の程度に合わせてこまめに塗ること、毎日続けることが大切です。

  2. 早期発見

    次に大切なことが早期発見です。リンパ浮腫を重症化させない決め手は、『早期発見』と『早期治療』です。毎日のスキンケアが習慣になれば、保湿しながら、塗りながらお肌をチェックできます。損傷したリンパ節の周囲から発症しやすくなっています。左右の太さに差がないか、静脈の見え方や皮膚のシワの出方などを確認しましょう。靴下や下着の跡に左右差がないかも確認すると良いでしょう。また、だるさや重たいなどの自覚症状が出る場合もあります。

    リンパ浮腫になりやすい箇所の例をご紹介します。『左腋窩リンパ節(ひだりえきかりんぱせつ)』を治療した場合は、左上半身や腕に症状が出ます。また、『骨盤内リンパ節(こつばんないりんぱせつ)』を治療した場合は、下腹部や陰部・臀部・足に症状が出ます。足の場合は片足・両足の可能性があります。

  3. 運動

    次に大切なことが運動です。がんの治療が始まったり歳を取ると、それだけで運動習慣が少なくなります。体を動かすことで、リンパ液の流れが良くなります。座りっぱなしは血液やリンパの循環を滞らせてリンパ浮腫のリスクも高めてしまうため、座りっぱなしの時間を減らしましょう。体を動かすと皮膚が動き、筋肉が収縮します。その刺激が皮下組織にあるリンパ管に伝わるのでリンパの流れが促されます。ただし、強度の高い運動は筋肉の緊張を高めて逆効果になります。特別な運動をしなくても、まずは日常的な歩行や家事でも効果があります。

  4. 体重管理

    最後に体重管理です。肥満はリンパ浮腫発症のリスクになります。皮下脂肪がリンパ管を圧迫してリンパの流れを悪化させるほか、リンパ管に余分な脂肪が流れ込んでリンパの流れを妨げる可能性も指摘されています。リンパ浮腫発症後も、肥満を解消することで症状が軽くなる場合があります。バランスの良い食事と運動を行い、こまめに体重測定を行いましょう。

ともタン:

浮腫について、相談できるようなサポートはありますか?

リンパ浮腫セラピスト:

当院にはリンパ浮腫サポートがあります。手術を行なった後に入院中・退院後の外来でリンパ浮腫の予防方法についてご説明いたします。浮腫を早期発見したら、リンパ浮腫教室にてリンパ浮腫について詳しく説明を行い、セルフドレナージ(皮膚を優しく動かし、滞ったリンパ液を流していくセルフケアのマッサージ方法)を練習します。それでも改善が見られず浮腫が進んできたら、リンパ浮腫外来を受けていただけます。リンパ浮腫外来は完全予約制ですので、リンパ浮腫かな?と思ったらまず主治医にご相談ください。担当セラピストが個別に必要なケア方法について一緒に考えます。

ともタン:

リンパ浮腫について分かりやすく教えてくださり、ありがとうございました。

自宅でできることも多いので、普段の生活の中に取り入れてケア出来ると良いですね。

では、また次回のともタンの院内散歩を楽しみにお待ちください!

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