第6回 がんが骨に転移するとどうなるの?
病院や病気のことで気になることを病院で働いている職員さんにインタビューする ともタンの院内散歩です。
ともタン:
こんにちは。兵庫県立がんセンターのマスコットキャラクター ともタンです。
第6回目は、「がんが骨に転移するとどうなるの?」です。
がんが骨に転移したらどうなるのかについて兵庫県立がんセンターの整形外科医師さんに聞きました。
よろしくお願いします。
整形外科医師:
よろしくお願いします。
ともタン:
がんが骨に転移してしまった時のことについて教えてください。
整形外科医師:
がんが骨に転移することを転移性骨腫瘍(てんいせいこつしゅよう)や骨転移(こつてんい)と言います。ここでは分かりやすく骨転移と言います。
では、骨転移とはなんなのかについてお伝えします。
ともタン:
お願いします。
整形外科医師:
皆さんは、腫瘍が肺に転移した『肺転移』、肝臓に転移した『肝転移』といった言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。同様に腫瘍は骨にも転移します。骨の中でがん細胞が増殖すると骨の破壊が進み、痛みが生じます。そして骨が弱くなると病的骨折(びょうてきこっせつ)をきたします。また、腫瘍が神経を圧迫すると麻痺が生じます。そして血中にカルシウムが流れ、高カルシウム血症になることがあります。
ともタン:
腫瘍はどの部分の骨にも転移するのでしょうか?
整形外科医師:
骨転移は脊椎(せきつい)・肋骨(ろっこつ)・骨盤(こつばん)・大腿骨(だいたいこつ)・上腕骨(じょうわんこつ)といった体の中心に多く、肘や膝から先は少ないです。骨に転移しやすいがんとして、乳がん・前立腺がん・肺がん・甲状腺がんが挙げられます。
ともタン:
骨転移するとどのような症状が出るのでしょうか?
整形外科医師:
骨転移の症状の一つ目に痛みがあります。安静にしていても痛い安静時痛(あんせいじつう)や痛くて眠れない夜間の痛みがあります。その痛みは日ごと、あるいは週単位で進行性に悪化します。普通の痛み止めが効かず、麻薬が必要になることもあります。
ともタン:
安静にしていても痛いのは辛いですね。
骨転移した部分は骨の破壊が進むとおっしゃっていましたが、脆くなるということでしょうか?
整形外科医師:
そうです。骨が脆くなると骨折しやすくなります。骨転移部分が骨折すると痛みがあり、手足が上がらないという症状も出てきます。
整形外科医師:
この画像は脊椎を横から眺めたMRIの写真です。脊椎の後ろに大事な神経である脊髄が走っています。脊椎に腫瘍が転移すると腫瘍が脊髄を圧迫し、麻痺が出現します。影響が出る部位としては、手足・膀胱・直腸、時には呼吸器があります。
ともタン:
麻痺にはどういった症状があるんですか?
整形外科医師:
前触れは胸腰回りの締め付け感や痛みがあります。力が入りにくくなり、徐々に歩くことができなくなり、場合により尿が出なくなります。完全に動かなくなってしまった場合、48時間経つと治らなくなると考えられています。待ったなしです。
ともタン:
待ったなしですか。それは怖いですね。そうならないために骨転移した際の治療について教えてください。
整形外科医師:
治療は、症状、骨折、麻痺があるかどうかで選択肢が変わってきます。抗がん剤などの原発腫瘍への薬物療法、骨転移の進行を抑制する骨修飾薬(こつしゅうしょくやく)、鎮痛薬、放射線治療、手術、場合によってリハビリや杖、コルセットなどの装具を用います。
ともタン:
たくさんの治療方法があるんですね。
整形外科医師:
そうですね。薬の治療が有効であった例をいくつかご紹介します。
- 下の画像は、肺がんが骨盤に転移した患者さんの写真です。
分子標的薬(病気の原因となっている特定のタンパク質や遺伝子(分子)をピンポイントで狙い撃ちする薬)の投与前が左、投与2ヶ月後が右です。赤い矢印の部分が投与2ヶ月後では、骨硬化(こつこうか)していることが分かります。これは、イレッサ®️の治療効果を反映していると考えられます。
図:肺がんが骨盤に転移した患者さんの写真
整形外科医師:
- 次の画像は、乳がんが上腕骨に転移して病的骨折をきたした患者さんの写真です。
- 骨修飾薬(骨を破壊する細胞(破骨細胞)の働きを抑えたり、骨の代謝バランスを整えたりすることで、骨を強くし、骨折や骨の痛みを防ぐ薬)であるゾメタ®️とホルモン治療薬であるフェマーラ®️を投与しています。左から順に「初診時」「3週後」「6週後」「3ヶ月後」です。徐々に骨硬化が得られていることが分かります。
図:乳がんが上腕骨に転移して病的骨折をきたした患者さんの写真
整形外科医師:
放射線治療についても簡単に紹介します。 放射線治療は、がん細胞に作用して腫瘍を縮小、消滅させることが期待できます。その効果としては、『痛みを取る』『麻痺の予防・治療』『病的骨折の予防』です。 1日1回照射で、1日〜10日間続けます。1回の治療時間は約10分〜20分で、原則1箇所に1回だけです。 合併症として、疲労感・皮膚炎・腸炎・骨髄抑制などが考えられます。
ともタン:
ありがとうございます。色んな治療方法があると安心ですね。
手術もあるということですが、手術についても教えてください。
整形外科医師:
それでは手術についてお話しします。
ここでは、四肢骨の中でも特に転移が多い大腿骨について説明します。
骨転移はしていないものの、骨が脆弱になって今にも折れそうなことを『切迫骨折(せっぱくこっせつ)』と言います。切迫骨折については予防的な手術を行います。術式にもよりますが、2〜3週間で歩いて退院することを期待できます。一方、骨折してしまった場合のことを『病的骨折(びょうてきこっせつ)』と言います。病的骨折に対しては骨折後の手術を行います。病的骨折を起こした場合は、リハビリに時間を要します。
また、切迫骨折の段階で手術した方が生命予後が良く、出血が少なく、独歩率が高く、入院期間が短く、自宅退院率が高いと言われています。
ともタン:
なるべく骨折する前に治療した方が良いということですか?
整形外科医師:
その通りです。
他にも脊椎転移の手術があり、その手術適応についてお伝えいたします。
麻痺や骨折の危険があるもののまだ症状が出ていない場合は、放射線治療やコルセットで対応することが多いです。一方、進行性の麻痺が生じている場合は麻痺発生から『48時間以内』で『体調良好』で『手術に耐えうる状況』であれば手術を検討します。体調不良や48時間以上経過している場合は放射線治療の適応となることが多いです。骨折や強い腰痛がある場合は、コルセットを装着したり安静にすることで対応したり、場合によっては手術を行うこともあります。
ともタン:
自分の力で歩いて動くことは元気につながると思うので、手術や治療した後は歩行訓練やリハビリをすることが大切ですね。
整形外科医師:
そうですね。
無理をすると痛みが出ることがありますので、主治医と相談しながら動くようにしましょう。
骨転移は、原発腫瘍を担当する診療科、整形外科、放射線科、看護師、リハビリ担当等、多職種が協力して治療しています。
ともタン:
骨転移について分かりやすく教えてくださり、ありがとうございました。
骨転移した際はたくさんの医療スタッフの方の協力のもと、治療していくんですね。
とても心強く感じました。
では、また次回のともタンの院内散歩を楽しみにお待ちください!
