第5回 がんって遺伝するの?
病院や病気のことで気になることを病院で働いている職員さんにインタビューする ともタンの院内散歩です。
ともタン:
こんにちは。兵庫県立がんセンターのマスコットキャラクター ともタンです。
第5回目は、「がんって遺伝するの?」です。
がんと遺伝ついて兵庫県立がんセンターの遺伝カウンセラーさんに聞きました。
よろしくお願いします。
遺伝カウンセラー:
よろしくお願いします。
ともタン:
早速ですが、「がん家系だとがんになる」とか「がん家系じゃないからがんにならない?」とか「自分のがんが子供に遺伝するの?」ということをよく聞きます。
遺伝カウンセラー:

色々気になりますよね。では、順番に基本的なお話をいたします。
まずは、「がん家系だとがんになる」と「がん家系じゃないからがんにならない?」ですね。このように感じる方がいらっしゃるのは、なんとなくがんは遺伝に関係するというイメージをお持ちなのかもしれません。ですが、遺伝的な体質や家族歴の有無に関わらず、がんは誰でもかかる可能性のある病気です。
ともタン:
そうなんですね。主にどんな種類のがんが多いのでしょうか?
遺伝カウンセラー:

女性の場合は乳がんが最も多く、大腸がん、肺がん、胃がん、子宮がんです。男性の場合は前立腺がんが最も多く、大腸がん、肺がん、胃がん、膵臓がんとなっています。罹患数が多いがんは、がん検診が受けられるものがあります。
※2023年がん罹患数データ
ともタン:
がんは何歳ぐらいでかかる人が多いのでしょうか?
遺伝カウンセラー:
40歳以降にかかる方が多いですが、若くてもかかる可能性はあります。女性乳がんや婦人科がんは40歳未満の若い年齢でかかる方も多いです。子宮頸がんは20歳から、その他は40歳から検診の案内があると思いますので、定期的に受け続けることが大切です。
ともタン:
検診の案内が届いたらきちんとチェックし、受診することが大切ですね。
遺伝カウンセラー:
そうですね。
では次に「自分のがんが子供に遺伝するの?」についてお話します。
まず、「がん」そのものが遺伝することはありません。がんは、遺伝子が変化して細胞の性質が変わって起こる病気です。どちらも遺伝子が関係しているので、「がんは遺伝するのではないか」と心配になる方が多いのではないでしょうか。がん細胞の中で起こっている遺伝子の変化は、生まれた後で特定の細胞の遺伝子(DNA)が変化して起こったものですので、子供に伝わることはありません。ですので、「がん」そのものが遺伝することはありません。
ともタン:
がんそのものは遺伝しないのですね。
遺伝カウンセラー:

そうです。ただし、がんにかかった方の一部に、生まれつきがんにかかりやすい体質(遺伝性腫瘍症候群:いでんせいしゅようしょうこうぐん)の方がいて、その体質が遺伝する可能性はあります。遺伝とは、生物の特徴が世代を超えて引き継がれることで、遺伝子(DNA)が遺伝情報を運ぶ役割を担っています。世代を超えて引き継がれる遺伝子の特徴は、生まれる前の受精卵の段階で持っており、身体中の細胞が同じものを持っています。ですので、そこからできる精子や卵子にも同じ特徴があり、それが子供に伝えられる可能性があります。生まれつき特定のがんにかかりやすい体質を持っている場合には、その遺伝子の特徴を子供に引き継ぐ可能性があります。
ともタン:
「遺伝性腫瘍症候群」についてもう少し詳しく教えてください。
遺伝カウンセラー:

遺伝的な体質が関係するがんを「遺伝性腫瘍症候群」と言います。その代表的なものを説明します。
遺伝カウンセラー:

まず、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)というものがあります。2013年に女優のアンジェリーナ・ジョリーさんががんになる前に乳房、2015年には卵巣を手術したことが大きなニュースになりました。彼女は遺伝子検査でHBOCと判明し、発病前に予防として手術を行いました。HBOCは、女性は乳がんと卵巣がんに、男性は前立腺がんに、そして膵臓がんは男女ともにかかるリスクが高くなると言われています。男性が乳がんになる可能性もあります。この体質を持った方は、がんの一般検診とは違った検診を受けることで、がんの早期発見・早期治療やリスク低減を目指すことができます。『対策がある』ということが重要なポイントです。
次に、Lynch(リンチ)症候群についてお話します。Lynchとは、この病気を研究していたアメリカの遺伝学者の名前が由来です。大腸がんや胃がん、女性の子宮体がんや卵巣がん、腎臓などの泌尿器のがん、皮膚の特殊ながんなどが関連がんで、このような病気の方が家族に複数いる場合や、一人でいくつかの関連がんにかかっている場合Lynch症候群を考えることがあります。
他にも多くの遺伝性症候群が見つかっており、それぞれ別の遺伝子が原因で起こります。
ともタン:
がんにかかりやすい体質かどうかを調べる方法はあるのでしょうか。
遺伝カウンセラー:

遺伝子検査で調べることができます。体質に合った健康管理を相談することで、本人や血縁者の健康管理に役立てることができます。最近は保険診療で受けられる遺伝子検査が登場したことから、術式選択の参考に遺伝子検査を提案される乳がん患者さんが多くいらっしゃいます。またある種のがんでは治療薬の選択に遺伝子検査が必要になり、主治医から提案されている方もいらっしゃいます。
遺伝性腫瘍の遺伝子検査について自分で調べて『対策があるなら』『子供の役に立つなら』と自ら希望する方、家族から勧められた方、安心したいから希望する方など色々な方が遺伝子検査の相談にいらっしゃいます。中には遺伝子検査を受けて遺伝性のがんと分かったら子供に申し訳ないと思い迷っている方もいらっしゃいます。
ともタン:
遺伝子検査を受けるメリットについて教えてください。
遺伝カウンセラー:

では、遺伝的な体質を検査によって明らかにするメリットについてご説明します。がんの発症には『遺伝要因』と『環境要因』の両方が関係しています。
遺伝要因の大きさは人によって違います。遺伝要因が大きい方でも小さい方でも環境要因との組み合わせによって病気になる場合もあれば、ならない場合もあります。体質に合わせた特別な検診や対策を考えることができます。遺伝子検査には遺伝的な体質を知ることで本人の治療選択、本人や血縁者の将来リスクに対応するという医学的なメリットが大きいです。
ともタン:
遺伝的な体質を知ったら不安に思う方もいらっしゃるのではないですか?
遺伝カウンセラー:
そうですね。血縁者や家族に知らせることへの気持ちの負担が大きいと思う方も多くいらっしゃいます。メリットがあると考える気持ちと不安な気持ちはどなたにも両方あるものですが、そのバランスは一人一人違います。私たち遺伝カウンセラーは、よくお話ししながら不安の方に天秤が大きく傾いている方には今は検査を受けないという選択肢を提案することもあります。検査の意義や目的をはっきりさせた上で、検査の限界についても理解して一人一人に合った選択ができるようにサポートしています。
ともタン:
不安なことがあれば相談したいですね。
兵庫県立がんセンターで遺伝カウンセラーに相談はできるのでしょうか。
遺伝カウンセラー:
当院では遺伝外来で遺伝カウンセリングを実施しており、さまざまな遺伝子検査を検討することもできます。遺伝カウンセリングを受けるには、当院の主治医又はかかりつけの先生に『遺伝の話を聞きたい。』とお伝えください。
まずは遺伝カウンセラーが面談し、相談内容や家系情報を確認した上でご希望に応じて遺伝外来の予約をお取りします。遺伝カウンセラーとの面談には費用はかかりませんのでお気軽にご相談ください。
ともタン:
がんと遺伝について分かりやすく教えてくださり、ありがとうございました。
遺伝について不安が少しでもある場合は相談してみるのが良いかもしれません。
では、また次回のともタンの院内散歩を楽しみにお待ちください!
