兵庫県立がんセンターTIMES

がんセンタータイムズ

第3回 がん治療中の脱水予防ってどうしたらいいの?

病院や病気のことで気になることを病院で働いている職員さんにインタビューする ともたんの院内散歩です。

ともたん:

こんにちは。兵庫県立がんセンターのマスコットキャラクター ともたんです。

第3回目は、「がん治療中の脱水予防ってどうしたらいいの?」です。

がん治療中の脱水予防について兵庫県立がんセンターの管理栄養士さんに聞きました。

よろしくお願いします。

管理栄養士:

よろしくお願いします。

だんだん暑くなってきましたね。この時期になると食欲が落ちたりしていませんか?

ともたん:

しています。

暑くなってくるとどうしても食欲が落ちますし、『身体がしんどい』気がします。

管理栄養士:

そうですよね。

暑くなってきて食欲が落ちると必要な水分量の摂取も難しくなります。

また、がん治療中は副作用による食欲不振などもあり、脱水状態になりやすいです。脱水予防についてお話ししますね。

ともたん:

ぜひお願いします。

管理栄養士:

ではまず、人間の体内にはどのくらい水分が含まれているか知っていますか?

ともたん:

なんとなく聞いたことがあります。

血液なんかも水分として含まれている・・・だったような気がします。

管理栄養士:

その通りです。

成人男性の場合、体重の約60%が水分です。つまり、体重60kgなら、およそ36Lもの水分を体内に蓄えていることになります。

ともたん:

年齢や性別によって体内の水分量は変わるのでしょうか?

管理栄養士:

そうですね。

幼児は約70%で、高齢者になると50%程度まで減少します。また、女性は男性に比べ脂肪の量が多いため、成人女性で約55%と言われています。人は身体の水分を一定に維持することで様々な器官が正常に働きます。

ともたん:

水分量を一定に維持することが大切なんですね。

管理栄養士:

そうですね。

水分は尿や便に加え、不感蒸泄(ふかんじょうせつ:日常生活において自然に失われる水分、すなわち呼吸の際に呼気に含まれる水分と、皮膚や気道の粘膜から蒸発する水分)でも消費されており、1日に約2.5L失われています。水分の供給経路は、代謝水と言われる、食事が消化されエネルギーに変換される過程で生成される水分が0.3L程度あり、通常量の食事をした場合に食事に含まれる水分が約1Lです。残りの1.0~1.5Lは飲水で補う必要があります。

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管理栄養士:

しかしこの消費量は、比較的安静に過ごした場合の消費量です。夏バテにより食欲が落ちると食事からの水分も摂りにくくなりますし、暑い環境でよく汗をかいた場合や、嘔吐、下痢をした場合はより多くの水分が失われていることになります。汗や消化液にはナトリウムやカリウムなどの電解質も含まれているため、水分だけでなく電解質も失われています。その分経口摂取から補う必要がありますが、嘔吐や下痢があるときは思うように食事が摂れないことも多いです。

ともたん:

そのために水分を摂取する必要があるんですね。

脱水について詳しく教えてください。

管理栄養士:

脱水とは体液が失われ、必要な水分と電解質が不足している状態です。生命維持に欠かせない水分は体重に対し1%の減少で喉の渇きを感じ、2%程の減少であってもめまいや吐き気、食欲減退などの症状が現れるため、健康を維持するためには、水分量を一定に保つ必要があります。

ともたん:

水分量を一定に保つことは難しいですね。

がん治療中の脱水について教えてください。

管理栄養士:

脱水の原因となる嘔吐や下痢は抗がん剤治療の副作用でよく見られます。放射線治療においても嘔吐や下痢が見られることがあります。消化管への照射はもちろん、脳への照射でも吐き気などが見られることがあります。主に治療開始後早期にみられ、治療終了後1ヶ月程度で軽快することが多いです。吐き気や嘔吐、下痢の状態となると、食事の摂取も難しくなると思います。先ほど、水分の供給経路の中に食事に含まれる水分が1L程度あるため、飲水は11.5Lを補う必要があるとご説明しました。しかし、この食事からの1Lは通常の1人前の食事を13食摂取できた場合の量ですので、吐き気などで食欲がなくなっている時は、食事量が通常の半分程度、それ以下になることもあります。半分程度となった場合、食事からの水分は単純に計算して500mL程度となり、飲水でのより多くの水分が必要となります。

ともたん:

食べ物や飲み物で水分を摂ることが大切ですが、副作用で食欲が無くなった時にはどうしたら良いのでしょうか?

管理栄養士:

汗をかいたときや嘔吐、下痢をしたときの水分補給として代表的なものが経口補水液です。経口補水液は、市販のスポーツドリンクと比較し電解質濃度が高く、糖濃度が低い組成で体内に吸収されるスピードが速く、飲む点滴とも言われています。電解質も補給できるため電解質が不足する低張性脱水の予防にもなります。嚥下機能が低下した方はさらさらの水分はむせやすく誤嚥のリスクが高いです。このため、ゼリータイプの水分補給商品がおすすめです。薬局やインターネットにて販売されています。

しかし、こういった経口補水液は味が飲みにくかったり家にすぐ用意が無かったりと摂取するのが難しい場合もあります。

ともたん:

確かに、経口補水液は備蓄している家庭は少ないかもしれません。

管理栄養士:

そこで、家にある調味料を使った経口補水液の作り方です。水500mLに対し、カリウムが含まれるレモン汁を大さじ1/2、砂糖大さじ2、ナトリウムが含まれる塩を小さじ1/3を加え、よく混ぜて溶かします。

飲みたいときにすぐ飲めるよう準備しておくことをおすすめします。

ともたん:

経口補水液は自宅でも作れるんですね。料理によく使う調味料でできるのも良いですね。

管理栄養士:

はい。

また、経口補水液のように身体への吸収は速くありませんが、経口補水液と同等のナトリウムやカリウムを含む食品の例です。

経口補水液500mLに含まれるナトリウムは、味噌汁1杯、梅干し1個と同等、カリウムは100%オレンジジュース200mL、バナナ1本と同等です。味噌汁に野菜や芋などの具材があればカリウムも含まれます。カリウムは水に溶ける物質のため、具材を食べなくても汁を飲めばある程度のカリウムも補給できます。

その他嘔吐や下痢がある際に食べやすい食事の主な水分量、ナトリウム、カリウム量をこの後、ご紹介します。なお、腎機能の低下などの基礎疾患がある方は、ナトリウムやカリウムの摂取量に制限がある場合がありますので、詳しくは医師、栄養士にご相談ください。

ともたん:

嘔吐や下痢がある際に食べやすい食事について教えてください。

管理栄養士:

では、簡単に食事についてお話しします。

まず、和食料理です。嘔吐や下痢がある際はおかゆなどの消化の良いものが食べやすいです。味噌汁と合わせて摂取すると、水分は400ml程度摂取できます。また、さっぱりした寿司飯も食べやすいです。いなり寿司3貫に茶碗蒸し1個(4個入りの1つ)を摂取すると、220mlの水分が摂取できます。

次に麺・パンです。麺類のなかでもうどんや素麺は軟らかく消化も良いので食べやすいと話される患者さんが多いです。例として、ぶっかけうどんでは、つゆも込みで300ml程度の水分を摂取できます。温泉卵も一緒に食べることでたんぱく質も摂取できます。

パンではあっさりとしたサンドイッチが食べやすいです。牛乳も合わせて摂取すると、230ml程度の水分が摂取できます。牛乳にはカリウムも豊富に含まれます。

最後にデザートです。つるんとした口当たりのよい食品や果物が食べやすいです。プリンやヨーグルトにはいろいろ種類があるので一概には言えませんが、重量の約8085%が水分です。カップタイプでは80100g程度のものが多いため、水分量は6585ml程度になります。果物の例として、リンゴ1/8カット2個には約60ml、バナナ1本は約70mlの水分があります。

これまでご紹介した栄養成分値はあくまで参考値です。商品によって異なりますので、気になる際は栄養成分表示を確認してみてください。

ともたん:

がん治療中の脱水について分かりやすく教えてくださり、ありがとうございました。

これからどんどん暑くなるので、熱中症等にも気を付けないといけませんね。

また、不安に思うことが少しでもあれば医師や看護師に相談してみてくださいね。

では、また次回のともたんの院内散歩を楽しみにお待ちください!

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