院長あいさつ
当センターは、死亡原因の第1位を占めるがんに対する国の『がん対策基本法』に基づき2007年に施設名を兵庫県立成人病センターから『兵庫県立がんセンター』と変更し、『都道府県がん診療連携拠点病院』の指定をうけました。以来、県内外のがん診療の中核病院としてその重責を担っており、がん登録件数からも関西有数のがん専門病院です。
がんは身近な病気になりましたし、治療の進歩により以前のようにがん=死の病・不治の病ではありません。早期がんで治療なら90%以上は根治が期待できますし、進行がんでも今は集学的治療の時代で様々な治療選択肢もあります。当院でも、外科系に関しては低侵襲~高難度手術まで幅広く行う中で、開腹・開胸手術から鏡視下手術、そしてロボット手術と年々確実に進歩しています。また内科系を中心とする化学療法も抗癌剤・分子標的薬から免疫チェックポイント阻害剤まで多岐にわたり、臨床試験の増加も伴って外来化学療法をうける患者さんは著増しています。さらに放射線も画像診断の進歩とともに従来の定位放射線に加え強度変調放射線(IMRT)・粒子線・密封小線源治療などその多様性は急速に進み、ニーズが広がっています。加えてゲノム医療・遺伝子治療といった新しい分野においても、国から『がんゲノム医療拠点病院』に指定され、遺伝子パネル検査・エキスパートパネルにも積極的に取り組み、臓器横断的な個別化治療が進んでいます。
最近いろいろな場面で病院の統合や再編、機能分化、そして働き方改革などが叫ばれる一方で、新型コロナのパンデミックや戦争の影響でいい意味でも悪い意味でも世の中は大きく変わりました。医療においてもWEBやテレワーク、AIといった新しい価値観が産まれ、それに伴い私達も意識改革が求められます。そんな中で、がんセンターとしての主な役割は何かを考えると、やはりがん診療の質と安全性の確保、がんに関わる多職種連携チーム医療、臨床研究を含む先進医療の推進の3つはがん専門病院として担うべき役割だと思っています。
こうした中で治療の質と安全性も担保し、かつ患者さんの社会的支援を充実させるためには、単一診療科や部門をこえて多診療科・多職種が関わる『チーム医療』が必須となります。特にがんと診断された当初から不安や悩みを相談できる緩和ケアセンターや地域の医療機関との連携を確実かつ円滑に遂行する地域医療連携室、また離職防止というコンセプトから就労支援やアピアランス、家族のサポートも考えるがん相談支援センター等の部門をさらに充実させ、皆さんにより身近に利用していただけるようになりました。
現在がんセンターは新築建替整備の真只中で、予算や工期がコロナや戦争の影響を大きく受けてしまいましたが、何とか令和9年度中の開院を目標としています。新病院に向けて先にあげた3つの主な役割を念頭に置き、最新の診療機能とともに社会的支援や研究機能を兼ね備えた病院を視野に入れ、がん患者さんにとってより幅広く、利用しやすい病院をめざしております。
これからも個々の患者さんにとって最善・最良の治療が行えるよう職員一同努力していきたいと思いますので、今後ともご支援・ご協力の程よろしくお願い申し上げます。
兵庫県立がんセンター院長 富永 正寛