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診療部の紹介

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標準治療・治療成績について

標準治療と治療成績

はじめに

兵庫県下の消化器がんの診療連携拠点病院として中心的な役割を担っており、年間の消化器外科手術症例数は約700件前後です。内訳は食道がん40-45例、胃がん100-120例、結腸・直腸がん150-180例、肝がん80-90例(原発性50-55例,転移性30-35例)、胆道がん15-20例、膵がん・膵腫瘍40-50例などで、どの領域も豊富な手術症例を経験しています。最近では各疾患で鏡視下手術(ロボット手術を含む)が導入され、特に食道胃腸手術では主流となり、患者さんの手術侵襲の軽減に努めています。また肝胆膵領域では積極的な切除のみならず、新規抗がん剤や分子標的薬の併用、粒子線をはじめとした放射線治療など集学的治療の幅が広がっています。

はじめに

治療成績について

●食道

食道がん治療のガイドラインに準拠した院内治療方針を作成し、放射線科ならびに消化器内科の協力のもとに外科的切除、放射線治療、化学療法の3つを基軸として集学的治療を積極的に行なっています。食道がんの手術はもともと開腹・開胸で行っていたため手術侵襲が大きく、術後の合併症も多かったのですが、手術を受ける患者さんの負担を少しでも減らすため、最近は原則全ての胸部食道がんの方に対し腹臥位胸腔鏡下食道切除術を標準術式としています(2021年よりロボット支援下食道切除術も開始しました)。一方、頚部食道がんは当院の頭頚部外科とも協力しながら治療に取り組んでいます。鏡視下手術により、患者さんの身体への侵襲が大幅に軽減するとともに良好な結果を得ています。
また科学的根拠に基づいた治療を行うため日本臨床腫瘍グループ(JCOG)に参加し臨床試験を行っております。

●胃

胃がん治療ガイドラインに準拠した形で院内治療方針を作成し、それを基本方針として症例ごとに術式を検討しています。早期胃がんおよび一部の進行胃がんに対しては低侵襲の腹腔鏡下胃切除やロボット支援下胃切除を、日本内視鏡外科学会技術認定医(胃)を中心として積極的に行っています。一方、高度進行胃がんに対しては、消化器内科との連携の下で、必要に応じて他臓器合併切除などの拡大手術を行い、化学療法を併用した集学的治療を行っております。また、患者さん皆さんに安定・継続して良質な診療をご提供するために、入院から退院後を通じてクリニカルパス・地域連携パスを積極的に利用し、近隣のかかりつけ医や医療機関との連携も強化しています。さらに科学的根拠に基づいた治療を行うため日本臨床腫瘍グループ(JCOG)や各種研究会・学会に参加し,最先端の治療を追求すべく臨床試験も行っております。

●結腸・直腸

大腸がん治療ガイドラインに準じた手術療法を中心に行っています。当院では2006年より腹腔鏡手術を導入していますが、手技および器具の改良に伴ない適応を拡大し、現在では約90%に腹腔鏡手術を行っています。この腹腔鏡下手術は、大腸がんの中でも頻度が高く骨盤底にある直腸がんにも行われるようになりました。2021年11月よりロボット支援下手術も開始し、難易度の高い骨盤深部でも繊細な手術が可能となりました。ただし、腫瘍を安全・確実に切除することが目的なので、他臓器浸潤がある場合や巨大腫瘍や腹腔内癒着が高度である場合等は症例に応じて開腹手術も検討します。以前は肛門温存が困難であった肛門近傍の下部直腸がんでも、手術の進歩により症例によっては肛門温存手術も行うことが可能となりました。直腸がんの場合はがんの根治度と後遺症としての排便・排尿・性機能障害等とのバランスが大事であり、患者様の生活環境によっては肛門温存が最善でない場合もあります。大腸がんは適切に手術を行えば比較的治癒しやすいStage I・II大腸がんと、補助化学療法が有用と考えられるStage III大腸がん、他臓器に転移を伴うStage IV大腸がんに分けられます。また、大腸がんの再発は肝臓・肺臓・局所などに認めます。他臓器転移があっても再発でも治癒切除が可能であれば積極的に切除を行います。以前に比べ進行大腸がんの治療成績は格段に向上しましたが、最初は切除不能でも大腸外科のみならず消化器内科・腫瘍内科・放射線診断/治療科・呼吸器外科・肝臓外科等と密接に連携をとって集学的治療を行い切除可能となった段階で外科切除を行います。

●肝臓

原発性肝がんの中で多くを占める肝細胞がんはその60~70%に背景疾患としてB型やC型肝炎が合併していますが、最近は脂肪肝をはじめとする非B非Cの患者さんも増えています。多くは慢性肝炎や肝硬変が併存するため、治療に関しては患者さんの肝予備能と腫瘍側の因子(大きさ、個数、部位、脈管との関係)を常に考慮しながらバランスのとれた治療法を選択する必要があります。肝予備能と腫瘍の病態から切除可能と判断し、長期生存が期待できる場合は根治性が最も高い肝切除を第一の治療法と考えています。また切除が選択されなかった時でも腫瘍の状況に応じて経皮的や開腹下のラジオ波焼灼術や肝動脈化学塞栓療法(TACE-放射線科施行)を行っています。その他、粒子線をはじめとする放射線治療、分子標的薬などの治療についても御相談をさせていただきます。さらに現在では腹腔鏡下肝切除を積極的に取り入れ、初発の肝細胞がんに加え再発した肝細胞がんに対しても可能な限り腹腔鏡下で切除するようにしており、全体の肝切除のうち約5割を腹腔鏡下で行っています。このように肝細胞がん治療は従来法に先進的治療が加わり、治療の幅が大きく広がりました。肝細胞がんの治療については消化器外科、消化器内科、放射線診断科や病理部との院内カンファレンスを通して個々の患者さんにとって最善の治療法を検討しています。ちなみに、肝細胞がん治療後の5年再発率は約70%と非常に高率ですが、肝切除を含めた積極的な治療を繰り返すことで、5年生存率は約50%と比較的良好な結果となっています。一方、胆管細胞がん、大腸がんや胃がんの転移性肝がんなどその他の悪性腫瘍に関しても積極的に切除を行っています。特に最近は切除不能な大腸がんの肝転移に対しても、消化器内科の協力のもと化学療法との組み合わせや二期的肝切除などを行うことで切除適応を拡大しています。

●膵臓・胆道

膵疾患に関しては、膵がん・膵腫瘍(膵内分泌腫瘍・嚢胞性膵腫瘍など)・腫瘤形成性膵炎などの外科的治療を行っており、2008年以降2020年末までで480例ほどの膵疾患手術症例を経験しています。術前には消化器内科や放射線診断科と協力して質の高い診断を行なった上で、手術適応や切除範囲を決定しています。手術に際しては工夫を凝らした膵切除法や膵吻合法を用いて手術成績の改善に努め、また周術期管理も統一を図ることで結果として従来に比べ合併症の減少や在院日数の短縮につながっています。膵がんに対しては、膵頭十二指腸切除や膵体尾部(脾合併)切除を標準術式としながら拡大リンパ節郭清や血管・大腸などの積極的な合併切除も行ない、切除率や根治性の向上に努めるとともに、集学的治療として消化器内科や放射線治療科と協力し、手術前後に化学療法などを積極的に行っています。
一方で切除不能症例に対しては、患者さんの「生活の質」(QOL) を考慮してバイパス術や化学療法などを行なう中で、化学療法にて腫瘍を縮小後に切除を行なった症例も経験しています。また特殊な治療法としては、粒子線治療(紹介)など独自性の高い治療も選択枝に加えているほか、最近は腹腔鏡下膵体尾部切除も行っています。
胆道疾患の悪性腫瘍は肝外胆管がん・肝門部胆管がん・胆嚢がん・乳頭部がんと多岐にわたり、2008年以降2020年末までで230例ほどの手術症例を経験しています。消化器内科や放射線診断科と協力して質の高い診断を行なった上で、各疾患に応じて治療方針を決定し、肝切除や胆膵合併切除などを含めた積極的な手術治療を行なっています。また、手術不能例に対しては消化器内科等の協力のもとで、内視鏡的ステント術などによる減黄処置などを行うとともに、化学療法・放射線療法などを病態に応じて施行しています。

いずれの疾患の場合にも、診療ガイドラインを基本として患者さん・御家族の方の意見を尊重しながら各領域の専門医がカンファレンスを通じて個々の患者さんに最も適した治療法を提供しています。

手術件数

主な術式別手術数 2017年 2018年 2019年 2020年
食道亜全摘 33(32) 26(25) 29(28) 26(26)
胃全摘 55(9) 29(4) 37(6) 25(3)*
幽門側胃切除 60(35) 60(36) 47(26) 58(29)*
噴門側胃切除 3(1) 1 1(1) 9(2)
胃部分切除 9(1) 7(5) 5(2) 7(5)
結腸切除 88(68) 74(62) 86(73) 63(57)
前方切除 62(57) 62(61) 57(56) 50(39)*
大腸(亜)全摘 0 0 0 3(2)
内肛門括約筋切除 (ISR) 4(4) 2(2) 0 0
マイルス手術 10(9) 15(15) 10(9) 13(13)
骨盤内臓全摘 5 1 3 4
肝葉切除/中央2区域切除 16 15 20 12
肝区域切除/亜区域切除 7 8 15 13
肝部分切除 46(1) 33(13) 40(27) 38(27)
膵頭十二指腸切除/膵全摘 31 36 24 20
膵体尾部切除 18 10(2) 15 10(1)
拡大胆摘 7 8 3 7

(鏡視下手術数)

*ロボット含む

臨床試験について

I.臨床試験とは

ある病気に対して有効であることが予想・期待される新しい薬や治療法・診断法が見いだされたときには、基礎研究(動物・生理・生化学実験等)で検証した後、実際にその安全性や効果について患者さんのご協力を得て調べなければなりません。それらを臨床の現場で科学的に調べるための研究の方法が「臨床試験」です。現在すでに使用されている多くの薬や治療法・診断法も、これまでの多くの患者さんの御協力を得て国内および海外での臨床試験によって実証され進歩してきた結果です。また患者さんが臨床試験に参加される場合には、参加することで新しい治療法を受けられる可能性がある一方で、まだ確立されているわけではない治療だけに被る不利益(予想したほどの効果がない、副作用が出現した等)もあり得ることを十分に理解していただく必要があります。
当院の消化器外科は日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)に参加しています。JCOGは厚生労働省の研究費に基づいて運営されているがんの研究組織です。国内で限定された50前後の施設が参加しており、当院はその一つに認定されております。現在JCOGをはじめ、他にも各領域における専門の医師・医療機関が集まって、各々の臨床試験を実施・検証を行っています。
そこでいろいろながん患者さんに関して、臨床試験が行われている領域で一定の条件を満たす場合には、臨床試験のお話をさせていただくことがあります。参加の可否は患者さんの自由意思に委ねられており、参加していただいた場合は臨床試験に登録された医師によってその治療をさせていただきます。また不参加の場合でも当院の治療方針に従って従来の治療を行い、患者さんに不利益となることはありません。主治医や各疾患責任医師から内容の説明をうけ、十分に御理解いただいた上でご自由に選択して下さい。

臨床試験への参加をご希望されない方は辞退することが可能ですので、各疾患の責任医師または科長までご相談ください。またご不明の点は遠慮なく 責任医師または主治医にお尋ね下さい。

連絡先
兵庫県明石市北王子町13-70 TEL:078-929-1151
兵庫県立がんセンター 消化器外科 各試験責任医師(各試験内に記載) または 科長 藤野泰宏

II.現在行われている臨床試験など

<食道がん>(責任医師:大坪大)

1. 臨床病期IB/II/III 食道がん(T4 を除く)に対する術前CF 療法/術前DCF 療法/術前CF-RT 療法の第III 相比較試験(JCOG1109)

2. 食道がん患者を対象とした術後補助療法としてのS-588410第3相多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験

<胃がん>(責任医師:鈴木知志)

1. 高度リンパ節転移を有するHER2陽性胃癌に対する術前trastuzumab併用化学療法の意義に関するランダム化第II相試験(JCOG1301C)

2. 病理学的StageII/IIIで“vulnerable”な80歳以上の高齢者胃癌に対する開始量を減量したS-1術後補助化学療法に関するランダム化比較第III相試験(JCOG1507)

3. 局所進行胃癌における術後補助化学療法に対する周術期化学療法の優越性を検証することを目的としたランダム化比較第III相試験(JCOG1509)

4. 高度リンパ節転移を伴う進行胃癌に対する術前Dosetaxel+Oxaliplatin+S-1の第II相試験(JCOG1704)

5. 漿膜下浸潤及び漿膜浸潤を伴う進行胃癌を対象とした大網切除に対する大網温存の非劣性を検証するランダム化比較第III相試験(JCOG1711)

6. 大弯に浸潤する胃上部進行胃癌に対する腹腔鏡下脾温存脾門郭清の安全性に関する第II相試験(JCOG1809)

7. cT1-2N0-2胃癌におけるロボット支援下胃切除術の腹腔鏡下胃切除術に対する優越性を検証するランダム化比較試験(JCOG1907)

8. 進行胃癌に対する腹腔鏡下手術と開腹手術の安全性と根治性に関するランダム化II/III相試験(JLSSG0901)

<結腸・直腸がん>(責任医師:古谷晃伸)

1. 腹腔鏡下直腸癌術後性機能障害に関する多施設前向き観察研究(the LANDMARC Study)

2. 腹腔鏡下大腸癌周術期静脈血栓塞栓症予防に対するエノキサパリンと理学療法併用の有効性に関する研究

3. 根治的外科治療可能の結腸・直腸癌を対象としたレジストリ研究(GALAXY trial)

4. 血液循環腫瘍 DNA 陰性の高リスク Stage II 及び低リスク Stage III 結腸癌治癒切除例に対する術後補助化学療法としての CAPOX 療法と手術単独を比較するランダム化第 III 相比較試験(VEGA trial)

5. 腹腔鏡下直腸癌切除における技術認定医手術参加の有用性に関する検討(EnSSURE study)

6. 大動脈周囲リンパ節転移に関する研究

<肝臓がん>(責任医師:吉田俊彦)

1. 原発性肝細胞癌に対する開腹左葉切除術および完全腹腔鏡下左葉切除術の比較検討

2. 肝S7病変に対する腹腔鏡手術適応の有効性に関する後ろ向き研究

3. 先天性心疾患術後の肝腫瘍・肝細胞癌の患者の臨床検体(組織や血液など)を用いたゲノムプロファイリングに関する研究

<膵がん・膵腫瘍>(責任医師:藤野泰宏)

1. 切除不能膵癌に対するFOLFIRINOX療法またはゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法により切除可能と判断された膵癌患者の登録解析研究(PC-CURE-1)

2. 腹腔洗浄細胞診陽性と診断された膵がん症例に関する後ろ向き観察研究

3. 膵切除における抗血栓薬服用歴が術後経過に及ぼす影響に関する研究

4. 腹腔鏡下膵体尾部切除術における術前難度評価スコア(diffuse score)の有用性に対する検証研究

5. 良性〜低悪性度膵評価に対する腹腔鏡下尾部膵切除術の際の脾温存と脾合併切除術の比較検討:Propensity score matching 解析を用いる

6. 膵頭部癌門脈合併切除例における血管切除範囲・再建法とその治療成績の検討

7. Invasive intraductal papillary mucinous carcinoma (IPMC)に対する術後補助療法の有用性に関する後ろ向き観察研究

<十二指腸腫瘍・小腸腫瘍>(責任医師:藤野泰宏)

1. 十二指腸癌外科的切除症例の臨床病理学的因子と予後に関する研究

<胆道がん>(責任医師:田中基文)

1. 根治切除後胆道がんに対する術後補助療法としてのS-1療法の第III相試験(JCOG1202)

2. 切除可能胆道癌に対する術前MDCT診断の妥当性に関する研究(JCOGBDCA)

3. 十二指腸乳頭部癌を対象とした予後因子に関する後方視的多施設共同観察研究(KOBE 01 study)

NCD/各臓器のデータ登録に関して

我が国ではすでに関連する多くの外科系臨床学会が連携し、日本の医療の現状を把握して情報を共有するとともに治療の均沾化と質の向上を目指して『一般社団法人National Clinical Database』(以下NCD)を立ち上げ、データベース事業を開始しています。この事業を通じて患者さんに対してより適切な医療を提供し、また各領域において専門医の適正配置や最善の医療の提供といった取り組みを支援することが可能となります。当センターにおいては本事業に消化器外科、乳腺外科、呼吸器外科が参加しており、手術・治療をうけられるすべての患者さんを対象にデータを登録させていただいています。NCDへの登録を希望されない方は主治医にお申し出ください。尚、NCDに登録する際には、患者さんの氏名やカルテ番号等の個人を識別できる情報は登録しませんので、個人情報が外部に漏洩することはありません。何卒趣旨をご理解の上、ご協力賜りますようよろしくお願い申し上げます。

加えて消化器のがんにおいては、その領域が広範囲の臓器に及ぶため、NCDに関連して或はこれとは別に各専門領域別学会・研究会が主導して専門臓器別のさらに詳細なデータ登録が行われています(膵がん登録・胆道がん登録・肝臓がん登録・食道がん登録・胃がん登録・大腸がん登録等)。こうしたデータも、各専門領域の研究会や学会が責任を持って集計・解析し、我が国の各臓器のがんの状況を正確に把握するとともにその治療の発展に寄与できるように努めています。
こちらの登録も個人が特定される情報は一切登録いたしませんので、個人情報の漏洩はありません。
こうした各臓器別の登録も希望されない方は主治医にお申し出ください。
重ねてご協力の程、お願い申し上げます。

後期研修医・フェローについて

兵庫県立がんセンター・消化器外科では、県下のがん診療拠点病院として食道胃腸領域、肝胆膵領域ともに豊富な手術症例を経験しています。これに伴い、初期研修終了後の後期研修医(医師免許取得後3-5年)およびフェロー(医師免許取得後6-7年以降)も広く募集しております。がんセンタ?での研修を考えておられる先生、少しでも消化器外科、特にがん診療に興味のある若い外科医、またがんセンターでの手術を見学してみたい先生などお気軽に御相談ください。

問い合わせは副院長・消化器外科科長 藤野泰宏まで。