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診療部の紹介

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放射線治療科

診療カレンダー

 
放射線治療科 1診 辻野 上薗 辻野 辻野 太田(陽)
2診 太田(陽)、上薗 宮崎 太田(陽) 上薗、宮崎 上薗、宮崎
3診 沖本
(粒子線医療センター)

(高林、丸大)
副島
(神戸陽子線センター)
(高林、丸大)
宮崎
(高林、丸大)
高林、別所、丸大 高林、丸大

概要

今後ますます期待される放射線治療

現在がん治療では、手術、抗がん剤治療、放射線治療が三大治療として確立され、がん治療の中心となっていますが、この中でも放射線治療は治療機器の進歩とともに近年、QOL(Quality of Life:生活の質)を下げない治療法として、 世界的にますます期待を集めています。近年、放射線治療機器の技術革新はめざましく、腫瘍部へのピンポイント照射が可能となり、治療効果が飛躍的に向上しただけでなく、副作用なども軽減されています。完治すること、社会に復帰すること、 大切なひととの時間を保つこと、痛みがなく、自分の口で食事ができることなど、がん患者さんが望む多くのことがらに貢献できるのが放射線治療です。つまり、がんを「治す」だけでなく、治った後の日常生活や職場復帰も含め、 患者さんに寄り添う治療としてこそ真価が発揮できます。
欧米ではがん治療において放射線治療を選択する場面が増加し、約60%のがん患者さんが受けています。これに対し日本では25%の患者さんが受けているに過ぎません。日本では放射線治療がうまく活用されていないと言えると思いますが、 この差こそが日本の放射線治療の今後の大きな発展性を示しています。当科では各臓器担当科の先生方と協力し、それぞれの患者さんに最も適した放射線治療を、最高の品質で提供するべく努力を続けています。日本人の3人に1人ががんで亡くなる現在、 放射線治療は早期のがんから進行がんまでほぼ全てのがん治療において重要な役割を果たしているため、治癒をめざした根治治療はもちろんのこと、骨転移や脳転移などによる症状の緩和のための治療まで、QOL を保ちながらより高い効果を得ることを目指しています。

当院の放射線治療装置(Brainlab社Novalis TX、 Varian社TrueBeam)

がんは今、切らずに治す時代です

放射線治療は、がん集学的治療の中で重要な役割を果たし、からだへの負担が少なく、高い根治性を目指せる治療法です。放射線治療と抗がん剤を組み合わせて用いる化学放射線療法は、多くの局所進行癌 (肺がん、食道がん、頭頸部がん、子宮頸がん、直腸がん、肛門管がん、膵臓がん、悪性神経膠腫など)で最も多く選択される治療となっています。手術で腫瘍を切除することなく臓器を温存できる治療として、多くの患者さんに高い評価をいただいています。
近年の技術革新は様々な高精度放射線治療を発展させました。定位放射線治療とは、主に脳内の小さな腫瘍に対して、正確な位置精度を保ちながら多方向からピンポイントで大線量の照射を短期間で行う放射線治療技術のことです。線量の集中により腫瘍に照射する線量を増やし、 かつ周辺の正常組織へは線量を減らすことが可能となりました。この技術を脳だけでなく体幹部(主に肺や肝臓)の小さな腫瘍に応用することで、早期の肺がんや肝がんを手術で切除することなく治癒させることが可能となっています。
強度変調放射線治療(Intensity-Modulated Radiation Therapy:IMRT)は、腫瘍に対し多方向から照射野の形状を細かく変化させて放射線を照射することで、腫瘍に放射線を集中しつつ周囲の正常組織への線量を飛躍的に低減することができる技術です。 当院ではガントリを回転しながら従来の IMRT より短時間での照射ができる VMAT(Volumetric Modulated Arc Therapy)を導入し、頭頸部がんでは、唾液分泌障害・側頭葉壊死・視力障害など、前立腺癌では、直腸出血などの晩期有害反応を軽減しつつ、 腫瘍制御率の向上が得られるようになりました。このような治癒と高いQOLの両立を目指して、現在は脳腫瘍、悪性リンパ腫、肺がん、食道がん、子宮がん、肛門管がん、皮膚がんなど多くのがんにVMATを実施しています。
 小線源治療とは、イリジウムという小さな線源を用いて体の中から照射をする治療技術です。線源を送り込む方法により、腔内照射と組織内照射に分類され、腫瘍に合わせて線源を配置することで、線量を集中しながら周囲の正常組織の線量を軽減する、 メリハリをつけた治療が可能でありますが、腫瘍の移動や縮小への対応にも優れた特徴があります。また、効率良く腫瘍に高い線量を投与できる点から、がんの種類によっては手術と同等の腫瘍制御効果が得られます。 現在は治療室に設置されたCT による3次元画像下の治療計画を用いてさらに精密に、患者さん個々の様々な腫瘍の形、大きさなどに対応し、個別化した治療が可能となっています。今後さらなる治癒率の向上や有害反応の低減が期待できます。
組織内照射は関西圏でも実施できる施設は少なく、がん診療携拠点病院としての使命感をもって取り組んでいます。

CT同室型小線源治療装置と全身麻酔システム

当科を受診される方へ

当科では年間750~800人の患者さんへ放射線治療を行っています。日々、各臓器がんを担当する診療科との症例検討会を実施し、それぞれの患者さんに最適な放射線治療を提供します。 兵庫県立病院として、また県で唯一の都道府県がん診療連拠点病院として、地域を先導して最新の高精度放射線治療を提供すべく日々努力を続けています。
また「切らずに治す」をモットーに、臓器温存治療としての放射線治療に力を入れています。「手術と言われたのだけれど、手術せずに治らないか?」といった疑問があれば是非主治医の先生へ放射線で治療できないか尋ねてみてください。
当科では院内でがんと診断された患者さん以外にも近隣の病院から放射線治療の必要な患者さんをご紹介いただいて治療しています。乳がんの術後治療や前立腺がんのIMRTなど、当院での治療をご希望の方は主治医の先生に当科への紹介をご相談下さい。
放射線治療について尋ねたいことがあれば遠慮なく外来に受診してください。また、もし、放射線治療をお受けになることになってもわからないことがあれば遠慮なく、医師、看護師、放射線治療技師にお尋ねください。

当科スタッフ

当科を受診される方へ_1

放射線治療をお受けになることになった場合、その流れは概ね下記の通りです。

1.診察と適応の決定

放射線治療の適応があるかどうか、診察を行い、患者さんの状態や希望、EBM (evidence-based medicine )に即して検討します。放射線治療の目的には根治と緩和の両方があります。 根治目的の場合、エビデンスを考えながら他科の先生方と治療法を検討することもありますし、多施設共同試験などの臨床研究に参加できる症例かどうかも検討します。緩和治療の場合もエビデンスと患者さんの全身状況に合わせて治療の適応を決定します。

2.同意説明

患者さんに放射線治療について説明し、治療内容について相談します。説明の骨子は放射線治療の意義、放射線治療の方法、および合併症についてです。放射線治療の合併症は治療中の急性合併症と数ヶ月から数十年後に発生する晩期合併症があります。 放射線治療医がそれぞれについて説明し、同意いいただいた後に同意書にご署名いただきます。

3.治療の準備
4.放射線治療開始

上記のような治療準備を経て放射線治療を開始します。がんの種類や進行度に応じて治療回数は様々ですが、がんを根治させる目的で行う治療の場合には30~35回程度の治療が必要です。通常1日1回で平日のみの照射ですと6~7週間程度の治療期間となります。 1回の照射時間は数分であり、毎日の治療には入室から位置あわせ、照射して退室までで約10分程度の時間がかかります。患者さんの状態にもよりますが、放射線単独治療の場合には入院せずに外来通院による治療も十分可能です。最近は放射線治療を化学療法(抗がん剤)と同時併用で行うことも多く、 その場合には入院していただいて全身状態をしっかり管理しながら治療を進めていきます。

日々患者さんの状態をうかがいながら、多くの目でチェックを行い正確な治療を実施しています

当科を受診される方へ_6

5.放射線治療中の急性合併症および効果のチェック

放射線治療中は週1回の放射線治療医による診察があります。また、放射線治療の看護師による定期的な面談も行われます。これらは治療効果や急性合併症を専門的にチェックすることにより、照射線量を変更すべきかどうか、休止を置くべきかどうか、 適切な症状緩和の処置が必要かどうか、などをチェックする重要な作業です。診療放射線技師とは毎日顔を合わせますので、体調の異変を感じたり質問があれば遠慮なくお声掛けください。

6.放射線治療後の経過観察

放射線治療は数ヶ月から数年後に晩期合併症が起こり得ることが特徴です。日本では放射線治療医が少ないことから放射線治療による晩期合併症であることに気づかず、適切な処置がなされないこともありますし、放射線治療に関連のないことでも治療の合併症であるような誤った説明がなされることもあります。 放射線治療医による晩期合併症の専門的なチェックは重要で、当院でも照射1年後までは1ヶ月から3ヶ月毎に、その後は適切な間隔で放射線治療科の外来を受診いただいています。治療が終了してからも治療効果の確認や再発の有無の経過観察はがん治療においてとても重要です。 またそれらの経験を通して治療の改善方法を振り返るところから、今後の治療がさらに良いものへと発展していくと考えています。

紹介元の先生方へ

当院のがん診療にご協力いただきありがとうございます。現在当科では根治治療から症状緩和治療まで、幅広い放射線治療を提供しています。放射線治療が必要と思われる患者さんのご紹介をよろしくお願いいたします。また放射線治療ができるだろうか、 というようなことも是非お気軽にご相談ください。基本的には担当臓器科へご紹介いただいた上で各臓器症例検討会にて方針を決めて治療にあたりますが、乳がんの術後照射や前立腺がんのIMRT、また骨転移等への緩和照射などは当科へ直接ご紹介いただいての治療も行っています。 緩和照射については1回のみの照射や週に1回ずつ計2回の照射など、小数回のみで治療する方法も採用しており、通院や転院は困難といった場合でも必要な放射線治療ができるよう検討させていただきます。是非ご紹介よろしくお願い申し上げます。

当科で研修をご希望の先生方へ

当院は海の幸に恵まれた明石市にある、兵庫県のがん診療連携拠点病院です!

当科の特徴
兵庫県立病院群・神戸大関連病院で完成された放射線腫瘍医へ

最新の高精度放射線治療から粒子線・小児陽子線治療まで、多様性に富む兵庫県立病院群と神戸大学関連病院の充実した環境で、完成された放射線腫瘍医を目指しましょう!当院は神戸大学放射線科専門研修プログラムの連携施設であり、臨床・研究の両面において連携し、優れた専門医の育成を目指しています。 がん専門病院で放射線治療を学びたい若手医師は是非お問い合わせ下さい。

当科で研修をご希望の先生方へ_4

当科参加多施設共同試験

疾患 研究課題 研究組織 オプトアウト
頭頸部がん T1-2N0-1M0中咽頭がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)の
多施設共同非ランダム化検証的試験(JCOG1208)
JCOG
頭頸部がん 局所進行上顎洞原発扁平上皮がんに対するCDDPの超選択的動注と
放射線同時併用療法の用量探索および有効性検証試験 (JCOG1212)
JCOG
頭頸部がん 頭頸部癌化学放射線療法における予防領域照射の線量低減に関するランダム化比較試験(JCOG1912) JCOG
頭頸部がん 進行頭頸部扁平上皮癌に対する緩和的寡分割放射線治療(QUAD Shot)の
有効性を調べる多施設前向き観察研究 (JROSG 18-2)
JROSG
肺がん 臨床病期IA期非小細胞肺がんもしくは臨床的に原発性肺がんと診断された3cm以下の孤立性肺腫瘍に対する
体幹部定位放射線治療線量増加ランダム化比較試験(JCOG1408)
JCOG
肺がん 非小細胞肺癌の完全切除後に認められる孤立性肺腫瘍に対する
体幹部定位放射線治療の多施設共同非ランダム化検証的試験(JROSG17-4)
JROSG
肺がん 切除不能根治照射可能未治療 III 期非小細胞肺がんに対するデュルバルマブと根治的放射線治療併用療法の
多施設共同単群第 II 相試験(医師主導治験 WJOG11619L)
WJOG
肺がん 非切除ステージI/IIリンパ節転移陰性非小細胞肺癌患者の治療として、体幹部定位放射線治療(SBRT)と
デュルバルマブを併用する第III相無作為化プラセボ対照二重盲検国際多施設共同試験(PACIFIC-4/RTOG-3515)
企業治験
肺がん 病理学的N2非小細胞肺癌に対する術後放射線治療に関する
ランダム化比較第III相試験(JCOG1916)
JCOG
肺がん 肺尖部胸壁浸潤癌に対する化学放射線療法後の術前後デュルバルマブもしくは
デュルバルマブ維持療法を併用した集学的治療に関する単群検証的試験 (JCOG1708C)
JCOG
肺がん 同時化学放射線療法を受けた局所進行非小細胞肺癌の症例検索システム開発 企業臨床研究
乳がん A Randomized Phase III Clinical Trial Evaluating Post-Mastectomy Chestwall and
Regional Nodal XRT and Post-Lumpectomy Regional Nodal XRT in Patients
with Positive Axillary Nodes Before Neoadjuvant Chemotherapy Who Convert
to Pathologically Negative Axillary Nodes After Neoadjuvant Chemotherapy
(NSABP B51/RTOG1304)
NRG
乳がん HER2 陽性 HR 陰性乳癌における 遺伝子 HSD17B4 高メチル化の有用性評価試験 (PASSION trial)
食道がん 臨床病期IB/II/III食道がん(T4を除く)に対する術前CF療法/術前DCF療法/術前CF-RT療法の
第III相比較試験 (JCOG1109)
JCOG
食道がん 切除不能局所進行胸部食道扁平上皮癌に対する根治的化学放射線療法と導入Docetaxel+CDDP+5-FU療法後の
Conversion Surgeryを比較するランダム化第III相試験(JCOG1510)
JCOG
食道がん Clinical-T1bN0M0 食道癌に対する総線量低減と予防照射の意義を検証するランダム化比較試験(JCOG1904) JCOG
胃がん 出血を伴う胃癌への緩和的放射線治療の有効性を調べる多施設前向き観察研究(JROSG 17–3) JROSG
直腸がん 局所切除後の垂直断端陰性かつ高リスク下部直腸粘膜下層浸潤癌(pT1 癌)に対する
カペシタビン併用放射線療法の単群検証的試験(JCOG1612)
JCOG
子宮頸がん 局所進行子宮頸がん根治放射線療法施行例に対するUFTによる補助化学療法のランダム化第III相比較試験
子宮頸がん 子宮頸癌術後再発高リスクに対する強度変調放射線治療(IMRT)を用いた術後同時化学放射線療法の
多施設共同非ランダム化検証的試験(JCOG1402)
JCOG
子宮頸がん 子宮頸がんに対するA群:腔内照射とB群:組織内照射併用腔内照の遡及的比較研究(国際多施設共同遡及的観察研究) AMED伊丹班
子宮頸がん 子宮頸がん根治的放射線治療における組織内照射併用腔内照射の第I/II相試験(HBT試験) AMED伊丹班
子宮頸がん 子宮頸癌ⅠB期-ⅡB期根治手術例における術後放射線治療と術後化学療法の第Ⅲ相ランダム比較試験 JGOG
前立腺がん 前立腺がんに対する強度変調放射線治療の多施設前向き登録(JROSG17-5) JROSG
高齢者がん 高齢がん患者に対する高齢者機能評価と放射線治療の実態調査 都立駒込病院他
骨転移 転移性骨腫瘍に対する放射線治療の多施設共同前向き観察研究

臨床研究

当科では下記の研究を実施しています。

疾患 研究課題 研究組織 オプトアウト
乳がん 乳房切除術後放射線治療における内胸リンパ節照射の意義についての遡及的検討 当院(単施設)
子宮頸がん 骨盤医用画像からの自動画像抽出に関する多施設共同研究 当院他
子宮頸がん 画像誘導小線源治療を用いた子宮頸癌根治照射に関する遡及的研究 当院(単施設)
子宮頸がん IMRTを用いた子宮頸癌術後骨盤照射の遡及的研究 当院(単施設)
脳転移 当院での転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療HyperArcの初期経験 当院(単施設)
全がん AYA世代に対する放射線治療 当院(単施設)

スタッフ(放射線治療科)

スタッフ 資格等 主な所属学会
辻野 佳世子
放射線部長
放射線治療科部長(診療科長)
1987年卒
日本医学放射線学会放射線治療専門医 日本放射線腫瘍学会
日本医学放射線学会代議員 日本医学放射線学会
日本放射線腫瘍学会代議員 日本肺癌学会
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本乳癌学会
放射線科研修指導者 米国放射線腫瘍学会
臨床研修指導医 西日本がん研究機構
放射線科取扱主任者
特定放射性同位元素防護管理者
神戸大学放射線腫瘍科客員教授
太田 陽介
放射線治療科部長
1997年卒
日本医学放射線学会放射線治療専門医 日本放射線腫瘍学会
放射線科研修指導者 日本医学放射線学会
  日本癌治療学会
  日本頭頸部癌学会
  日本肺癌学会
  米国放射線腫瘍学会
  欧州放射線腫瘍学会
上薗 玄
放射線治療科医長
2003年卒
日本医学放射線学会放射線治療専門医 日本放射線腫瘍学会
放射線科研修指導者 日本医学放射線学会
  米国放射線腫瘍学会
宮崎 秀一郎
放射線治療科医長
2013年卒
日本医学放射線学会放射線治療専門医 日本医学放射線学会
  日本放射線腫瘍学会
丸大 満
放射線治療科医長
2015年卒
日本医学放射線学会放射線科専門医 日本医学放射線学会
  日本放射線腫瘍学会
別所 良祐
放射線治療科専攻医
2019年卒
  日本医学放射線学会
  日本放射線腫瘍学会
高林 畑銘
放射線治療科専攻医
2019年卒
  日本医学放射線学会
   

2022年4月