診療部の紹介 -放射線治療科-
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放射線治療科では豊富な経験にもとづき、個々の患者さんへ最適な放射線治療を選択し、「切らずに治す」放射線治療を日々追求しています。また各臓器担当科および当部門の医学物理士・診療放射線技師・看護師と協力し、
安全かつ正確に最高の品質で治療を提供するべく努力を続けています。現在2台の放射線治療装置と1台の高線量率小線源治療装置を用いて、1日約70人、年間750~800人の治療を行っています。
2011年に高精度放射線治療装置Novalis Txを導入後、強度変調放射線治療や頭部・体幹部定位放射線治療を積極的に導入し、現在年間約250人のIMRTを行っています。また小線源治療装置(Microselectron-HDR)もCT同室型に更新され、
3次元画像を用いた治療計画が可能となり、より精度の高い画像誘導小線源治療を行っています。2015年からは腫瘍に直接針を刺し、放射線が出る線源を通して腫瘍に集中的に照射する組織内照射を開始、複雑な形や大きな腫瘍へも十分な治療が可能となっています。
2020年1月に最新型高精度放射線治療装置TrueBeamを導入して2台ともに高精度治療が可能となりました。TrueBeamは高精度治療を短時間に行える装置で、呼吸などで動く臓器を追尾するシステムが搭載されているため、患者さんは呼吸を止めるなどの負担なく治療を受けることができます。
さらに、多発脳転移を一度に照射する新しい技術HyperArcを国内4施設目として導入しました。現在多発脳転移に対する定位放射線治療にも積極的に取り組んでいます。
一般的な外照射治療に加えて、上記のような高精度放射線治療や白血病骨髄移植前の全身照射にも積極的に取り組んでいます。また、兵庫県立粒子線医療センター、神戸陽子線センターと連携して陽子線、炭素線治療も含めた最適な治療をお勧めしています。
放射線治療科ではほぼ全臓器にわたるがんの治療を行います。身体の負担が小さい局所治療、手術に代わる治療として、局所進行がんの臓器を残して腫瘍を根治させる化学放射線療法が大きな柱です。手術や抗がん剤が適応にならない高齢の患者さんにも治療可能です。 乳がん、婦人科がん、肺がん、頭頸部がん、前立腺がんなど臓器を残して治療する部位が多くを占めます。
原発部位別の治療患者数および脳・骨転移治療数
機器更新のため1台体制の時期があった2019年度を除き、総治療患者数は年々増加しています。特に直近の2020年度はTrueBeamが活躍し、848人もの治療を実施しました。コロナ禍にあっても放射線治療数はむしろ増加しました。 効果が高く副作用が少ないIMRTやSBRTなど高精度治療の拡大に取り組んでおり、2020年度は全体の36%が高精度治療になっています。
脳腫瘍、頭頸部がん、前立腺がんはよくIMRTが行われますが、当院では早くから婦人科がん、食道がん、肛門管がん、悪性リンパ腫などにも拡大、現在は進行肺がんや皮膚がん、骨軟部腫瘍などの先端領域にも取り組んでいます。
小さな腫瘍へピンポイントに高線量を照射して腫瘍を消失させる定位放射線治療は、その効果の高さと安全性から手術に代わる治療として適応が拡大しています。2020年度からは脊椎(骨)転移、オリゴ(少数個)転移へも治療が可能となりました。 当院は肺がんのSBRTでは豊富な経験をもちますが、新規部位への治療にも積極的に取り組んでいます。2020年度にはHyperArcを用いた脳転移の治療数が大幅に増えています。
当院は婦人科がんの治療数では国内有数です。子宮頸がんや膣がんなど婦人科がんの治療に放射線治療の有効性は高く、婦人科と協力して多数の放射線治療を実施しています。特に腫瘍内部に線源を留置して照射する密封小線源治療の役割は重要であり、 中でも組織内併用腔内照射や組織内照射は複雑な形の腫瘍や大きな腫瘍にとても有効ですが、熟練した技術を要するために実施施設が少なく、兵庫県内では当院と神戸大学病院でのみ可能です。婦人科がん小線源治療の実施にあたっては、 麻酔科の協力を得て脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)や全身麻酔などを含めたしっかりとした鎮静鎮痛下に安全安楽正確な治療を行っています。