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診療部の紹介

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標準治療・治療成績について

標準治療と治療成績

はじめに

 当科の診療の目標は「患者さん一人一人にとって最適な治療を提供すること」です。ガイドラインに沿った標準的治療を基本に、その一歩先を行く臨床試験や治験など最新の治療を積極的に取り入れ、できる限り多くの選択肢を提供していきます。治療の選択においては個々の患者さんにとってのメリットとデメリットを十分に吟味して最適と思われる治療をおすすめします。また、治療に伴う合併症の軽減にも力を入れています。高度な医療を行っても最終的に治癒が得られない場合もあり、悪性腫瘍の治療には緩和ケアが必ず必要になります。緩和ケアチームとも密に連携し、看護師・薬剤師・放射線技師・栄養士・理学療法士・ソーシャルワーカーなど多職種の医療スタッフとともにチーム医療を実践しています。

はじめに

主要な疾患における当科の治療方針

婦人科主要疾患と、当科で行なっている取り組みを紹介します。

子宮頸がん

 子宮頸がんの90%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で発生します。ほとんどの女性はたとえ子宮頸部にHPV感染が起こっても自己免疫力でウィルスを排除できます。しかし、一部の女性でHPVの持続感染が起こり、前癌病変である子宮頸部異形成を経て子宮頸がんに進行します。予防に最も有効なのは性交渉デビュー前のHPVワクチンです。12歳から16歳が定期接種の対象であり、令和4年4月から積極的な接種勧奨が再開され、接種を逃した世代へのキャッチアップ接種も始まっています。
 初期の子宮頸がんの治療方法は、基本的には手術療法が標準治療です。妊孕能温存の希望があり、条件を満たせば子宮を温存する術式(円錐切除術や広汎子宮頸部切除術)が可能です。温存の希望がない場合には準広汎子宮全摘術や広汎子宮全摘術が基本術式になります。
 広汎子宮全摘術は、子宮頸部周囲の組織を大きく切除する手術です。この切除範囲内には骨盤神経(排尿機能をコントロールする神経)が含まれており、術後に排尿障害を発症することがあります。多くの場合は一時的ですが、長期にわたり自己排尿が困難になる場合もあります。当科では、排尿障害の合併症を減少させるために、可能な限り神経温存の広汎子宮全摘術を行なっています。また、骨盤内のリンパ節郭清も同時に行いますので、術後、下肢を中心にむくみ(リンパ浮腫)が発生する場合があります。リンパ浮腫を発症した場合には、リンパ浮腫外来での指導や複合的理学療法を行うことでリンパ浮腫の改善に努めています。
 ある程度進行した子宮頸がんの場合には放射線治療が選択されます。放射線治療に化学療法を併用する(同時化学放射線治療:CCRT)、子宮頸部に直接放射線をあてる小線源治療(腔内照射や組織内照射)、腫瘍に放射線を集中しつつ周囲の正常組織への線量を低減する(強度変調放射線治療:IMRT)などの導入により良好な治療成績が得られるようになりました。当科では放射線治療科と密に連絡を取り合いながら、協力して治療を行っています。
 進行あるいは再発の子宮頸がんの治療法は全身治療である化学療法が主体となります。当科では分子標的治療薬の血管新生阻害薬(ベバシズマブ)を併用した化学療法を行うことで治療成績の向上を目指しています。また、化学療法が奏効し局所治療が可能な状況にあれば、手術や放射線治療も取り入れています。

子宮体がん

 多くの子宮体がんの発生には女性ホルモンが深く関わっており、子宮内膜増殖症という前段階を経て子宮体がん(子宮内膜がん)が発生することが知られています。一方で、女性ホルモンの刺激と関連なく生じるタイプの子宮体がんはがん関連遺伝子の異常に伴って発生するとされ、比較的高齢の方に多くみられます。
 子宮体がんに対する根治治療は手術療法がまず選択されます。早期で再発のリスクが低い子宮体がんの患者さんには子宮、付属器(卵巣卵管)の摘出を行う術式が一般的です。リンパ節転移や再発のリスクが高いと判断された患者さんには骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節の郭清も同時に行います。当科では、早期の子宮体がんに対して、患者さんの身体的負担が少ない腹腔鏡やロボットを使用した低侵襲手術を積極的に導入しています。
 摘出した子宮や卵巣、リンパ節を術後に病理組織検査で評価し、再発リスクを決定します。再発リスクが高いと診断された患者さんには、術後補助療法(主に化学療法)を推奨しています。化学療法は、パクリタキセル+カルボプラチン(TC療法)を使用し、点滴治療を3週間に1回、計6回行います。
 再発のリスクが低く、手術のみで治療が終了した場合には、地域連携パスを活用してかかりつけ医と当院と交互に診療にあたる場合があります。該当する患者さんには担当医から入院中に説明を行います。
 進行あるいは再発の子宮体がんの治療は、全身治療である化学療法が主に選択されます。化学療法が奏効した場合には、手術や放射線治療といった局所治療を選択することもあります。また、子宮体がんで比較的高頻度に認められる、マイクロサテライト不安定性(MSI)の検査も適切な時期に行い、MSI-High固形癌であればペンブロリズマブの投与も検討します。今、その患者さんに最適な治療方法は何なのか、常に考えながら治療にあたっています。
 妊孕能温存を希望する患者さんに対するホルモン治療は、当院では症例を限定して行っています。適応に関しては、担当医にご相談ください。

卵巣がん
卵巣がんについて

 卵巣は通常、母指頭大の大きさで子宮の両側に位置する腹腔内の臓器です。

 卵巣をつくる主な組織には、卵巣の表面をおおっている表層上皮、卵子のもとになる胚細胞、性ホルモンを産生する性索間質があります。卵巣腫瘍はこれらすべてから発生するため、腫瘍が発生する組織によって大きく3つのグループに分けられます。また、卵巣腫瘍は良性、悪性だけでなく、これらの中間的な性格をもつ境界悪性腫瘍があり、卵巣腫瘍は非常に多種多様です。

①表層上皮性・間質性腫瘍
 卵巣腫瘍のうち、最も多い腫瘍です。また、悪性の卵巣腫瘍全体の約90%がこのタイプで、一般に「卵巣がん」はこの悪性腫瘍を指します。卵巣がんは症状に乏しく、見つかったときには60%以上の人は進行がんです。腹水からがんの診断がつくこともありますが、多くの場合は腫瘍が見つかっても手術前に組織を採取することが困難で、手術時に採取した腫瘍組織からがんの診断が確定することが一般的です。

②性索間質性腫瘍
 性索間質には様々な細胞が存在します。女性ホルモンを産生する莢膜細胞と顆粒膜細胞、男性ホルモンを産生するセルトリ・間質細胞、線維芽細胞などから成ります。それぞれ良性から悪性まで様々な腫瘍が発生します。治療の基本は手術です。

③胚細胞腫瘍
 胚細胞腫瘍は10代から20代に多く発生します。この悪性腫瘍は卵巣がんの5%程度ですが、若年者に発症することが問題です。しかし、抗がん剤が非常によく効くので、適切に治療を受ければ治る可能性が高く、状況によっては妊娠できる能力も残すこともできます。

卵巣がんの治療

 卵巣がんの治療の基本は手術と抗がん剤治療の組み合わせから成ります。手術でできる限り体内に残る腫瘍を少なくした上で、その後に半年程度かけて抗がん剤治療を行って再発のリスクを最小にします。一方、進行した卵巣がんにおいて初回の手術時に腫瘍の切除が困難な場合には、あえて無理な手術をせず抗がん剤投与を行った後に改めて根治を目指した手術を行うこともあります。こうすることで治癒の可能性を維持しつつ合併症を減らせることが確かめられています。さらに近年は再発リスクが高い進行がんに対して、初回治療後に血管新生阻害薬(ベバシズマブ)やPARP阻害剤(オラパリブ・ニラパリブ)を用いた維持療法により治療成績が向上することが解り、患者さんごとに最適な治療を検討します。
 卵巣がんの抗がん剤治療は臨床試験や新薬開発治験も含めて当科で責任を持って行いますが、一部の該当する患者さんには腫瘍内科の新薬開発治験への参加をお勧めする場合もあります。その際には担当医から詳しく説明させていただきます。
 卵巣がんの原因は生活環境による要因の他に遺伝による卵巣がんも注目されています。最近の研究の結果、14.7%の方が特定の遺伝子に病的変異がある遺伝性卵巣がんであることが分かりました。当院では遺伝外来も開設していますので、治療方針の決定に際し必要な場合には遺伝外来も併せて受診いただき、本人だけでなく血縁者のがんの予防や治療の選択を提案させていただいています。気になる患者さんは担当医にご相談ください。

低侵襲手術

 従来、開腹手術(おなかを切って直視下で手術を行う方法)で手術は行われてきましたが、小さな傷からおなかの中にカメラと鉗子(手術の手となるもの)を入れて行う低侵襲手術が婦人科手術でも広く行われるようになっています。低侵襲手術は、手術後の体の負担が開腹手術と比較して軽いため、入院期間の短縮や早期社会復帰が可能となります。当院でも低侵襲手術が適応となる患者さんには積極的に導入しています。手術には日本産科婦人科内視鏡学会認定腹腔鏡技術認定医が参加し、より安全で確実な低侵襲手術を提供するように心がけています。低侵襲手術の方法として、腹腔鏡手術とロボット支援下手術があり、それぞれ適応に応じて手術方法を選択しており、全て保険診療内で治療を行っています。

 当院で行っている低侵襲手術とおおよその入院期間は以下の通りです。ただし、入院期間に関しては、術後の経過によって延長することもあります。

①子宮体がん

  • 早期の子宮体がんに対する子宮全摘術+両側付属器摘出術(+骨盤内リンパ節郭清術):腹腔鏡、ロボットどちらでも対応可能です。入院期間は6日間です。
  • 再発高リスクの組織型である子宮体がんIA期に対する子宮全摘術+両側付属器摘出術+骨盤内リンパ節郭清術+傍大動脈リンパ節郭清術(+大網部分切除):腹腔鏡で対応可能です。入院期間は6日間です。
  • ②子宮頸がん
    IA-IB1期と診断されたごく早期の子宮頸がん患者さんが対象です。術式は進行期によって決定しています。腹腔鏡での対応が可能です。入院期間は術式によって異なります。
    単純・準広汎子宮全摘術:6日間、広汎子宮全摘術:約2週間

    ③卵巣がん・原発不明がん
    進行した卵巣がんや原発不明がんに対する診断目的の審査腹腔鏡手術を行っています。手術が終わった後、なるべく早期に化学療法の導入を行うことでQOLの改善を目指します。入院期間は化学療法の日数も合わせて約7日〜10日間です。

    ④子宮頸部異形成や子宮内膜増殖症などの前癌病変
    腹腔鏡、ロボットどちらでも対応可能です。入院期間は6日間です。

    ⑤遺伝性乳がん卵巣がんに対するリスク低減卵管卵巣切除術(RRSO)
    腹腔鏡で対応可能です。入院期間は5日間です。

    ⑥子宮筋腫や卵巣嚢腫などの良性疾患
    悪性の可能性があると診断されて当院に紹介となった患者さんの中には、当院での精査の結果、良性であると診断される方もおられます。その場合には腹腔鏡やロボットでの手術を提案させていただくこともあります。入院期間は5-6日間です。

    薬物療法

     薬物療法は、がん治療においては、抗がん剤・ホルモン剤・免疫チェックポイント阻害剤等を使う治療の総称です。がんに伴う症状や治療に伴う症状を和らげる、鎮痛剤・制吐剤・等の薬剤を使用することも薬物療法のひとつです。
     化学療法は、抗がん剤・ホルモン剤等を使う治療の総称です。外科手術療法と放射線療法は、局所的ながんの治療には強力です。しかし、放射線を全身に照射することは副作用が強すぎて不可能ですし、全身に散らばったがん細胞のすべてを手術で取り出すことはできません。それに対して化学療法は全身に薬をいきわたらせる治療法です。当科では、基本的には外来通院で化学療法を行っています。副作用に対しての薬剤を予防的に使用しているため、非常に強い症状が出る方は少ないですが個人差があります。できるだけ副作用を抑えて治療を継続できるように心がけています。
     免疫チェックポイント阻害剤等を使う治療を免疫療法と呼んでいます。2019年に保険収載されたペムブロリズマブ(商品名キートルーダ)は免疫チェックポイント阻害剤のひとつです。広義の免疫療法には有効性が認められていない治療も含まれますが、当院では基本的には治療の有効性が認められた薬剤での治療法(保険収載された薬剤での診療)のみを行っています。
     当科では積極的に新薬の治験にも参加しています(臨床研究・臨床試験についての項を参照ください)。治験では、近い将来に婦人科がんで一般的に使用できるようになることが期待されている新薬の臨床研究を行っています。当科は国外の治験と国内の治験どちらにも登録しており、新薬が使うことができる場合は積極的に提案しています。

    腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy : CART)

     婦人科がんが原因で癌性腹膜炎を来たし、癌性腹水が貯留することがしばしばあります。大量腹水貯留下では腹部膨満感や呼吸苦などにより食事摂取が不十分になり生活の質の低下を招き、積極的な抗癌剤治療の継続が難しくなることもあります。近年単なる腹水穿刺による排液ではなく、腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy : CART)が注目されています。CARTは腹水を穿刺後、腹水中の細菌や癌細胞を除去し、腹水濾過器によって余分な水分を除水後、有用な蛋白成分を点滴静注し体に戻します。大量の腹水の除去と血中蛋白の補給が同時に行える利点があります。当院では卵巣がんの患者さんを中心に年間100件以上のCARTを行っております。
    CARTについて詳しくご覧になりたい場合にはhttp://www.cart-info.jpをご覧ください。

    緩和医療

     病気の進行、再発・再燃時には治癒を目指すことは困難で、長期にわたって腫瘍の増殖を押さえ共存していくことが目標になることがあります。患者さんの生活の質をできるだけ落とさないよう配慮することで長期間の治療の継続が可能になります。当科では患者さんの病状や体調に応じて抗がん剤投与、手術、放射線治療を多面的に組み合わせて腫瘍の進行を押さえます。参加が可能な場合には新薬の開発治験をご紹介させていただくこともあります。いずれにしても患者さんのご希望に可能な限り沿えるように配慮していきます。

     病状や体調の悪化により治療の継続が患者さんのメリットにならないと判断される場合にはこちらから積極的な抗がん治療の継続をお勧めしないことがあります。治療のどの段階においても婦人科だけでなく院内の緩和ケアチームにも適宜相談し、症状緩和に最善を尽くします。ご自宅近くの病院で緩和医療を受ける必要が生じた際には対応していただける医療機関を責任もってご紹介させていただきます。

    診療実績(2022年9月更新)

     以下に最近の診療実績を紹介します。子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんはいずれも近年は一定して多くの患者さんに受診していただいており、婦人科がんの新規患者数は全国的にみても上位5施設にランクされています。手術数においても年間約700件にのぼり院内で最も多い診療科となっています。なお、抗がん剤治療数も著明に増加し、一部、腫瘍内科にお願いする場合もありますが、原則すべて婦人科で行っています。

    過去4年悪性腫瘍新規治療患者数(上皮内がん、境界悪性腫瘍、再発患者を除く)

      2017 2018 2019 2020 2021
    子宮頸がん 130 129 124 130 133
    子宮体がん 136 149 154 145 135
    卵巣がん 78 101 77 78 89
    その他 10 5 11 5 7
    354 384 366 358 364

    手術件数の推移

      2017 2018 2019 2020 2021
    総手術件数 693 721 700 737 707
    腹腔鏡下手術 85 165 151 176 152
    ロボット支援下手術 0 13 9 28 41
    鏡視下手術 合計 85 178 162 204 193

    (集計は年度ごと)

    術式の内訳

      2017 2018 2019 2020 2021
    円錐切除術(CIN3以上) 174 186 171 185 168
    子宮頸がん手術 単純子宮全摘 12 5 6 5 3
    準広汎子宮全摘 6 8 6 8 2
    広汎子宮全摘 60 48 54 57 46
    腹腔鏡下手術 6 18 18 23 23
    子宮体がん手術 開腹手術 71 84 79 79 64
    腹腔鏡下手術 52 56 53 56 36
    ロボット支援下手術 0 10 12 12 27
    卵巣がん手術 根治手術 69 100 80 77 81
    審査腹腔鏡 11 9 16 16 24
    妊孕能温存手術 6 4 6 4 5
    その他の悪性腫瘍手術 6 2 5 3 1
    悪性手術件数 473 530 506 525 480

    放射線治療件数の推移

      2017 2018 2019 2020 2021
    根治照射(子宮頸がん) CCRT 33 35 31 34 42
    RT単独 11 11 15 12 11
    術後照射(子宮頸がん) CCRT 10 13 8 9 9
    RT単独 1 2 2 4 3
    緩和照射(全ての婦人科がん) 6 20 15 31 16

    化学療法患者数の推移

      2017 2018 2019 2020 2021
    卵巣癌 術前化学療法 24 26 25 22 27
    術後化学療法 62 82 66 68 42
    再発がん 9 13 24 43 34
    子宮体癌 術後化学療法 47 61 55 48 47
    進行または再発がん 15 11 25 28 28
    子宮頸癌 術前化学療法 25 18 12 20 10
    進行または再発がん 26 43 42 52 44

    1. 子宮頸がん

    進行期別生存曲線(2007年~2016年治療例)

    進行期別患者数の推移(CIN3、上皮内がんを含む)

    進行期 2017 2018 2019 2020 2021
    CIN3 187 173 180 179 173
    Ⅰ期 65 64 63 54 64
    ⅠA1 9 6 8 9 7
    ⅠA2 2 3 2 1 2
    ⅠB1 42 37 44 35 39
    ⅠB2 12 18 9 9 16
    Ⅱ期 37 33 30 41 26
    ⅡA 5 8 5 12 6
    ⅡB 32 25 25 29 20
    Ⅲ期 19 18 17 19 19
    ⅢA 5 3 3 3 1
    ⅢB 14 15 14 16 18
    Ⅳ期 9 13 14 16 24
    ⅣA 3 3 3 4 8
    ⅣB 6 10 11 1 16

    2. 子宮体がん

    進行期別生存曲線(2007年~2016年治療例)

    進行期別患者数の推移

    進行期 2017 2018 2019 2020 2021
    Ⅰ期 91 94 104 103 92
    ⅠA 27 21 23 16 12
    ⅠB 46 51 60 59 63
    ⅠC 18 22 21 28 17
    Ⅱ期 7 11 10 7 8
    ⅡA 2 3 4 1 0
    ⅡB 5 8 6 6 8
    Ⅲ期 36 29 27 23 24
    ⅢA 14 10 13 11 9
    ⅢB 13 3 3 0 1
    ⅢC 9 16 11 12 17
    Ⅳ期 12 10 13 12 17
    ⅣA 1 1 0 0 1
    ⅣB 11 9 13 12 16

    3. 卵巣がん・卵管がん・腹膜がん

    進行期別生存曲線(2007年~2016年治療例)

    進行期別患者数の推移(境界悪性を含む)

    進行期 2017 2018 2019 2020 2021
    境界悪性 20 17 14 10 18
    卵巣癌Ⅰ期 20 25 19 20 18
    Ⅱ期 7 8 1 6 7
    Ⅲ期 22 21 23 21 18
    Ⅳ期 14 27 19 15 18
    卵管癌 2 1 4 2 4
    腹膜癌 11 10 11 7 11

    臨床研究について

      当科では最新の治療をみなさまに提供することを目的として「臨床研究」を積極的に行なっています。「臨床研究」とは人を対象として行われる医学研究全般のことをいいます。現在行われている治療法の改善点を検証すること、疾病の原因や病態生理を解明すること、患者さんの生活の質向上のための方法を探索することなどを目的に行われ、すでに治療が終了した患者さんの情報を振り返って調査する研究と新たに治療を開始する患者さんを対象とするものの双方を含みます。「臨床試験」は「臨床研究」の中で、特に新たに治療を開始する患者さんを対象に新しく考案された治療法や新しい薬が病気に対して有効かどうか、安全かどうかを実際に患者さんに協力していただいて調査する研究をいいます。さらに「臨床試験」の中で新規治療の保険承認を目的として行われる研究を「開発治験」と呼んでいます。
     現在、日本および世界の婦人科がんの研究グループと協力し、多数の臨床試験を行っています。当科で治療を受けられる患者さんに疾患に対する現在の標準治療を提示すると同時に新薬の開発治験を含む臨床試験に参加していただくよう提案をさせていただくことがあります。説明をよくお聞きになった上で、患者さんご自身が納得できる治療を選択できるようしっかりサポートさせていただきます。
     ご不明な点がございましたら、遠慮なく担当医にお尋ね下さい。

     当科が参加している臨床試験グループは次の通りです。
    日本臨床腫瘍研究グループ (略称:JCOG)  http://www.jcog.jp
     国立がん研究センター研究開発費(旧がん研究助成金)研究班を中心とする共同研究グループで、国立がん研究センター研究支援センターが研究を直接支援する研究班の集合体です。がんに対する標準治療の確立と進歩を目的として様々な研究活動(多施設共同臨床試験)を行っています。
    婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構 (略称;JGOG) http://www.jgog.gr.jp/
     230施設以上で構成される国内最大の婦人科がんの臨床試験グループです。国内の主な施設はほとんどが参加しています。
    北関東婦人科がん臨床試験機構 (略称;GOTIC) http://www.gotic.jp/
     北関東地区を中心とした婦人科がんを治療する拠点病院で構成される臨床試験グループで、多くの国際共同試験を行っています。主な参加施設は当院のほかに愛媛大学、鹿児島大学、国立がん研究センター中央病院、群馬県立がんセンター、群馬大学、埼玉医科大学国際医療センター、埼玉医科大学総合医療センター、自治医科大学、筑波大学、独協医科大学、防衛医大などです。
    三海婦人科がん研究グループ (略称;SGSG) http://www.sgsg.biz/
     中四国地方の病院を中心とした35施設からなる臨床試験グループです。主な参加施設は当院のほかに愛媛大学、岡山大学、四国がんセンター、島根医科大学、徳島大学、鳥取大学、姫路赤十字病院、広島市民病院、広島大学、山口大学などです。

    現在実施中の臨床研究・臨床試験

    現在参加可能、あるいは近日中に登録開始予定の主な臨床試験は次の通りです。

    1.子宮頸がん
    対象疾患 試験名 試験形態
    (運営組織)
    子宮頸癌
    Ⅰb2-Ⅳa期
    (同時放射線化学療法併用療法後)
    局所進行子宮頸癌根治放射線療法施術に対するUFTによる補助化学療法のランダム化第Ⅲ相比較試験(LUFT試験/GOTIC-002)登録終了 国内多施設共同
    第Ⅲ相比較試験(婦人科がん臨床試験コンソーシアム GOTIC)
    子宮頸部異形成
    子宮頸癌
    思春期女性へのHPVワクチン公費助成開始後における子宮頸癌のHPV16/18陽性割合の推移に関する長期疫学研究(MINT study Ⅱ)(第Ⅱ期;2019年1月ー2026年12月) 国内多施設共同
    長期疫学研究(筑波大学、公益財団法人国際科学振興財団)
    腫瘍径2cm以下の
    子宮頸癌IB1期
    腫瘍径2cm以下の子宮頸癌IB1期に対する準広汎子宮全摘術の非ランダム化検証的試験(JCOG1101試験)登録終了 国内多施設共同
    検証的試験(日本臨床腫瘍研究グループ JCOG)
    子宮頸癌 HPV関連子宮頸癌とフィラグリン遺伝子変異との関連性の検討
    本研究は子宮頸癌の診断のもと当センター婦人科で実施された手術標本または生検標本を用いて実施されます。研究に参加を拒否される方はご遠慮なくお申し出ください。それにより診療上の不利益を被ることは全くありません。
    院内試験
    観察研究
    (兵庫県立がんセンター)
    子宮頸癌 転移性(IVB期)、残存、又は再発性の子宮頸癌患者を対象に、プラチナ製剤とパクリタキセルを含む化学療法にベバシズマブ、アテゾリズマブとの併用と、プラチナ製剤とパクリタキセルを含む化学療法とベバシズマブとの併用を比較する多施設共同ランダム化第Ⅲ相試験(BEATcc試験) 登録終了 国際多施設共同
    第Ⅲ相試験(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)
    子宮頸癌
    Ⅰa-Ⅲb期の治療後
    初発子宮頸がん患者を対象とした治療後のセクシュアリティの変化に関する前向きコホート研究(JGOG 9004) 国内多施設共同
    コホート研究(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)
    子宮頸癌
    (閉経後骨粗鬆症女性)
    選択的エストロゲン受容体モジュレーターによる放射線治療後の骨盤骨折予防の前向きコホート研究(Frap-SERM)登録終了 院内試験
    コホート研究
    早期子宮頸癌 早期子宮頸癌に対する新術式腹腔鏡下広汎子宮全摘術(new-Japanese LRH)の非ランダム化検証試験(JGOG1087) 国内多施設共同
    非ランダム化検証試験(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)
    子宮頸癌(放射線治療後) 選択的エストロゲン受容体モジュレーターによる放射線治療後の骨盤骨折予防の多施設共同前向きコホート研究(Frap-SERM) 国内多施設共同
    前向きコホート研究(岡山大学)
    再発進行子宮頸癌 プラチナ製剤併用化学療法に抵抗性の再発進行
    子宮頸癌に対するセミプリマブ単剤療法の安全性と治療効果に関する前向き観察研究(CEMI-PLUS)
    院内研究(兵庫県立がんセンター)
    2.子宮体がん
    対象疾患 試験名 試験形態
    (運営組織)
    子宮体癌 リンパ節転移リスクを有する子宮体癌に対する傍大動脈リンパ節郭清の 治療的意義に関するランダム化第Ⅲ相試験(JCOG1412試験) 国内多施設共同
    第Ⅲ相試験(日本臨床腫瘍研究グループ JCOG)
    子宮体癌、子宮内膜異型増殖症 子宮体癌/子宮内膜増殖症に対する妊孕性温存治療後の子宮内再発に対する反復高用量黄体ホルモン療法に関する第Ⅱ相試験(JGOG2051試験) 第Ⅱ相試験(婦人科悪性腫瘍研究グループ JGOG)
    3.卵巣がん、卵管がん、腹膜がん
    対象疾患 試験名 試験形態
    (運営組織)
    卵巣明細胞腺癌IA期
    他の組織型の上皮性卵巣癌IC期(片側性)グレード1/2
    上皮性卵巣癌の妊孕性温存治療の対象拡大のための非ランダム化検証的試験(JCOG1203試験)
    登録終了
    国内多施設共同
    コホート研究(日本臨床腫瘍研究グループ JCOG)
    卵巣明細胞癌 TFPI2(tissue factor pathway inhibitor-2)の卵巣明細胞癌特異的新規腫瘍マーカーとしての有用性に関する多施設共同研究登録終了 国内企業研究
    開発研究(東ソー)
    上皮性卵巣癌
    Ⅰ期
    ステージング手術が行われた上皮性卵巣癌Ⅰ期に おける補助化学療法の必要性に関する ランダム化第Ⅲ相比較試験(JGOG3020試験) 国内多施設共同
    第Ⅲ相試験(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構 JGOG)
    上皮性卵巣癌、卵管癌、腹膜癌 PAOLA-1試験(オラパリブ+ベバシツマブ併用維持療法の第Ⅲ相試験)登録終了 国際多施設共同
    第Ⅲ相試験(婦人科がん臨床試験コンソーシアム GOTIC)
    卵管癌明細胞癌 卵管癌明細胞癌特異的新規腫瘍マーカーの後ろ向きコホート研究(TFP12after試験)
    詳細はこちら
    国内企業研究
    開発研究(東ソー)
    卵管癌、卵管癌、腹膜癌 BRCA関連バイオマーカー(Mutational Signature-based Biomarker: MSBM)の探索研究(東大MSBM試験)登録終了 国内多施設共同
    探索研究(東京大学)
    高異形度卵巣癌 総合型ゲノム解析によるトランスレーショナルリサーチを用いた、高異形度卵巣癌患者を対象としたオラパリブ維持療法に関する多施設共同第Ⅱ相臨床試験(オラパリブ第Ⅱ期試験) 国内多施設共同
    第Ⅱ相試験(東京大学)
    高異形度卵巣癌 総合型ゲノム解析によるトランスレーショナルリサーチを用いた、高異形度卵巣癌患者を対象としたオラパリブ維持療法に関する多施設共同第Ⅱ相臨床試験(オラパリブ第Ⅱ期試験) 国内多施設共同
    第Ⅱ相試験(東京大学)
    再発卵巣癌(卵管癌、原発性腹膜癌を含む) 再発卵巣癌に対するニラパリブの安全性と有効性を検討する観察研究(JGOG3031) 国内多施設共同
    観察研究(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)
    卵巣がん 卵巣癌初回治療後のオラパリブおよびベバシズマブ併用維持療法の安全性と有効性を検討する観察研究(JGOG3030) 国内多施設共同
    前向きコホート研究(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構 JGOG)
    4.その他
    対象疾患 試験名 試験形態
    (運営組織)
    子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 婦人科悪性腫瘍患者の静脈血栓症に関する多施設共同前向き登録研究および単群検証的臨床試験(GOTIC-VTE・GOTIC-015試験)登録終了 国内多施設共同
    前向き登録研究(婦人科がん臨床試験コンソーシアム GOTIC)
    子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 兵庫県立がんセンター婦人科受診者を対象とした研究基盤としての血液および組織バンキング
    詳細はこちら
    院内研究(兵庫県立がんセンター)
    進行子宮体がん
    進行卵巣がん
    進行子宮頸がん
    アジアの特定の進行固形癌における高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)又はDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)の割合
    詳細はこちら
    国内企業研究(MSD)

    実施中の開発治験については以下を参照ください。

    治験・製造販売後臨床試験情報

    兵庫県立がんセンターで実施されている治験・製造販売後臨床試験一覧からご確認いただけます。

    ※臨床試験への参加をご希望された場合でも以前に受けられた治療内容や病状、検査結果によっては参加できない場合もあります。詳しくは担当医または各試験の問い合わせ担当者にお尋ねください。

    最後に

     当科のホームページをご覧いただきありがとうございます。当科の診療内容について最新の情報を広く理解していただけるようできるだけ分かりやすい記載を心がけています。ご質問、ご意見等がありましたら管理責任者(山口聡)までお知らせください。

    2023年1月