
- ■ はじめに
- 頭頸部癌、なかでもとりわけ咽頭癌や喉頭癌などは喫煙や飲酒との関連が深く、同様に関連が深い食道癌や口腔癌などを同時あるいは時期を前後して発症することが比較的多く見受けられます。早期がんに対しては放射線療法を主体に治療を行っていますが、異時性重複癌の治療に際して照射の既往が大きな妨げになることもあるため、適応や治療歴の有無の確認と同時に将来的な見通しをたてることが重要となります。進行がんに対しては手術療法を中心とした放射線療法と化学療法を組み合わせた集学的治療を行っています。近年は導入化学療法の治療効果判定による後治療の振り分け、一部の進行がんに対する根治を目的とした同時併用化学放射線療法の導入、音声保存を目的とした喉頭温存手術、超進行甲状腺がんに対する気管合併切除後の再建の工夫などにより、根治性を損なわない範囲で組織および機能の温存をはかるように努めており、さらに精度を向上させるべく検討しています。悪性腫瘍摘出後の欠損部の再建には、機能、整容を考慮して形成外科とともに前腕皮弁、前外側大腿皮弁、腹直筋皮弁、肩甲骨皮弁、遊離空腸などの血管吻合を用いた再建術を年間三十〜五十数例に行っている。
- ■当科の診療範囲
- 鼻副鼻腔癌、口腔癌、喉頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、頸部食道癌、唾液腺癌(耳下腺・顎下腺)、甲状腺癌、その他頸部の悪性疾患
- ■標準治療について
- 頻度の高い治療を呈示するが、詳細は症例によって異なる。視覚・音声機能温存を強く希望する場合には、それを優先する。
- 上顎癌
- 術前照射 40Gy/20Fr (with daily low dose platinum)
T1-2 拡大デンケル手術
T3-4 上顎全摘、上顎拡大全摘
術後照射 20-30Gy/10-15Fr
- 口腔癌
- 摘出手術が原則。
T2以上 頸部郭清術(予防・根治)を行った上で一塊切除し、再建。
その他、化学放射線療法。
- 喉頭癌(声門癌)
- T1a 2Gy×1回/日 計66Gy
T1b 1.2Gy×2回/日(2.4Gy/日) 計74.4Gy
T2 1.2Gy×2回/日(2.4Gy/日) + daily low dose platinum 計74.4Gy
T3 手術(喉摘)
T4 手術(喉摘)
喉頭温存手術(部分切除、亜全摘)や下咽頭癌に準じた化学放射線療法を考慮。
- 喉頭癌(声門上癌、声門下癌)
- T1 2Gy×1回/日 計66Gy
T2 1.2Gy×2回/日(2.4Gy/日) + daily low dose platinum 計74.4Gy
T3 手術(喉摘)
T4 手術(喉摘)
喉頭温存手術(部分切除、亜全摘)や下咽頭癌に準じた化学放射線療法を考慮。
声門下癌では手術を優先的して治療を計画。
- 中咽頭癌・下咽頭癌
- 導入化学療法:CDDP 80mg/m2 day1 + 5FU 1000mg/body day1-5
同時併用化学放射線療法:1.8Gy×1回/日 計70Gy(原発巣、転移リンパ節)
T1-2 同時併用化学放射線療法が中心。頸部郭清(予防・根治)を行った上で一塊切除し、再建。
T3-4 頸部郭清術(予防・根治)を行った上で一塊切除し、再建。同時併用化学放射線療法。
N2-3 同時併用化学放射線療法後に計画的頸部郭清(Planned Neck Dissection:PND)。
- 頸部食道癌
- 摘出手術(咽喉食摘)が原則。条件が整えば喉頭温存。
その他、化学放射線療法。
- 唾液腺癌(耳下腺・顎下腺)
- 摘出手術。直接浸潤がなければ顔面神経は極力温存する。
術後放射線治療を追加することがある。
- 甲状腺癌
- 摘出手術。明らかな腫瘍が無い場合、全摘せずに一側葉を温存することもまれではない。甲状腺全摘時、上皮小体(副甲状腺)は可能な限り温存する。
- その他頸部の悪性疾患
- 悪性神経鞘腫、䚡性癌など。摘出手術が原則。術後放射線治療を追加することがある。
- ■ 治療成績について
- 疾患特異的5年生存率(1995年9月~2002年8月)
| 声門上癌 73.5%(n=33) |
| 声門癌 80.0%(n=162) |
| 声門下癌 40.0%(n=5) |
| 中咽頭癌 56.2%(n=58) |
| 下咽頭癌 43.6%(n=74) |
| 甲状腺癌 92.6%(n=81) |
2008年11月