第13回 GLSについて
代表的な疾患とそれに関係する検査を、経験豊かな臨床検査技師「ケンさん」と高校生「リンちゃん」との対話形式で紹介していきます。


リンちゃん:
こんにちは、ケンさん。今日は心エコー検査のお話でしたよね。
第8回「腫瘍循環器」で勉強したなと思って、今回は復習しました。がんの治療で心臓にダメージが起きても、早く見つけて対処すれば抗がん剤の治療を続けることができるから定期的に心電図や心エコー検査をするって書いてありました。
ケンさん:
こんにちは、リンちゃん。復習してくれてありがとう。
そうなんだ。心エコーは心臓の大きさを測ったり、動きがわるくなっていないか、弁が傷んでいないかなど様々な項目をチェックするんだったよね。それに加えて当院では、がん薬物療法のダメージが心臓に起きていないかをみるためにGLSって項目を測定することが多いよ。
リンちゃん:
GLS?
ケンさん:
Global Longitudinal Strainの略だよ。心臓から全身に血液を送り出す部屋を左室って言うんだけど、この左室の収縮する機能の指標の一つだよ。指標には、LVEF(Left Ventricular Ejection Fraction:左室駆出率)っていう項目も測定しているけどGLSは、LVEFよりも鋭敏な指標なので早期の収縮の低下を検出できるといわれているんだ。
リンちゃん:
GLSは、どうやって測定しているんですか?
ケンさん:
エコーの機械で左室心尖部から動画の3断面を記録して、解析をする。そうすると左室の長軸方向のストレイン、簡単に言うと左室の縦方向の動きを表した数値が出てくるよ。この数値を抗がん剤の治療前と、治療中や治療後と比較することで心臓の働きが低下していないか、専門の言葉だと、がん治療関連心機能障害(=CTRCD : Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction)が無いかをみているよ。
図1:GLS計測画面
リンちゃん:
GLSの基準値はどれぐらいですか?
ケンさん:
心エコー図検査の手引き(※)には18%が正常下限、16-18%が境界域、16%未満は高リスクと載っているよ。高リスクっていうのはCTRCDを起こしやすいから注意が必要ってことだよ。
リンちゃん:
LVEFの基準値は?
ケンさん:
当院では50%としているよ。
リンちゃん:
がん治療開始前と比べて、どれぐらい変化があると心臓の働きが低下していると考えるんですか?
ケンさん:
いい質問だね! 心エコー図学会発行の手引き(※)だとCTRCDの定義は「LVEFが治療前と比較して10%を超えて低下しかつ50%未満」「GLSが相対的に15%以上の低下」とされているよ。
相対的というのは、単純に前後の差ではなく下記の式で計算するよ。
例えば、がん治療開始前GLS値25%、今回21%だとしたら、計算した値は16%となり心臓の働きが低下していると考えられるよ。
リンちゃん:
単に開始前25%から今回の値21%を引き算した4%ではないんですね。
ケンさん:
そうなんだよ。間違わないように医師への報告書を作成するときには開始前と今回の値を入力すれば自動で計算されるよう設定しているよ。
一般社団法人 日本心エコー図学会のガイドラインページから見ることができるよ。
リンちゃん:
がんセンターだから、心臓に影響のある抗がん剤使用中の患者さんだけGLSを測定しているんですか?
ケンさん:
心臓に影響のある抗がん剤使用中の患者さんだけでなく、縦隔、左胸部への放射線治療歴のある患者さん、多発性骨髄腫や左室肥大の患者さんにも測定するよ。また医師からの依頼だけでなく、検査をしている技師が必要と思ったら積極的に測定しているよ。
リンちゃん:
いろいろな患者さんに測定するんですね。
ケンさん:
そうなんだ。またGLSだけでなく、他の心エコー所見に関しても重篤な所見があれば迅速な診断や治療につながるよう技師は積極的にコミュニケーションをとるようにしているよ。
リンちゃん:
コミュニケーション?どのようにですか?
ケンさん:
当院の生理検査室は腫瘍循環器科外来のすぐ隣にあるんだ。GLS低下以外にも心臓の機能が低下している場合で早めに対応が必要な時などは、すぐに医師に報告しているよ。また医師からの情報提供やアドバイスもあり相互にコミュニケーションをとることができるよ。このことが素早い対応につながるんだよ。
リンちゃん:
連携して診断や治療がおこなわれているのは患者さんも安心ですね。またGLSが、どのように活かされているのかも知ることができました。ありがとうございました。また次のお話も楽しみにしています!
当院の心臓超音波検査装置
