第6回 尿検査からがんへのアプローチ
代表的な疾患とそれに関係する検査を、経験豊かな臨床検査技師「ケンさん」と高校生「リンちゃん」との対話形式で紹介していきます。
リンちゃん:
こんにちは、ケンさん。この前、尿検査をしました。尿検査で何がわかるのか教えてもらえますか?
ケンさん:
こんにちは、リンちゃん。リンちゃんは尿がどのように作られるか知っているかな?
尿は血液から作られるんだよ。腎臓に入った血液はろ過され、必要なものは再吸収され、そのあとの老廃物が尿として排泄されるんだ。人は一日約1.5リットルの尿を排泄しているんだよ。リンちゃんは日頃尿を気にしたことがあるかな?
リンちゃん:
あまり気にしたことはないですけど・・
ケンさん:
尿の量・回数、色、においなどがいつもと違うと感じたことはないかな?
残尿感や排尿痛があったり、尿の色が赤かったり普段見ないような色だった時などに尿検査をするんだよ。
リンさん:
どんな検査をするのですか?
ケンさん:
尿検査には尿の成分を調べる性状検査と、尿に排泄される細胞を調べる尿沈渣・尿細胞診、尿にばい菌がいないか調べる尿培養検査などがあるんだ。
性状検査は試薬をしみ込ませた試験紙で調べる定性検査と、血液と同じように尿中に含まれる量を調べる定量検査があるんだ。
尿沈渣と尿細胞診は顕微鏡を使って調べる検査なんだ。
定性検査では次の検査項目が調べられるんだよ。
【定性検査】 | |
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ウロビリノーゲン | 肝臓や胆道の障害によりみられます |
潜血 | 腎臓から尿道までに病気があると尿に血液がみられます |
蛋白 | 腎臓や膀胱などの障害によって尿中に排泄されます |
ブドウ糖 | 糖代謝異常によって血糖値が上がった場合にみられます |
ケトン体 | 飢餓や糖尿病の悪化、嘔吐、下痢、高熱などでみられます |
亜硝酸塩 | 尿中の細菌の有無がわかります |
比重 | 水分の摂取量、食事成分、運動負荷などの影響を受けます |
白血球 | 尿路の感染の有無がわかります |
pH | 体のバランスを保つ機能がわかります |
ビリルビン | 胆汁の排泄が障害されると尿中に出てきます |
リンちゃん:
これらの検査で陽性に出たら異常があるということですか?
ケンさん:
全て異常と言うわけではないんだよ。正常な人でも陽性に出ることがあるんだ。たとえば、尿蛋白は起立した時や激しい運動をしたときに陽性になることがあるよ。ブドウ糖は血糖値が高くなくても腎臓の働きが良くないときには、尿中に出ることがあって陽性になるんだ。だから他の検査をして総合的に診断しているんだよ。
リンちゃん:
尿検査をするときに気をつけることはありますか?
ケンさん:
そうだね、気をつけることは次のことかな。
・検査前日は、ビタミン剤やビタミンCが入っているかぜ薬、ドリンク剤などをとらないこと。正しい検査結果が出ないことがあるんだ。
・尿を採る時は、出始めの尿は捨てて中間尿を採るようにすること。出始めの尿には細菌が混じることがあるからなんだ。
・尿検査の結果を正しく判断するために、問診には正直に答えて欲しいんだ。
リンちゃん:
はい、そうします。尿検査についてだいぶわかりました。
尿沈渣では、どんな事がわかりますか?
ケンさん:
尿中には腎臓、尿管、膀胱などの細胞成分が含まれているから、新鮮な尿を遠心分離して、その沈渣を顕微鏡で調べると、尿中の細胞成分や細菌、結晶などが、どのくらいあるかがわかるんだ。 その結果、腎臓の働きが正常かどうか、膀胱、尿管、尿道の炎症や出血等の異常や悪性腫瘍が見つかる事があるんだ。尿沈渣で悪性が疑われる異型細胞が見つかると細胞診検査、超音波検査、画像検査(CT,MRI)、膀胱鏡検査などが行われ、さらにくわしく調べていくんだよ。
尿沈渣 細胞診
リンちゃん:
尿沈渣も大切な検査ですね。
ケンさん:
そうなんだ、尿定性・沈渣は初期のスクリーニング検査として健康診断や初診時に実施され、次の段階の検査として尿細胞診や尿定量検査を実施するんだよ。
リンちゃん:
尿検査でいろいろな事がわかって、尿沈渣がきっかけでがんが見つかることもあるんですね。勉強になりました。ありがとうございました。