第2回 白血病
代表的な疾患とそれに関係する検査を、経験豊かな臨床検査技師「ケンさん」と高校生「リンちゃん」との対話形式で紹介していきます。
リンちゃん:
こんにちは、ケンさん。今回は白血病の検査について教えてくださるのですね。
ケンさん:
やあ、リンちゃん。
こんにちは。まずは簡単に白血病について説明しよう。
白血病は、血液の細胞の元になる造血幹細胞や成熟段階の細胞が腫瘍化し、その子孫にあたる白血病細胞が増殖する病態と考えられているんだ。 骨髄は骨の中心で血液の細胞を作っているところで、その骨髄で白血病細胞が異常に増殖し、正常な血液細胞が産生できなくなって、貧血や出血傾向、感染症などの症状が出現する疾患なんだ。
白血病は、がん化した細胞が急速に増殖する「急性」とがん化した細胞がゆっくりと増殖する「慢性」に分けられるんだよ。(表1)
また、病型の詳細な分類にはFAB分類やWHO分類が利用されているんだよ。(表2、表3)
リンちゃん:
映画とかでみる白血病って不治の病っていうイメージですけど・・・。治りますか?
ケンさん:
白血病は治療しなければ、やがて死に至る恐ろしい病気だよ。だけど、化学療法や骨髄移植で治ることも多くなっているんだ。
リンさん:
医学は日進月歩ですね、少し安心しました。
ケンさん:
次は、白血病の検査について説明するよ。白血病の主な検査は血液検査と骨髄検査だよ。 白血病が疑われたとき、まずは血液検査をするんだよ。
通常の採血で腕から採った血液を末梢血というんだけど、その末梢血を機械を使って白血球数・赤血球数・血小板数などを測定するよ。多くの白血病ではこれらの細胞数が異常値となるんだ。
次に顕微鏡を使って末梢血中に含まれている細胞の数や種類を分類するよ。特に注意深く観察するのは「芽球」と呼ばれる細胞なんだ。芽球は健康な人の骨髄の中では存在するけど、末梢血では出現しない幼若細胞のことだよ。 白血病細胞は一見芽球と同じ形態をしていて、末梢血に芽球が出現すると白血病の可能性があるんだ。 これを見落とすと白血病が進行してしまうから、私たち臨床検査技師は細心の注意を払って検査しているよ。それでは、末梢血の顕微鏡写真を見てみよう。
全体にたくさんあってピンク色の丸くて小さいのが赤血球で、数は少なくて紫色に染まっている大きいのが白血球だよ。
リンちゃん:
うわー!白血球ってひと言で言ってもいろいろな形をしているんですね。
ケンさん:
そうなんだよ。末梢血から標本を作製したら、これらの白血球を分類してカウントするんだけど、同時に赤血球や血小板の形も見るし、芽球のような異常細胞が出現していないか注意深く観察するんだ。
リンちゃん:
ケンさんたち臨床検査技師の責任はとても重大ですね。
ケンさん:
そうだね。その分やりがいも大きいんだよ。
血液検査で異常があれば、次は骨髄検査をするんだ。白血病細胞は骨髄の中で増えることが多いから、骨髄検査は白血病かどうかを決めるために一番大切な検査なんだ。 医師が採取した骨髄液で検査技師が標本を作製し、顕微鏡を使って細胞を分類してカウントするんだ。それでは、骨髄の顕微鏡写真を見てみよう。
正常な骨髄
正常な骨髄にはいろいろな役割を持った種々の血液細胞が存在しているよ。ここで成熟した細胞が末梢血に出現し、感染防御など大切な役割を果たしているんだ。
リンちゃん:
さっきの末梢血よりも、もっといろいろな細胞がありますね。
ケンさん:
そうなんだ。次は、白血病細胞が増加した骨髄を見てみよう。
白血病細胞が増加した骨髄
同じような形態をした白血病細胞が骨髄を占拠しているだろう。白血病細胞は『成熟しない役立たずの細胞』で勝手気ままに増殖するんだ。 こんな状態では正常な血液細胞の産生がされなくなって、白血球減少による感染症、赤血球減少による貧血、血小板減少による出血など種々の症状が現れるんだ。
リンちゃん:
骨髄検査では、こんなふうに白血病細胞が増えているのが見えるんですね。
ケンさん:
白血病の検査についてなんとなく理解できたかな?今日は白血病の検査の基本について説明したけど、白血病の検査には他にもたくさんあるんだ。(表4)
リンちゃん:
はい、白血病やその検査のことが少しわかりました、ほかの白血病の検査についても知りたくなりました。
ケンさん:
また機会があれば説明するね。
リンちゃん:
はい、お願いします。今日はありがとうございました。