兵庫県立がんセンターTIMES

がんセンタータイムズ

第1回 乳がん

代表的な疾患とそれに関係する検査を、経験豊かな臨床検査技師「ケンさん」と高校生「リンちゃん」との対話形式で紹介していきます。

    

リンちゃん:

こんにちは、今日は乳がんの検査についてお話してくださる約束でしたよね。

ケンさん:

やあ、リンちゃん。
まずは、乳がんの診断のためにどんな検査があるか説明するね。診療室では、医師により問診・視診・触診が行われるし、放射線部で撮影するマンモグラフィといわれる乳房X線検査、超音波検査などの画像による検査があるんだよ。
そして、検査部では採取された細胞や組織を顕微鏡で観察し診断することで、がんなのか、または他の良性の疾患なのか区別するんだよ

リンちゃん:

重要なお仕事ですね。

ケンさん:

そうだね。では、検査部で行っている乳がんの検査の主なものをもう少し詳しく説明するよ。

リンさん:

お願いします。

ケンさん:

がんかどうか診断するための検査としては、細胞診検査と病理組織診検査があるよ。
まず、細胞診検査について紹介するね。細胞診検査は、しこり(腫瘤)に針を刺して吸引したり、乳頭分泌物を直接採取して、細胞をスライドガラスに吹き付けることで標本を作製し、それを染色して顕微鏡で観察する検査なんだ。細胞の形をみて診断を行うんだよ。実際に顕微鏡写真を見てみよう

リンちゃん:

はい、よろしくお願いします。

ケンさん:

がんかどうか診断するための検査としては、細胞診検査と病理組織診検査があるよ。
まず、細胞診検査について紹介するね。細胞診検査は、しこり(腫瘤)に針を刺して吸引したり、乳頭分泌物を直接採取して、細胞をスライドガラスに吹き付けることで標本を作製し、それを染色して顕微鏡で観察する検査なんだ。細胞の形をみて診断を行うんだよ。実際に顕微鏡写真を見てみよう。

ケンさん:

 

   線維腺腫(良性)        乳がん

良性のものは、細胞がきれいに並んでいて、核が同じように見えるだろ。乳がんは、細胞がバラバラに並んでいて、核の大きさもまちまちなんだ。
次に病理組織診検査は、生検などで採取した組織や手術で取り除いた臓器の中に、がんがあるかどうか、どんな種類のがんなのか、どこまで広がっているかを調べる検査なんだ。組織を小さく分割して、専用の機械で薄く切ってスライドガラスの上に乗せるんだ。そうして出来上がった標本を染色して顕微鏡で観察し診断するんだ。検査部では標本の作製をしていて、診断は病理の先生がしているんだよ。

リンちゃん:

へぇ~そうなんですね。標本を薄く切るのって大変そう。

ケンさん:

  

組織をパラフィンで固める   ミクロトームで薄く切る    染色標本を顕微鏡で観察

組織をパラフィン(蝋)に入れて固めてからミクロトームっていう専用の機械を使って薄く切るんだ。技術と経験が必要だね。

ケンさん:

 

  HER2染色(×400)      HER2 FISH法

他にも病理組織診検査ではER、PgR、HER2という物質を測ることによってホルモン療法や抗がん剤がよく効くタイプの乳がんかどうか判定もしているんだよ。免疫組織化学染色法(IHC法)といってER、PgR、HER2に特異的に結合する抗体を使って標本を染色して顕微鏡で染まり方の程度を判定するんだ。染まり方の強さによってER、PgRはScore0,1,2,3a,3b、HER2は0,1+,2+,3+と判定して、HER2が2+の場合には、蛍光色素を標本中のHER2遺伝子に直接結合させるFISH法(フィッシュ:fluorescence in situ hybridization)で光っている遺伝子の数を数えて陽性か陰性を判定するんだ。

また最近では、PD-L1という物質を測定して免疫チェックポイント阻害剤が効くかどうかの判定もしていて、病理組織診検査はがんの診断だけじゃなく、たくさんの治療薬の効果を予測する役割も果たしているんだよ。

リンちゃん:

前もって薬が効きそうかどうかわかるってすごいですね!!

ケンさん:

そうすることで、自分に合った治療薬を選択できるからね。最近では、病理組織診検査で作製した標本を使って遺伝子検査(OncotypeDXやCurebest95)をすることでも治療薬の効果予測ができるようになってきているんだ。
そして実際に治療効果があったかどうかについては、血液検査が有用なんだよ。腫瘍マーカーといわれるがん細胞が産生・分泌する物質を測定していて、乳がんの腫瘍マーカーとしては、CEA : carcinoembryonic antigen (5.0未満 ng/mL) やCA15-3 : carbohydrate antigen 15-3 (25未満 U/mL)などがあるんだ。これらの数値の変動をみることで、治療効果の判定や治療経過のモニターができたり、がんの診断をする上でも参考になるんだ。

リンちゃん:

いろんな検査があるんですね。

ケンさん:

そうなんだ。検査部では診断のための検査、手術や化学療法などの治療前・治療中の経過観察のための検査などを行っているんだよ。他にどんな事をしているのか、またの機会に紹介するよ。

リンちゃん:

今日はありがとうございました。

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