形成外科の最新トピックス
形成外科 大﨑健夫医師 インタビュー

今回のインタビューは形成外科の診療状況について、形成外科 大﨑健夫医師にお話を伺いました。
まず、形成外科についてお聞かせください。
形成外科が対応する疾患は、外傷・熱傷、先天奇形、皮膚軟部組織の悪性・良性腫瘍、組織欠損部の再建、美容医療など多岐に渡ります。当センターの形成外科では、がん拠点病院という特性上、悪性腫瘍の切除手術で生じた皮膚や組織の欠損に対して、患者さんの体の他の部位からの組織や人工物を用いて復元する「再建外科手術」が主な診療内容となります。このため、常に様々な外科系診療科と連携しながら手術計画を綿密に協議し、再建方法を決定しますが、機能面はもちろんのこと整容面にもできる限りの配慮を行いながら治療にあたっています。
再建治療について詳しく教えていただけますでしょうか。
再建外科とは、外傷や手術によって欠損した組織を修復し、できるだけ元通りに戻すことを目的とした医学の分野で、形成外科の一領域です。当院はがんセンターですので、がん切除により失われた部位の再建をしています。方法としては主に皮弁という技術を用いて行います。皮弁とは血流のある皮膚・皮下組織や深部組織のことを指し、古くは紀元前5世紀のインドで失われた鼻を頬部の皮弁を用いて再建していた歴史があります。その後長らく皮弁の技術には大きな変化はありませんでしたが、1970年代に遊離皮弁が開発され実用化されることにより飛躍的に進歩し、再建外科は大きく発展しました。遊離皮弁では前腕や下腿、腹部などの組織に血管をつけて採取し、その血管をがん切除で欠損した部位の血管と繋いで移植します。この技法により、様々な部位の欠損を再建することが可能になっています。
再建を行う部位は全身のあらゆるところに及びますが、特に必要となる領域として、舌や咽頭などの頭頸部、四肢や体幹の広範囲欠損、乳がんに対する乳房再建等があります。いずれの再建においても、欠損や傷を治すだけでなく、術後の機能や外観も出来るだけ維持することが重要となります。一例として下顎再建の現況をご紹介します。がんの切除によって下顎骨が切除された場合、術後の機能性と審美性を担保するためには下顎骨を再建する必要があります。その再建法としては、人工のプレート(+軟部組織の皮弁)を用いる方法と自分の骨(腓骨等)を遊離皮弁として移植する方法があります。患者さんの状態に応じて選択することになりますが、腓骨を用いる場合は、下腿から腓骨を直上の皮膚・脂肪と共に血管を付けて採取し、頸動脈の枝の血管と顕微鏡を用いて吻合(ふんごう)します。腓骨をもとの下顎の形に合わせて加工し、プレートで固定します。下顎の再建においては、いかに元の三次元構造と近い形態で再建できるかが重要となります。以前はCT 画像から作成された3Dモデルを参考にしながら、プレートを加工して移植骨を固定するという手法がとられていましたが、精密性には課題がありました。そのため様々な技術開発が行われていますが、2022年にコンピュータ支援製造技術(CAD/CAM)と金属積層造形技術(3Dプリンティング)による下顎再建用の患者適合型体内固定用プレートが開発、発売されました。このプレートは、患者さんの下顎の形態に合わせた形状となっており、より正確な再建が可能となりました。現在当院ではこれらと腓骨移植を組み合わせる手術を行っています。この手術においては、プレートを製造する技術者と、がんを切除する外科医と、再建外科医との三者でweb上でのカンファレンスを行い、プレートの形状を患者さんの状態に応じてカスタムメイドで決定し作成します。こういった手法により、三次元構造の再現性が向上し、術後の機能と整容性が維持され、生活の質の向上につながると考えています。
最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。
月曜日の午前、水曜日と金曜日の午後に外来を開設しております。詳しい診察時間や外来担当医につきましては診療カレンダーをご確認ください。
施設の特性上、他の病院の形成外科を紹介させていただくこともあるかもしれませんが、がんに関わらない形成外科の治療に関しましても、遠慮なくご相談ください。
また、2020年4月より、がん患者さんを対象とした「美容外来」を開設しております。
主に、シミ・シワ・色素沈着に対する塗り薬(トレチノイン/ハイドロキノン)治療とレーザー治療中心に、がんの治療状況を考慮した診療を行っています。
院外から受診をご希望される方は、まずはかかりつけの先生とご相談の上、当センター地域連携室を通じて診療予約をお取り頂き、紹介状(診療情報提供書)をご持参ください。
※「美容外来」を受診される方へ
当センターでの美容外来にかかる診察代や治療費、お薬代等については、全て自己負担(保険適用外)となります。
大﨑医師、ありがとうございました。