消化器内科の最新トピックス
消化器内科 津田政広医師 インタビュー
今回のインタビューは消化器内科の最近の状況について、消化器内科 津田政広医師にお話を伺いました。
まず、診療実績についてお聞かせください。
消化器内科は、消化器領域の悪性腫瘍(食道がん、胃がん、大腸がん、小腸がん、肝がん、胆道がん、すい臓がん、消化器の神経内分泌腫瘍、GIST等)に対する、診断、内科的治療(薬物療法、内視鏡治療、経皮治療、緩和治療)を担当しています。またそれらの疾患病態は多岐にわたるため、科内でのカンファレンスに加え、関連診療科(消化器外科、放射線診断科、放射線治療科)と毎週キャンサーボードを行い、すべての患者さんに診療を提供できる体制を常に整えています。
昨年度の実績は、入院患者数は12,654名、外来患者数は21,103名、消化器内視鏡検査数は6,320件、内視鏡治療数は839件、外来化学療法数は3,718件と、当院で最も多くの患者さんの診療に関わっており、それらを11人のスタッフでがんばっています。さらに各スタッフはサブスペシャルティーを持っており、それぞれの専門分野で日々臨床や研究にも精力的に取り組んでいます。
最近の診療内容はいかがでしょうか?
神経内分泌腫瘍(NEN)に対しルタテラ治療を行っています。神経内分泌腫瘍(NEN)は稀な疾患であり、2010年の本邦の有病患者数は膵が10万人あたり2.69人、消化管が6.42人と報告され、今後も増加していくと考えられています。NENは高分化型神経内分泌腫瘍(NET)と低分化神経内分泌腫瘍(NEC)に分類され、切除不能のNETに対しては主に薬物療法がおこなわれますが、2021年9月から1次治療後のNETの患者さんに対するペプチド受容体照射性核種療法(PRRT)療法(ルタテラ療法)が本邦で施行可能になりました。当院でも2022年6月から消化器内科が主体となり、放射線診断科、放射線治療科をはじめ他部署の協力のもと開始しております。8週間隔で4回の治療で比較的副作用も少なく、従来の治療に比べ高い有効性が期待できる治療です。2024年3月末で6名の患者さんの治療が終了し、4名の患者さんの治療を継続中です。
ルタテラ療法について詳しく教えてください。
NET(高分化型神経内分泌腫瘍)の腫瘍細胞表面には、ソマトスタチン受容体が多く発現しています。ルタテラは、このソマトスタチン受容体が細胞内に取り込まれる性質を利用したお薬です。ソマトスタチンと類似した物質に、β線とγ線という放射線を出す物質(ルテチウム-177)を結合させ、細胞の内側から腫瘍細胞に障害を与える治療法で、ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)と呼ばれています。ルテチウムが放出するβ線は飛程距離が短く、体内で止まります。また、ルテチウムが放出するγ線は飛程距離が長いため、体の外に出て近くの人にも影響を与える可能性があります。ルタテラ投与後は患者さんご自身だけでなく、周りの人に対する注意も必要です。なお、腫瘍細胞に取り込まれなかったルテチウムは主に尿から排泄されるため、排尿の際には注意が必要です。
ルタテラ投与の際には注意が必要なのですね。
ルタテラは、8週間の間隔で4回の投与をおこないます。治療期間は約6ヶ月です。
ルタテラ投与後、毎回患者さんから出る放射線の量を測定します。この放射線の量が低くなるまで(ルタテラ投与後1日程度)、放射線を適切に管理できる病室内に滞在する必要があります。当センターでは、通常2泊3日の入院となります。ルタテラによる治療は、最初に4回の投与日を決めてから1回目の投与を開始します。投与後は、主治医とよく相談してください。
副作用があらわれた場合は、投与間隔を16週間まで延長することができます。また、お薬は患者さんごとに発注し、海外で生産されて飛行機で輸送されます。投与日に間に合うように生産・輸送していますが、天災やその他の問題により、投与日がずれることがあります。
最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。
消化器がん各疾患・各分野(食道・胃・大腸・肝臓・膵臓、内視鏡治療、薬物療法等)の専門医が中心となり診療を行っています。関連診療科(消化器外科・放射線診断科・放射線治療科・病理診断科等)ともカンファレンスを行い、病態に最も適した最新の診療を提供しています。病院・クリニック(かかりつけ)の先生方とも密に連携することで、患者さんの診療をしっかり支えていきたいと考えています。「がんの診断がまだついていない」「セカンドオピニオン希望」も含め、あらゆるケースに対応していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
津田医師、ありがとうございました。