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標準治療・治療成績について

標準治療と治療成績

当科が扱う疾患および標準治療について

当科の扱う疾患は、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、副腎腫瘍、後腹膜腫瘍などです。

【腎がんの治療】

癌の存在する腎を全摘出する手術を原則とします。ただし小径の癌(<4cm)では、癌の部分のみを切除する腎部分切除と全摘出の予後に差がないことから、機能温存を目的に部分切除を行っています。いずれも開腹手術と腹腔鏡手術がありますが、近年は腹腔鏡手術の比率が高くなっています。また、転移性腎がんや術後の再発例では、新しく開発された分子標的治療薬により著しい予後の改善がみられており、進行性腎がんの標準的な治療となっています。分子標的薬の開発も次々とすすみ、現在6種類の分子標的薬が使用可能であり、治療選択肢も増えています。

【腎盂尿管がんの治療】

がんの存在する側の腎臓および尿管を一塊として摘出する腎尿管全摘術を行ないます。また、進行度により術前、術後の抗がん剤治療を追加します。腎尿管切除術でも開腹手術と腹腔鏡手術がありますが、近年では腹腔鏡手術が主となっています。初診時より遠隔転移を有したり、手術後に再発した場合は抗がん剤治療が中心になります。抗がん剤治療は、以前はMVAC療法が中心で副作用も強く長期入院が必要でしたが、近年は新しい抗がん剤を使用したGC療法(ジェムシタビン+シスプラチン)を行っており、有効かつ副作用の少ない治療が可能になっています。投与は外来化学療法を取り入れており、患者さんの負担が大きく軽減しています。

【膀胱がんの治療】

膀胱壁内への浸潤が浅いがん(筋層非浸潤性)では経尿道的に内視鏡にて切除が可能です。ただし、術後の膀胱内再発が高率にみられるため、BCGや抗癌剤の膀胱内注入療法の追加がよく行なわれます。一方、膀胱壁内へ深く浸潤するがん(筋層浸潤性)では膀胱全摘術が標準的な治療です。膀胱温存的治療も行われますが、標準的治療とはいえず当科では原則行っていません。膀胱を摘出した場合は尿路変更術が必要となります。ストーマ型(尿管皮膚瘻、回腸導管)に加えて、病状より可能と考えられる場合はQOLの観点から腸管を使用した新膀胱造設術もおこないます。初診時より遠隔転移を有したり、手術後に再発した場合(膀胱内再発は除く)は、抗がん剤治療が行なわれます。投与法は腎盂尿管がんと同じくGC療法を行います。

【前立腺がんの治療】

早期がんでは手術または放射線治療による根治的治療が行なわれます。手術は根治性の高い治療で、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援腹腔鏡手術などの術式があります。ロボット手術は、出血が少ない、傷口が小さく疼痛が少ない、術後の回復が早い、尿失禁や勃起不全などの機能障害が少ないなどの利点があります。前立腺がんに対しては保険が適用されており一般手術と同じように受けることが可能です。放射線治療では外照射法と組織内照射法があります。外照射法では周囲臓器への影響を最小限におさえ前立腺に高線量を投与できるIMRT(強度変調放射線療法)が多く行なわれるようになっています。がんの悪性度や進行度により照射前、照射後のホルモン療法が併用されます。組織内照射法は当院では行っておりません。周囲への浸潤の疑いのある局所浸潤癌では、手術、放射線治療、ホルモン治療を組み合わせた併用治療を行います。このように早期の前立腺がんでは、いろいろ治療法の選択肢がありますが、病状に加えて年齢や全身状態等を総合的に判断して治療法の選択が行われます。一方、骨転移やリンパ節転移を有するような進行がんではホルモン療法が最も有効な治療法です。ただし、ホルモン療法の初期効果は著明ですが、数年で治療に抵抗性となることが多く、以後の治療が非常に困難になります。このようなホルモン療法が効かなくなった前立腺がんを去勢抵抗性前立腺がんといいます。去勢抵抗性前立腺がんに対しては、抗癌剤(ドセタキセル)を使用した化学療法が行なわれていましたが、最近、新しい作用機序を有する新規のホルモン治療薬や抗がん剤が使用可能となり予後の改善が見られています。

【副腎腫瘍】

ホルモン産生腺腫(褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、クッシング病)、原発性および転移性副腎腫瘍などに対する外科的治療を行っています。多くは腹腔鏡で切除が可能です。

治療成績について

主要手術件数

  術式 2016 2017 2018 2019 2020
開腹手術 腎摘除術 9 4 11 9 3
腎部分切除術 2 1 0 1 1
腎尿管全摘術 4 1 1 3 2
膀胱全摘除術 21 15 18 20 11
前立腺全摘除術(開腹) 0 2 0 0 0
腹腔鏡手術 腎摘除術 28 24 20 27 23
腎部分切除術 12 0 1 0 0
腎尿管全摘術 22 19 32 23 35
ロボット支援
前立腺全摘除術
75 68 84 69 63
ロボット支援
腎部分切除術
0 14 21 26 40
ロボット支援
膀胱全摘除術
0 0 0 0 10
各がんの疾患特異生存率
  病理学的T分類 症例数 3年 (%) 5年 (%)
腎がん T1、T2 150 96.8 96.8
T3、T4 37 76.1 72.6
全症例 187 92.1 91
腎盂尿管がん T1、T2 18 100 100
T3、T4 26 65.3 51.3
全症例 44 80.1 72.3
膀胱がん T1、T2 42 89.9 85.6
T3、T4 53 69.1 49.4
全症例 95 79.1 67.1
膀胱がん T2 105 100 100
T3、T4 67 100 100
全症例 172 100 100

各がんとも手術を施行した症例です。手術せずに抗がん剤や放射線などで治療された症例や膀胱がんで内視鏡手術のみの症例は含まれておりまん。T分類は原発部位の腫瘍進展度を表すものですが、摘出臓器の組織診断による病理学的分類を用いています。
生存率は、疾患特異生存率(治療をおこなった疾患が原因で死亡する場合のみを死亡として算出)をKaplan-Meier法を用いて算出しています。

2013年5月