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診療部の紹介

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標準治療・治療成績について

標準治療と治療成績

はじめに

現在、当センターでは局所麻酔で行なわれる手術を除くすべての手術が麻酔科管理下に行なわれています。2018年に手術室で実施された総手術件数は3,380件で、麻酔科管理手術は約90%にあたる3,159件でした。 麻酔科は、手術室外での内視鏡手術や子宮腔内照射の全身麻酔管理も担当しており、2018年は152件の管理が実施されました。当センターには、6名の麻酔科学会認定専門医と3名の麻酔科学会認定医が常勤しており、コンピュータシステムで情報管理された全手術室に全身麻酔を行なえる麻酔器とモニター機器を配備して、手術を受ける患者さんが安全かつ安楽に過ごせるよう努めています。

はじめに

標準治療について

麻酔の方法を大きく分けると、意識をなくして眠った状態で行なう「全身麻酔」と手術する場所だけの痛みを取り除く「区域麻酔」に分けられます。 当センターの全身麻酔は、レミフェンタニルという麻薬を用いて鎮痛を行ない、静脈麻酔薬や吸入麻酔薬を併用して、無意識の状態を維持します。さらに、可能であれば区域麻酔による手術部位だけの鎮痛を追加する方法を併用しています。 胸部や腹部の手術(開胸または開腹手術)では、手術する部位に分布する神経のみを麻酔する区域麻酔と呼ばれる方法を用いるのが標準的です。手足の手術でも、区域麻酔を麻酔する末梢神経ブロックを併用する場合があります。 特に、開胸手術や開腹手術の術後は傷の痛みが強いので、痛みにあわせて患者様ご自身が鎮痛薬を追加できるPCAという方法で持続的な鎮痛を行なっています。区域麻酔を併用できない手術でも、術後痛が強い場合はフェンタニルという鎮痛薬を持続静注して痛みを和らげる治療を併用します。

区域麻酔は、局所麻酔薬を注入する方法によって硬膜外麻酔、脊椎麻酔、末梢神経ブロックなどに分けられます。切除範囲が非常に小さく、全身麻酔や区域麻酔を必要としない手術では、手術する場所のみに局所麻酔薬を注射する局所麻酔で手術部位の痛みだけを取り除く場合もあります。 麻酔科が麻酔管理する手術では、少量の鎮静薬を使って緊張を和らげていただくようにこころがけています。

集中治療室は全8床設置されています。手術当日夜は半数以上のがん根治手術患者さまが集中治療室に滞在して、術後の痛みや全身状態の観察・治療をおこないます。集中治療室では術後患者のみならず院内で発生した重症患者の全身管理も担当しています。 集中治療室での治療は人工呼吸や血圧管理にとどまらず、持続血液透析濾過や血液吸着などの急性血液浄化も年間10症例以上おこなっています。また、入院治療が必要な慢性透析患者さまの人工透析も行っています。

麻酔科では日本ペインクリニック学会認定医が週一日ペインクリニック外来も担当しています。さらに、当院の緩和医療科診療にも参加して、がんによる身体的精神的苦痛の緩和につとめています。

治療成績について

治療成績(年間麻酔科管理件数)

  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
全身麻酔 1,212 1,180 1,037 979 909
全身麻酔(区域麻酔併用) 1,425 1,467 1,640 1,640 1,629
硬膜外麻酔・脊椎麻酔併用硬膜外麻酔 9 6 2 1 7
脊椎麻酔 479 505 477 569 548
伝達麻酔・その他 3 1 7 4 5
 
総数 3,128 3,159 3,163 3,193 3,098

2022年4月

肺切除術中肺虚脱時のトロンボキサンB2の変動に関する研究

1.研究の対象

2017年9月から11月までに、当センターで肺切除術を受けられた方のうち、過去に当院で実施された開胸時血清6-keto PGF1αに対する麻酔薬剤の影響に関する臨床研究参加に承諾いただいた方。

2.研究目的・方法

開胸手術時の血圧低下を生じる原因として、プロスタサイクリンの関与を検討するために、シクロオキシゲナーゼ阻害剤であるフルルビプロフェン投与の有無による介入を実施して、プロスタサイクリン代謝産物である6-keto prostaglandin F1αを測定したところ(当院IRB承認番号R-435)、フルルビプロフェン前投与によって6-keto prostaglandin F1α上昇と血圧低下が抑制されることが明らかになった。しかし、同時に血圧回復後も6-keto prostaglandinF1αが上昇しており、血圧変動とプロスタサイクリン産生の変動が完全に合致しないという結果がえられた。
食道悪性腫瘍手術を対象にした検討では、フルルビプロフェンによるトロンボキサンA2産生抑制効果は、プロスタサイクリンに比較して早期に減弱することが報告されており(Chai X-Q, et al.: Flurbiprofen axetil increases arterial oxygen partial pressure by decreasing intrapulmonary shunt in patients undergoing one‐lung ventilation. J Anesth 2015; 29:881–6)、今回の結果も、プロスタサイクリンと並行して産生されるトロンボキサンA2が影響している可能性が考えられる。しかし、肺切除術を対象として、フルルビプロフェン投与によるトロンボキサンA2産生抑制をプロスタサイクリン産生と比較した検討はない。
本研究の目的は、フルルビプロフェンの前投与によるトロンボキサンA2産生抑制をプロスタサイクリン産生抑制効果と比較検討することである。

3.研究に用いる試料・情報の種

開胸時血清6-keto PGF1αに対する麻酔薬剤の影響に関する臨床研究参加に承諾いただいた方
試料:血液(過去に実施済みの上記研究において採取されたもの)
情報:年齢、性別、身長、体重

研究成果は学会や学術雑誌で発表されますが、個人情報を特定しうる情報が公開されることはありません。

4.お問い合わせ先

本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。

照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
〒673−8558
兵庫県明石市北王子13−70
電話:078-929-1151
兵庫県立がんセンター 
麻酔科 加藤 洋海(研究責任者)

研究代表者:
兵庫県立がんセンター 麻酔科 加藤 洋海

兵庫県立がんセンターにおけるDVTスクリーニングの現状に関する研究

1.研究の対象

2018年1月から12月までに兵庫県立がんセンターで実施された下肢血管超音波検査を受けられた方

2.研究目的・方法

手術侵襲による凝固機能亢進は術後深部静脈血栓(DVT)および血栓性肺塞栓(PE)発症の危険因子である。しかし、周術期のDVT,PE発症に関する国内集計は精度が低く、日本麻酔科学会主導の集計が端緒についた段階にすぎず、内科的癌治療対象症例との発症率の比較なども十分には行われていません。凝固機能亢進は悪性腫瘍で発現するので、当センターで治療を受ける患者は全例DVTおよびPEの高リスク患者に相当します。担癌症例について内科的治療対象症例と外科的治療対象症例でDVTの発症率や経過の相違について国内データはまだ十分に収集されていません。
今回、当センターで下肢血管エコーを行われたDVTの検査結果を集計し、発生率や臨床経過に関する臨床研究を行います。

3.研究に用いる情報

研究には以下の情報を使用します。患者様の性別、年齢、病名、治療内容、下肢静脈エコー検査による静脈血栓症の有無、静脈血栓症が診断された場合、治療後の臨床経過

4.研究に関する利益相反について研究に関する利益相反について

本研究には特定の個人または企業からの資金提供はなく、利益相反はありません。

5.本研究に医療情報を使用することを希望されない患者様へ

本研究に関するデータには患者様を特定する情報は含まれません。
また、本研究に関するデータは病院内にのみ保管され、外部に提出されることはありませんが、本研究に臨床情報を使用することを希望されない場合は、患者様のデータ使用を拒否することができます。その場合でも、患者様の今後の治療に対して不利益が生じることはありません。
データ使用を拒否される場合は下記の連絡先にご連絡ください。

〒673−8558
兵庫県明石市北王子13−70
兵庫県立がんセンター 
電話:078-929-1151
麻酔科 加藤 洋海 (内線番号8081)