兵庫県立がんセンターTIMES

がんセンタータイムズ

麻酔科の最新トピックス

麻酔科 波戸章郎医師 インタビュー

c54ec80331d638e5064b099ed2c2b880-1761699469.jpg

今回のインタビューは麻酔科の診療状況について、麻酔科 波戸章郎医師にお話を伺いました。

まず、麻酔科についてお聞かせください。

麻酔科は、手術を受ける患者さんの全身管理を担う診療科です。麻酔科医の業務は、手術中の麻酔管理にとどまらず、手術前の診察・評価から始まり、手術後も患者さんの状態を良好に保つための継続的な観察・管理を行います。

麻酔科医の主な業務は手術麻酔ですが、それ以外にも集中治療、院内での急変対応、ペインクリニック(痛みの緩和を行う診療)など、その活動範囲は多岐にわたります。

麻酔科常勤医師は6名(麻酔科専門医2名、麻酔科認定医2名、専攻医2名)で、協力して診療にあたっています。手術室は9室あり、年間3,000件以上の悪性腫瘍手術に対する麻酔業務を担うほか、放射線治療室などでも麻酔業務を行っています。すべての手術室に、コンピュータで情報管理された全身麻酔モニターと麻酔器を配備しており、体温測定装置や筋弛緩モニターなども活用して、患者さんが安全かつ安楽に手術を受けられるよう努めています。

麻酔法としては、全身麻酔に加え、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔、各種神経ブロックも積極的に取り入れており、術後の痛みを最小限に抑え、快適に過ごしていただけるよう配慮しています。神経ブロックや中心静脈カテーテルの挿入などの処置は、超音波装置を使用して安全かつ確実な実施に努めています。使用する全身麻酔薬には、吸入麻酔薬としてセボフルランおよびデスフルラン、静脈麻酔薬としてレミフェンタニル、プロポフォール、レミマゾラムがあり、さらに筋弛緩薬やその拮抗薬も使用し、手術の種類および患者さんの体質や希望に応じて、最適な麻酔を行っています。

術前麻酔科外来は毎日実施しており、手術麻酔に関する説明や術前評価を麻酔科医が行っています。近年は手術を受けられる患者さんの高齢化が進み、それに伴い臓器機能の低下や糖尿病などの併存疾患を有する方が増えているため、術前麻酔科外来の役割はますます重要となっています。また、麻酔科では週に1回、除痛外来を開設しており、日本ペインクリニック学会認定医の麻酔科医が、がん性疼痛をはじめとする難治性の痛みに対応しています。

当院の集中治療室は8床を備えており、がん手術を受けた患者さんの半数以上が術後に集中治療室に入室します。当院の集中治療室では、麻酔科医が中心となって術後の疼痛緩和や循環・呼吸管理を行い、患者さんが安全かつ安楽に術後を過ごせるよう努めています。集中治療室では術後患者だけでなく、院内で発生した重症患者の全身管理も担当しており、必要に応じて人工呼吸器管理や血液浄化療法(透析など)も実施しています。

麻酔科での診療について教えてください。

麻酔科の主な業務内容としましていくつかご説明いたします。

まず『手術中の麻酔管理』ですが、これは手術の種類や患者さんの状態に応じて最適な麻酔法を選択し、全身管理を行うことです。呼吸、循環、体温などを常にモニタリングし、状況に応じて適切な対応を行います。

『術前診察と麻酔計画』は手術前に患者さんの全身状態を評価し、既往歴や合併症の有無を確認のうえ、麻酔方法やリスクについて説明し、安全な麻酔計画を立てることです。

『術後管理』は術後の痛みの緩和に努めるとともに、循環動態や呼吸状態を観察し、合併症の早期発見・対応することなどが主な業務内容です。

『集中治療』は重症患者に対する高度医療です。術後に重症化した患者さんのみならず、院内で発生したすべての重症患者の診療に対応しています。

『ペインクリニック』は医療用麻薬や特殊な鎮痛薬の処方、神経ブロックなどを用いて、がん性疼痛や慢性疼痛といった難治性の痛みに対する治療を行うことです。特殊な医療機器や薬剤を用いて行う神経破壊的ブロックが実施可能なことは当院の特徴の一つで、難治性がん性疼痛にも有効です。痛みでお困りの方はかかりつけ医あるいは当センターの相談支援センターにご相談ください。

最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

私たち麻酔科は、手術を安全かつ快適に受けていただくため、麻酔管理と全身状態の見守りを専門に行っています。手術中は、患者さんの意識や痛みを適切にコントロールし、呼吸・循環などの生命機能を常に監視しています。重症の患者さんに対しては集中治療室での全身管理も行い、より早い回復を支えます。また、薬では取り切れないがんに伴う強い痛みに対して、我々は「神経ブロック」という手法を用いた強力な除痛医療を提供しています

外からは見えにくいところでの医療ですが、私たちは患者さん一人ひとりに寄り添い、安心して治療を受けられるよう努めています。

波戸医師、ありがとうございました。

一覧に戻る

TOP