兵庫県立がんセンターTIMES

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腫瘍内科の最新トピックス

腫瘍内科 松本光史医師 インタビュー

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今回のインタビューは腫瘍内科の診療状況について、腫瘍内科 松本光史医師にお話を伺いました。

まず、腫瘍内科についてお聞かせください。

近年のがん薬物療法の進歩の結果、臨床腫瘍学の知識を背景として、薬物療法を中心に臓器横断的に各種悪性腫瘍の診療を行う、抗悪性腫瘍薬に精通した腫瘍内科医の必要性が高まってきました。一方で、本邦では従来、がんは多くの場合外科医などの臓器別専門医が中心となって薬物療法も含めて治療されてきた経緯があり、腫瘍内科を設置している病院は全国的にもまだ少ないのが現状です。当科は、がんの検査、治療、研究を行う当センターにおいて、がん薬物療法を専門的に扱う診療科として、平成17年4月に新設されました。令和7年4月からは、常勤医師10名の体制で診療を行っています。当科医師は腫瘍内科外来以外に、外来化学療法センターの運営や診療支援、遺伝外来、がんゲノム医療外来も担当しています。

また、当科では、「兵庫県民に最新のがん薬物療法を提供する」を科のミッションとしています。 具体的には以下の3つを科の目標としています。

一つ目は、『固形がん全般に、科学的根拠に基づいた標準治療を提供する。』
成人の固形がん全般に対して臓器横断的にがん薬物療法を中心とした専門的な診療を行っております。希少がん(原発不明がんや肉腫など)、乳腺、婦人科、頭頸部領域の悪性腫瘍について特に高い専門性を有しております。

二つ目は、『現存の標準治療をより向上させるべく、臨床試験に積極的に取り組む』
新薬の開発治験について積極的に取り組んでいます。多数のグローバル治験を第1相(First in Human含む)から第3相まで幅広く受託しております。

三つ目は、『次世代の腫瘍内科医を育成する。』
フェローや専攻医を積極的に採用し、日本臨床腫瘍学会認定のがん薬物療法専門医取得を目指してカリキュラムに沿った研修を受けて頂いています。当科発足から現在まで19年間で13名ががん薬物療法専門医を受検し、全員1回で合格されています。

腫瘍内科での診療について教えてください。

特に力を入れている診療内容として、『希少がん』と『新薬治験』についてご説明します。
まず希少がんについてご説明します。
「がんかもしれない」状態からの診断、必要に応じた手術や放射線治療などの局所治療のコーディネート、薬物療法及びその間必要な支持療法や緩和療法まで幅広く担当しています。原発不明がんの特定のサブタイプの患者さんについては集学的治療による長期生存例も得られています。
次に新薬治験についてご説明します。
乳がん、婦人科がん、頭頸部がんの治験を多数受託しております。免疫チェックポイント阻害薬やADC製剤、新規分子標的治療薬などの治験で、中には従来完治不能とされていたⅣ期又は再発の患者さんで、長期無病生存を達成される患者さんも出てきています。

最近の診療実績はいかがでしょうか。

おかげさまで初診患者数が毎年徐々に増加しており、ここ数年は年間500名強の患者さんを新たに診察しております。
ご紹介いただいた患者さんの約8割が当科の専門性の高い乳がん、希少がん、頭頸部がん、婦人科がんです。

最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

受診の際には、基本的に現在の主治医の先生からの紹介状が必要です。
また、紹介状に加えて画像データ(X線、CT、MRIなど)や病理標本などの資料が必要になることもありますので、事前に地域連携室と現在の主治医の先生との間で確認をさせて頂きます。
特に希少がんについては、生検前の「原発不明がん疑い」の段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。急を要する場合は翌日、特に急がれる場合は当日に対応しておりますので、お電話でのご相談も歓迎いたします。
ここ数年は、比較的若年(50歳以下)の縦隔腫瘍の患者さんについて電話相談からの当日受診、早期介入で性腺外胚細胞腫瘍などの進行期でも治療を目指せるがんと診断できた患者さんを複数経験しております。
受診時には全ての医療機関の投薬内容がわかるお薬手帳や処方箋をご持参ください。

当科の方針として、診療する患者さん全員に禁煙を約束頂き、また代替療法は全て禁止とさせて頂いています。ほぼ全ての患者さんにがん薬物療法を行う科の特性上、必要時に輸血を受けられない方や、受診時の体調や病状によって、要望にお応えできないことがございます。あしからずご了承下さい。

松本医師、ありがとうございました。

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