緩和ケア内科の最新トピックス
緩和ケア内科 木村好江医師 インタビュー

今回のインタビューは腫瘍循環器科の診療状況について、緩和ケア内科 木村好江医師にお話を伺いました。
まず、緩和ケア内科についてお聞かせください。
緩和ケアとは、命に関わる病気に伴う身体や心の“つらさ”を和らげ、患者さん御本人やご家族の生活の質を向上させる取り組みです。がんと診断されたときから、がんの治療中、抗がん治療ができなくなってからも、治療時期を問わず、いつでも受けることができます。担当医師や看護師が基本的な緩和ケアを行いますが、いろいろな職種からなる緩和ケアチームは、より専門的なケアを提供します。医師・看護師からの協力依頼や、患者さん・ご家族からのご希望があれば、一緒に診療を行います。ご希望時は、担当医師・看護師にお声がけ下さい。
どのような治療をされているのでしょうか。
がんとその治療に伴って様々な身体症状が出現しますが、痛みは最も辛い症状のひとつです。通常の医療用麻薬(オピオイド)で80-90%はコントロールできると言われておりますが、10-15%はコントロールが困難で複雑な処置を要する患者は2-5%と言われています。当院で行っている特殊な鎮痛方法をいくつかご紹介します。
ぜひ教えてください。
- メサドン(医療用麻薬):従来のオピオイドで鎮痛困難な患者の60%以上に有効と言われています。 オピオイド受容体以外にも作用し、強力な鎮痛効果をもちます。歴史は古く、ヒトラーが開発した薬といわれていますが、半減期に個人差が大きいので(5-120時間)調節しにくく、普及してきませんでした。本邦では2013年から使用可能となりました。1週間程度の入院を基本としてお薬の導入を行います。経口モルヒネ換算60mg以上のオピオイド使用中で、心電図検査でQT延長の無い患者さんが適応となります。当院では、これまでに200例以上の患者さんに使用しています。e-learningで資格を取得した医師のみが処方できる薬です。
- 腹腔神経叢(内臓神経)ブロック:膵癌、胃がんの痛みに有効です。透視下に行う方法と、CTガイド下で行う方法があります。2-3日間の入院で行ないます。治療中であっても適応はあります。事前にCTをお送りください。放射線治療科・麻酔科と協働して行なっています。
- くも膜下脊髄神経ブロック(麻酔科と協働):肋骨転移などでの胸部腹部の痛みと人工肛門造設後の旧肛門部の痛みに適応があります。高比重のフェノールグリセリンをくも膜下に注入し、神経破壊を行ないます。入院期間は1-2日、事前にご相談下さい。
- くも膜下モルヒネのポンプ植込み(麻酔科と協働):2021年11月に保険承認されました。くも膜下カテーテルを入れ、腹壁皮下に薬液貯留のできるポンプを植込みます。経口モルヒネの1/300分の量で鎮痛できるので、副作用が少なく、 質の高い鎮痛がえられます。モルヒネをくも膜下投与テスト後、効果があれば、植え込みます。当院にはくも膜下鎮痛の認定医がいます。入院期間は1週間になります。
緩和ケア内科への受診はどのようにすれば良いのでしょうか。
他院入院中の患者さん、当院受診歴のない患者さんや在宅療養中の患者さんは、それぞれ主治医の先生、かかりつけの先生から、地域連携室へ診療情報を送付いただき、必要時カルテ作成、緩和ケア外来受診となります。当院緩和ケア病床登録済の患者さんは、かかりつけの先生にまずご連絡いただき、先生かの方から緩和ケア内科へご連絡いただくようにしています。当院で治療中の患者さんは、当院主治医にご相談ください。
最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。
緩和ケア内科外来では、主に当院でがん治療を受けている、または、受けられた患者さんとそのご家族に緩和ケアを提供しています。ご希望時は、担当医師・看護師にお声がけ下さい。痛みなどの症状緩和が困難な場合に、地域医療機関からのご紹介も受け付けていますので、かかりつけの先生にご相談下さい。入院時にご希望があれば、緩和ケアチームとして、担当医師・看護師・薬剤師・管理栄養士と連携して緩和ケアを行います。抗がん治療ができなくなってからは、かかりつけ医の先生の支援の元に在宅療養が始まり、緩和ケアも継続して行われます。在宅療養中に症状緩和が困難となった場合、緩和ケア病床に入院していただき、症状緩和を図る場合もあります。病床数は現在4床で、入院期間は病状次第ですが、相談しながら決定します。症状が安定したら、再度在宅医療を再開するか、緩和ケア病床を持つ他施設への転院となることもあります。
木村医師、ありがとうございました。