がんゲノム医療とは
がんは遺伝子の変異によって起こる病気で、その変異は患者さんお一人ごとに異なります。遺伝子の変異が治療薬の効果に影響をおよぼす場合があることがわかっていますが、通常のがん遺伝子検査では特定の限られた種類の遺伝子を調べているのが現状です。
そこでがんの発症に関連した数百種類の遺伝子を網羅的に調べ、患者さんの治療や診断に役立てる医療を「がんゲノム医療」と言い、その検査を「がん遺伝子パネル検査」と呼びます。
兵庫県立がんセンターでは以下のがん遺伝子パネル検査を行います。
01
OncoGuide™ NCCオンコパネル(保険適用)
NCCオンコパネルはがんに関連した124遺伝子を調べます。保険診療下で検査が可能です。
保険適用の対象となる方
1. 下記いずれかの診断を受けた方
- 標準治療実施後に進行が確認され、次の治療を探索している固形がんの方。
- 原発不明がん(がんが最初に発生した臓器がはっきりせず、転移病巣だけが大きくなったがん)の方。
- 標準的な治療法が確立されていない希少がん(患者数が少なく稀ながん)の方。
2. 全身状態及び臓器機能等から、本検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した方。
02
FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル(保険適用)
FoundationOne(ファンデーション・ワン)はがんに関連した324遺伝子を調べます。保険診療下で検査が可能です。
保険適用の対象となる方
1. 下記いずれかの診断を受けた方
- 標準治療実施後に進行が確認され、次の治療を探索している固形がんの方。
- 原発不明がん(がんが最初に発生した臓器がはっきりせず、転移病巣だけが大きくなったがん)の方。
- 標準的な治療法が確立されていない希少がん(患者数が少なく稀ながん)の方。
2. 全身状態及び臓器機能等から、本検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した方。
03
FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル(保険適用)
FoundationOne Liquid(ファンデーション・ワン・リキッド)は血液を用いてがんに関連した324遺伝子を調べます。保険診療下で検査が可能です。
保険適用の対象となる方
1. 下記いずれかの診断を受けた方
- 標準治療実施後に進行が確認され、次の治療を探索している固形がんの方。
- 原発不明がん(がんが最初に発生した臓器がはっきりせず、転移病巣だけが大きくなったがん)の方。
- 標準的な治療法が確立されていない希少がん(患者数が少なく稀ながん)の方。
2. 全身状態及び臓器機能等から、本検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した方。
3. 1.2の条件に加えて、十分量の手術あるいは生検検体がない、あるいはあっても保存期間が3年以上の場合
04
Guardant360(ガーダント)
Guardant360(ガーダント)はがんに関連した74遺伝子を調べます。血液で検査可能です。
保険診療の対象外となるため、自費診療として検査費用(税込423,000円)を負担していただく必要があります。
対象となる方
1. 原発不明がん(がんが最初に発生した臓器がはっきりせず、転移病巣だけが大きくなったがん)や標準的な治療法が確立されていない希少がん(患者数が少なく稀ながん)の方。
2. 標準治療実施後に進行が確認され、次の治療を探索している固形がんの方。
本検査費用のお支払いには、「自由診療保険メディコム」(セコム損害保険株式会社)を利用する事ができます。メディコムにご加入の方は、セコム損害保険株式会社に連絡を入れ、当院でこの検査を受ける事を伝えて下さい。
がん検査パネルでわかること
がん遺伝子パネル検査を行うことで、がん細胞の遺伝子変異が検出され、その変異に対する治療薬や臨床試験の情報を得ることができます。ただし現在のがん遺伝子パネル検査ならびに薬剤開発の状況から、治療につながる割合は10パーセント程度と考えられます。有効な情報が得られない可能性も十分あることをご理解ください。また数パーセントの割合で遺伝性腫瘍(生まれつきがんに罹りやすい体質を持つ)の遺伝子変異が見つかることがあります。これは、検査の副次的な結果ですが、その場合、血縁者(親、子、兄弟姉妹等)も同じ変異を持つ可能性があります。
「がんゲノム医療外来」にはご本人ならびにご家族の来院が必要です。
がん遺伝子パネル検査の種類によっては採血が必要ですので、ご本人の来院が必要です。
また本検査の結果がご家族や血縁者に影響する場合もありますので、ご本人以外にご家族の来院もお願いしております。
兵庫県立がんセンターの
がんゲノム医療について
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中核拠点病院と連携
兵庫県立がんセンターは、中核拠点病院である岡山大学病院、国立がん研究センター中央病院と連携してゲノム医療を実施しています。
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各分野のエキスパートと連携
薬物療法専門医、病理医、研究医、看護師、臨床検査技師、薬剤師など各分野のエキスパートがゲノム医療に携わっています。
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患者さん・ご家族へのサポート
検査を実施するだけでなく、ご不安な患者さんやその家族の方々をサポートする体制を整えています。
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遺伝に関する相談支援
臨床遺伝指導医、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーを配置し、遺伝に関する相談支援をおこなっています。
検査の流れ

相談 ※1

予約 ※2

がんゲノム医療
外来の受診 ※3

費用お支払

検査提出 ※4

結果説明
※1 相談支援センター:外来の予約方法、申し込みに必要な手続き方法、検査にかかる費用など
※2 受診を希望される場合には、あらかじめ主治医からがんゲノム医療外来の予約を取っていただく必要があります。
また、主治医から病理標本等をご提供いただく必要があります。
※3 外来担当医、認定遺伝カウンセラー、看護師、検査技師からがん遺伝子パネル検査の詳しい説明をします。
※4 結果結果が出るまで約1か月半かかります。
検査費用について
検査費用・受診料支払いの
ご準備をお願いいたします。
- 健康保険が適用される場合、検査費用については保険点数56,000点(3割負担で168,000円)をお支払いいただくことになります。さらに「高額療養費制度」が使えますので、収入に応じて決められた自己負担分以外は払い戻しを受けることができます。
- 自費検査の場合、ガーダント検査は税込423,000円です。がんゲノム医療外来受診後、検査費用のお支払いの確認が取れた後に、検査の準備を進めてまいりますのでご了承ください。(現金、クレジットカードまたは振込でのお支払いが可能です)。受診後にがん遺伝子パネル検査をご希望されない場合でも、外来受診料(税込40,000円)のお支払いは必要です。
以上、ご確認・ご承知のうえ、「がんゲノム医療外来」の受診をお願いいたします。
よくあるご質問
がんゲノム医療外来を受診したいのですが、どのような手続きが必要ですか?
まずかかりつけ医(主治医)にがんゲノム医療外来受診の希望をお伝えください。かかりつけ医から当院地域連携室を介して予約を取ってもらってください。患者さんからの直接の予約申し込みは受け付けていません。
家族のみでも受診できますか?
患者本人に受診していただく必要があります。
何を使って検査するのですか?
過去に行った手術や検査(生検)で採取したがん組織を使います。検査の種類によっては採血も必要となります。
検査に使用する検体はどのようなものを準備すればいいのですか?
検体の詳細については、下段からダウンロードしていただき、かかりつけ医にお渡しください。
検査結果が分かるまでにはどれぐらいの時間がかかりますか?
検査の種類によりますが約1か月半です。
検査で治療方法が見つかる可能性はどれぐらいですか?
治療に結び付く遺伝子変異が見つかるのは10%程度です。
医療関係者の方へ
平素より兵庫県立がんセンターの診療にご協力いただきありがとうございます。
次世代シークエンサーという遺伝子解析技術の発展により数百個の遺伝子を一度に調べることが可能となりました。遺伝子変異に基づいて治療薬も選択されるようになったことも相まって、治療法の選択においてがん細胞の遺伝子を調べることの意義が高まっています。このように網羅的にがん細胞の遺伝子を調べることをがん遺伝子パネル検査と呼び、患者さんにとって有効な治療法の情報が得ることを目的とするものです。