兵庫県立がんセンタートップページ > がん診療のトピックス
■兵庫県立がんセンターは、都道府県がん診療連携拠点病院として血液がん、固形がん・原発不明がん、リンパ腫、肉腫まで様々な悪性腫瘍を取り扱っています。全国のがんセンターや大学病院を含めて報告される院内がん登録の全国集計を比較しても2018年度のがん登録数は3652件で、全国第21位、西日本では第6位となっており、その症例数からみても全国有数のがん専門病院です。
■外科系のトピックスというとやはり手術に関することでしょう。最近の手術においては鏡視下手術の進歩があげられます。消化器外科でも特に食道胃腸の領域は腹腔鏡や胸腔鏡の手術が年々増加しており、当院では現在、食道癌95%前後、大腸癌90%前後、胃癌50%弱、肝臓癌50%弱が鏡視下手術です。肝胆膵領域ではまだ鏡視下手術の適応は限られていますが、肝表面の部分切除や外側区域切除、リンパ節廓清のない膵体尾部切除等は腹腔鏡が導入されています。乳腺外科では、形成外科の協力の下、乳房再建も行っており、婦人科、呼吸器外科も絶えず全国トップレベルの手術数を誇っています。但し、がんの進行度や病態によっては、すべて鏡視下がよいというわけではなく、従来通りの開腹や開胸の方が、視野が広く確保でき、安全で確実な手術ができる場合もあります。さらにロボット支援手術として注目されているダヴィンチもすでに導入しており、その適応は食道がん、胃がん、大腸がん、肺がん、子宮体がん、子宮良性腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、腎がんにまで拡大されています。このような低侵襲な鏡視下手術を希望する患者さんは年々増えています。
■内科系では、抗癌剤、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤を中心とした各疾患に対する化学療法の進歩には目を見張るものがあります。最近は、抗癌剤に分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤を組み合わることによって、大きな予後改善効果が期待できるようになってきています。こうした化学療法の進歩により、従来であれば切除不能で予後も期待できなかった患者さんでも、化学療法が著効して手術が可能になることもあり、特に大腸がんの肝転移に関しては内科・外科の協力の下、格段に治療成績が改善しました。一方、非常に早期で発見された食道、胃や大腸のがん患者さんにおいては、胃カメラや大腸カメラによる内視鏡的切除で根治が可能な場合も多くなり、患者さんにとっては侵襲が少なく早期に社会復帰できるためとても喜ばれています。
■がんは遺伝子の変異によって起こる病気で、その変異は患者さんごとに異なります。遺伝子の変異が治療薬の効果に影響をおよぼす場合がありますが、通常のがん遺伝子検査では特定の限られた種類の遺伝子を調べるのが現状でしたが、次世代シークエンサーという遺伝子解析技術の発展により、がんの発症に関連した数百種類の遺伝子を網羅的に一度に調べることが可能となりました(がん遺伝子パネル検査)。調べた遺伝子の情報を患者さんの治療や診断に役立てる医療を「がんゲノム医療」と言います。当院は2019年にがんゲノム医療拠点病院に指定されています。それに伴い遺伝外来も整備され、臨床遺伝専門医や遺伝カウンセラーがその診療に当たっています。
■がん治療においては外科系、内科系どちらが欠けても適切かつ十分な治療はできません。さらに放射線診断・病理診断・遺伝子診断も、その診断や治療方針の決定になくてはならない領域です。このようにがんセンターでは、多くの領域のスペシャリストがチームになって個々の患者さんの病態に応じた集学的治療に取り組む、即ちチーム医療を随時行うことができるのが最大の強みです。
当院で行われている鏡視下(腹腔鏡・胸腔鏡)手術やDa Vinci 手術(ロボット手術)の対象となるのは主に下記の疾患です。
患者さんの病状や病気の進行度・部位などによって、適応は個々に判断します。