一般手術 -手術治療を行っている臓器について-
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胃はお腹の上の方にある大きな管腔臓器です。
腹腔鏡下切除が適応にならない胃がんや、一部の大きな胃粘膜下腫瘍にも適応します。
剣状突起下(胸骨の下)から臍下まで約20cmの皮膚切開を行います。
幽門側胃切除術では胃と十二指腸との境界である幽門を含めて胃の下3分の2を切除し、残った胃と十二指腸または小腸とをつなぎます。一方、胃全摘術では胃全部を切除し、食道と小腸とをつなぎます。進行度に応じて脾臓や膵臓の一部を合併切除することがあります。
縫い合わせた場所がうまく癒合しないために消化液が漏れる縫合不全、胃の裏側にある膵臓から膵液がにじみ出てくる膵液瘻、お腹の中の癒着によって腸の通りが悪くなる腸閉塞、などを主とする合併症を稀に起こすことがあります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ3-4日程度で食事が取れるようになり、10-14日程度で退院となります。
結腸は右下腹部から右上腹部、右上腹部から左上腹部、左上腹部から左下腹部に連続する大きな管腔臓器です。直腸は骨盤腔背側に位置する臓器です。
当院では他臓器浸潤のある症例や腸閉塞症例が開腹手術の適応になります。
上下腹部の正中切開(約15~20cm)をつけます。
結腸切除術では腫瘍の口側、肛門側10cmずつをリンパ節を含んだ腸間膜と合併切除します。その後口側断端と肛門側断端をつなぎます。一方、直腸切除術では腫瘍口側10cm、肛門側2cmまたは3cmを同様に切除します。口側断端、肛門側断端をつなぎますが、腸管の状態によっては、一時的人工肛門造設、腫瘍が肛門縁に近接している場合は永久的人工肛門造設となることがあります。
縫い合わせた場所がうまく癒合しないために消化液が漏れる縫合不全、お腹の中の癒着によって腸の通りが悪くなる腸閉塞、などを主とする合併症を稀に起こすことがあります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ3-4日程度で食事が取れるようになり、8-10日程度で退院となります。
肝臓は上腹部にあり腹部臓器の中で最大の臓器です。
解剖学的には脈管(肝動脈・門脈・肝静脈)の走行で大きく右葉と左葉に分かれますが、右葉は前区域と後区域、左葉は内側区域と外側区域にわかれ、さらに1番から8番までの亜区域に分かれます。
肝臓の治療においては肝予備能(アルブミン、ビリルビン、プロトロンビン時間、インドシアニングリーン15分停滞率、血小板等が指標)と腫瘍因子(腫瘍個数、サイズ、部位、脈管との位置関係)を天秤にかけながら検討します。切除に際しても各種画像で腫瘍と脈管を立体的に構築して、切除範囲やアプローチ方法を考えます。
肝細胞がん、肝内胆管がん、転移性肝がん、肝門部胆管がんなど
右葉系の手術なら逆L字切開・J切開、腫瘍が大きい場合は右開胸することもあります。左葉系なら逆T字切開やベンツ切開等。
肝部分切除〜各亜区域〜各区域切除、右葉・左葉切除、拡大右葉・拡大左葉切除、右三区域・左三区域切除等があります。また門脈腫瘍栓や胆管腫瘍栓を伴っていれば、脈管をあけて腫瘍栓を摘出することもあります。肝門部胆管がんでは肝切除後、残肝の胆管と小腸の吻合(胆道再建)が必要となります。
出血、胆汁漏、胸水・腹水、肝不全等。
順調に経過した場合は約2週間程度になります。
膵臓は胃の裏(背側)にある実質臓器です。
膵頭部腫瘍(がん含む)、中下部胆管がん、乳頭部がん、十二指腸がんなど
開腹での膵頭十二指腸切除術では、剣状突起下(胸骨の下)から臍下まで約20cmの皮膚切開を行います。
膵臓の頭部、胃の出口から十二指腸・小腸の入り口・胆管・胆嚢、場合により大腸の一部や門脈(小腸から肝臓につながる血管)なども切除します。
膵臓や胆管などと小腸をつないだ部分がうまくくっつかないで生じる縫合不全、膵臓を切離した部分から膵液がにじみ出てくる膵液瘻、それらに起因する出血や感染などがあり、時には命に関わることもあります。また手術により糖尿病や消化機能の低下が生じることもあります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ2-3日程度で食事が取れるようになり,14-21日程度で退院となります。
膵臓は胃の裏(背側)にある実質臓器です。
膵尾側にある膵腫瘍(がんを含む)
開腹での膵尾側切除では、剣状突起下(胸骨の下)から臍下まで15-20cmの皮膚切開を行います。体型により左横切開を加えることもあります。
腫瘍を含めて膵臓の尾側(膵体部および尾部)を切除します。通常、膵臓の左側に接する脾臓も同時に摘出します。
膵臓を切離した部分が十分にくっつかずに膵液がにじみ出てくる膵液瘻、お腹の中の癒着によって腸の通りが悪くなる腸閉塞などの合併症を起こすことがあります。また術後、糖尿病や肺炎などの感染症にも注意していく必要があります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ2-3日程度で食事が取れるようになり、14-21日程度で退院となります。
腎臓はお腹の背中側に位置し、高さは腰のあたりで背骨の左右に一つずつある臓器です。
腎臓の開腹手術は、みぞおちからへその下まで約20cmの切開を行なう場合と横腹に斜めに切開を行う場合があります。
がんが発生した方の腎臓(左腎、右腎のどちらか)をすべて摘出する場合が一般的です。ただし近年では、小さな腎がん(直径で4㎝以下)に対してはがんの部分のみを切除し腎臓は温存する腎部分切除術が増えてきています。部分切除では術後の腎機能低下が全摘出に比べて少ない利点があります。当科でも腹腔鏡手術による腎部分切除術を積極的に行っています。
腎臓は血流が多く出血しやすい臓器ですが輸血は多くの場合必要ありません。特に腹腔鏡手術では出血は少量のみです。手術のために切開した部位の感染もほとんどみられません。腎部分切除術では、腎臓を切開した際に内部の尿の通路が開放することがあり、術後に尿が体内に漏れることがありますが経過観察のみで通常止まります。片方の腎臓を摘出するため、術前に比べて腎機能が低下しますが日常の生活に支障はありません。
順調に経過した場合、翌日より歩行が可能で食事も取れるようになり、7~10日程度で退院します。術後、外来通院は3~6ヶ月ごとで約5年間、その後は1年ごとで計10年間の経過観察を行ないます。
腎盂は腎臓の中にあり、腎臓で作られた尿を受け取る袋状の臓器です。 尿管は腎盂の続きで、腎臓からでてお腹の中を通って膀胱につながる長い管状の臓器で、尿を腎臓から膀胱まで運びます。
腎がんと同じく開腹手術と腹腔鏡手術があります。腎臓の切除は腎がんと同様ですが、腎盂がん・尿管がんでは尿管を膀胱との付着部まで切除する必要があります。そのため開腹手術では上腹部から下腹部までの切開を行います。
がんを認める側の腎臓および尿管をすべて切除します。がんが大きい場合やリンパ節の腫れがある場合は、転移する可能性がある部位を充分に切除するために周囲のリンパ節も一緒に取り除きます。腫瘍進展の程度により、術後化学療法が必要になる場合があります。
腎臓は血流が多く出血しやすい臓器ですが輸血は多くの場合必要ありません。特に腹腔鏡手術では出血は少量のみです。手術のために切開した部位の感染もほとんどみられません。腎部分切除術では、腎臓を切開した際に内部の尿の通路が開放することがあり、術後に尿が体内に漏れることがありますが経過観察のみで通常止まります。片方の腎臓を摘出するため、術前に比べて腎機能が低下しますが日常の生活に支障はありません。
順調に経過した場合、翌日より歩行が可能で食事も取れるようになります。手術の際に膀胱の一部を切開、縫合するため1週間後くらいに膀胱より尿の漏れがないことを確認の後に退院となります。術後、外来通院は3~6ヶ月ごとで約5年間、その後は1年ごとで計10年間の経過観察を行ないます。腎盂がん、尿管がんでは膀胱内再発が多くみられるため定期的な膀胱鏡検査が必要です。
前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱の下に位置します。膀胱に貯められた尿は尿道を通って体外に排出されますが、前立腺は膀胱の真下で尿道を取り囲むように存在します。
開腹手術では臍下の下腹部正中に約10㎝の皮膚切開を行います。
前立腺をすべて一塊として切除します。加えてがんが広がりやすい精嚢、および転移の可能性のある前立腺周囲のリンパ節も切除します。前立腺を切除するとその部分の尿道もなくなるため、膀胱と尿道の断端は縫い合わせてつなぎ直します。
前立腺はお腹の下の最も奥に存在し、周囲に血管も多く手術の難しい臓器です。開腹手術では出血が多くなることも少なくありませんが、腹腔鏡手術が行われるようになり出血量は減少し輸血も必要としなくなっています。前立腺摘除後は膀胱と尿道を吻合しますが、その部分より術後に尿が漏れることがあります。尿道カテーテルを膀胱内に留置して置けば自然に閉鎖します。また、尿道には尿道括約筋が存在し排尿をコントロールしていますが、この筋肉は前立腺と接しているため、手術後に括約筋の働きが一時的に低下することがあります。これにより尿失禁がみられますが、通常、3~6か月程度で改善します。
順調に経過した場合、翌日より歩行が可能で食事も取れるようになります。術後1週間程度で尿道カテーテルを抜去、約2週間程度で退院となります。術後、外来通院は3~6ヶ月ごとで約5年間、その後は1年ごとで計10年間の経過観察を行ないます。
膀胱は下腹部の骨盤内に位置する袋状の臓器です。
へそから下の下腹部正中に約15~16㎝の切開を行います。
膀胱全摘除術は経尿道的切除では十分な切除ができない場合に行われる手術で膀胱をすべて摘出します。膀胱がんは尿道にも再発しやすいため、膀胱に加えて前立腺、尿道も切除します。また、転移する可能性がある部位を充分に切除するために周囲のリンパ節も一緒に取り除きます。膀胱を摘出した場合は、新たに尿を体外に出すための手術(尿路変更術)を同時に行うことが必要です。お腹に穴をあけて尿の通り道を作るストーマ型と、腸管を用いて膀胱の代わりとなる袋を作り手術前と同じように尿道より尿を排出する代用膀胱型の2種類があります。腫瘍進展の程度により、術後に化学療法が必要になる場合があります。
膀胱全摘除術では、手術のために切開した部位の感染や、手術後にお腹の中の癒着によって腸の通りが悪くなり、腸閉塞を起こすことがあります。また、ストーマ型の尿路変更術ではストーマの部位で尿路が狭くなり、うまく尿が排出されないことがあり、尿の通路を確保するためにステント(人工のチューブ)をストーマから腎臓まで入れておくことが必要になることがあります。ステント留置中は月1回の定期的交換を行います。
膀胱全摘術は順調に経過した場合、翌日より歩行が可能です。食事はお腹の状態を見ながら2~3日後より開始します。術後は尿の通り道が変わるため、排尿が順調に行われるようになってから退院となり、入院は3週間前後を要します。術後、外来通院は3~6ヶ月ごとで約5年間、その後は1年ごとで計10年間の経過観察を行ないます。
肺は胸の中にある臓器です。心臓をはさんで右肺と左肺があります。
背中から前胸部にかけて皮膚を約20~30cm切開します。
(この手術は進行した肺がんの方に行うことがあります。現在、通常は鏡視下手術を行っています。)
肺は右肺が3つ(上葉、中葉、下葉)、左肺が2つ(上葉、下葉)の肺葉に分かれています。標準的な肺がんの手術では、腫瘍を残さず十分に取るために腫瘍ができた肺葉を切除し(例えば右上葉の肺がんであれば右上葉を切除)、さらに腫瘍ができた肺葉から転移しやすいリンパ節も一緒に取り除きます。腫瘍進展の程度により、標準より肺を多くとらなければならない場合や、気管支や肺の血管を形成しなければならない場合があります。また肺の機能がよくない等の理由から、肺機能を温存するために標準より肺を小さく切除する場合もあります。肺がんの進行度によっては再発予防のため術後に抗癌剤が必要になる場合があります。
出血、感染(創感染、肺炎、膿胸)、肺や気管支からの空気漏れ、間質性肺炎、肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群によって発症する疾患)、リンパ節摘出後のリンパ液の漏れ(乳糜胸)などが主にあげられます。命に関わるような重篤な合併症が起きる確率は約1%程度(全国平均、当院の成績では約0.6%)です。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、手術の翌日に食事が取れるようになり、術後10日前後で退院します。術後、外来で約5年間の経過観察を行ないます。
当院では毎年、200~230例の乳がんの手術を行っています。
乳房の手術と、腋窩(わき)のリンパ節の手術を組み合わせて行います。乳房の手術には乳房全体を取り除く「乳房切除術」と、しこりとその周りの乳腺を部分的にくり抜く「乳房温存術(部分切除術)」があります。また、腋窩のリンパ節の手術は、腋窩のリンパ節全体(通常はレベル2まで)を取り除く「腋窩郭清」と、手術中にいくつかのリンパ節に転移がないかどうかを術中迅速診断で調べ、転移がない場合は腋窩郭清を省略する「センチネルリンパ節生検」があります。どの手術法を選択するかは、それぞれの患者さんによって違いますので、主治医とご相談ください。
また、乳房切除を受けられる患者さんでご希望がある場合には、形成外科と連携して乳房を再び作る「乳房再建」を行っています。インプラント(人工物)での再建、自家組織での再建いずれも行うことができます。
良性のしこりでも、増大する場合や診断のために必要な場合には摘出することがあります。その場合、日帰りの局所麻酔の手術か、数日入院して全身麻酔で行う手術になります。
出血や創の感染、創の血流不良による壊死(皮膚が一時的にかさぶたになりますが、時間がたてば治ります)などがあります。
出血は少量~多くても100ml程度までで、輸血をすることは通常ありません。腋窩郭清を行った場合には、腕のリンパ液が滞ってむくむ「リンパ浮腫」が起こる可能性があります。
手術方法によっても異なりますが、手術の前日に入院し、温存手術+センチネルリンパ節生検で約4~7日、乳房切除術+腋窩郭清で1~2週間の入院となります。手術翌日から食事ができ、普段と変わらず身の回りのことは自分でできるようになります。
腋窩郭清を受けられた患者さんは、理学療法士の指導によるリハビリを受けていただきます。退院後は創の状態によって1週間に1、2回程度通院していただきますが、手術結果によって術後の治療が決まれば、治療のスケジュールに沿っての通院になります。
子宮はお腹の下の方にある臓器で膣につながっています。
腰椎麻酔下に膣から子宮頸部を直径2-3cmの円錐形に切除します。
子宮の出口付近をレーザーメスにて円錐形に切除する手術のことです。前癌病変である異形成や上皮内がんが見つかった場合や、がんの広がりや浸潤の深さを調べる目的で行います。
術後1-2週間後に切除部から再出血を起こすことがあり、術後1か月は安静を要します。切除した子宮頸部に感染を起こすことがあります。
術後に頸管狭窄がおこることがあります。また術後の妊娠に関しては、流産や早産のリスクが少し増えるため、術後6か月間は避妊を指示しています。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、翌日から食事が取れるようになり、3日程度で退院します。術後、外来通院は最初1-3ヶ月ごとで、約6-12か月の経過観察を行ないます。
子宮はお腹の下の方にある臓器です。
子宮頸がんの手術ではへその横から恥骨の上まで縦に約20cmの切開を行なう必要があります。
実際の手術では、腫瘍が進展する部位や転移する可能性がある部位を充分に切除するために、子宮とその周囲の組織(膣・子宮支持組織)、付属器(卵巣・卵管)をすべて切除し、さらに周囲のリンパ節も取り除きます。切除が完了したあと、膣断端を縫い合わせて閉鎖します。腫瘍進展の程度により、術後放射線治療や化学療法が必要になる場合があります。
術中出血量が多い場合は輸血を行います。手術のために切開した部位(腹壁や膣断端、リンパ節廓清部位)に感染を起こすことがあります。また、手術後にお腹の中の癒着によって腸閉塞を起こすことがあります。まれですが術後に血管内の血栓によって、肺梗塞や脳梗塞を起こすこともあります。
手術により膀胱の神経の一部を切断せざるを得ないので、術後に排尿困難がおこります。またリンパ節郭清を行うことにより、下肢のリンパ浮腫が約30%の確率で起こります。閉経前に卵巣を摘出した場合、術後更年期障害の症状が出現します。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ2日程度で食事が取れるようになり、10-14日程度で退院します。術後、外来通院は最初1-3ヶ月ごとで、約5年間の経過観察を行ないます。
子宮はお腹の下の方にある臓器です。
初期の子宮体がんの手術ではへその横から恥骨の上まで縦に約20cmの切開を、進行症例ではへその上剣状突起下から恥骨の上まで縦に約30cmの切開を行なう必要があります。
実際の手術では、腫瘍が進展する部位や転移する可能性がある部位を充分に切除するために、子宮とその周囲の組織(膣・子宮支持組織)、付属器(卵巣・卵管)をすべて切除し、さらに周囲のリンパ節も取り除きます。切除が完了したあと、膣断端を縫い合わせて閉鎖します。腫瘍進展の程度により、術後化学療法が必要になる場合があります。
術中出血量が多い場合は輸血を行います。手術のために切開した部位(腹壁や膣断端、リンパ節廓清部位)に感染を起こすことがあります。また、手術後にお腹の中の癒着によって腸閉塞を起こすことがあります。まれですが術後に血管内の血栓によって、肺梗塞や脳梗塞を起こすこともあります。
術後に軽度排尿困難がおこることがあります。またリンパ節郭清を行うことにより、下肢のリンパ浮腫は約30%の確率で起こります。閉経前に卵巣を摘出した場合、術後更年期障害の症状が出現することがあります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ2日程度で食事が取れるようになり、10-14日程度で退院します。術後、外来通院は最初1-3ヶ月ごとで、約5年間の経過観察を行ないます。
鼻腔(びくう)と副鼻腔(ふくびくう)は、いわゆる「鼻」と「鼻の周囲の骨の中にある空洞」を構成する臓器です。同部にできるがんは、通常アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの症状と類似しています。
鼻副鼻腔の手術には、顔面や口の中を切開しておこなう方法と、鼻から内視鏡を挿入して切除をおこなう経鼻的な切除法があります。
腫瘍を確実に切除するため、周囲の正常骨の同時切除を要する場合があり、その範囲に応じて上あごの高まりや歯がなくなることがあります。さらに必要と判断される場合は転移の可能性がある首のリンパ節も同時に取り除きます(頸部郭清術:けいぶかくせいじゅつ)。切除が完了したあと、顔面の変形を最小限に留める目的で腹部などから皮膚や筋肉を移植して不足部分を補う再建手術をおこないます。
手術のために切開した部位の感染や、縫い合わせた場所がうまく癒着しないために創の治癒が送れることがあります。また、手術前と比べて鼻の掃除が頻回に必要になったり、顔に左右差が生じたりする場合があります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ7~28日程度で退院します。術後、外来通院は1~3ヶ月ごとで、約5年間の経過観察を行ないます。
口腔(こうくう)は、いわゆる「口の中」の大部分を占める臓器です。軟口蓋、口蓋垂、舌根部は口腔ではなく中咽頭に属します。
口腔の手術には、皮膚を切らずに口を開いて手術をおこなう口内法と、首のリンパ節を同時に切除するために首の皮膚を切開しておこなう外切開法があります。外切開法では下あごに沿うような皮膚切開をします。
腫瘍だけでなく周囲の正常部分も含めて確実に切除し、さらに必要と判断される場合は転移の可能性がある首のリンパ節も同時に取り除きます(頸部郭清術:けいぶかくせいじゅつ)。切除が完了したあと、残った粘膜を縫い合わせて傷を閉鎖しますが、切除範囲が広い場合は残った粘膜同士を縫い合わせることができないため、腕や足や腹部の皮膚や筋肉を移植して不足部分を補う再建手術をおこないます。
手術のために切開した部位の感染や、縫い合わせた場所がうまく癒着しないために唾液や食事が漏れることがあります。また、手術前と比べて食事や会話が困難になることがあります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ2~14日程度で食事が取れるようになり、7~28日程度で退院します。術後、外来通院は1~3ヶ月ごとで、約5年間の経過観察を行ないます。
中咽頭(ちゅういんとう)は、いわゆる「のど」の大部分を占める臓器です。
中咽頭の手術には、皮膚を切らずに内視鏡を用いて口から手術をおこなう口内法と、首の皮膚を切開しておこなう外切開法があります。外切開法では下あごに沿うような皮膚切開をします。
腫瘍だけでなく周囲の正常部分も含めて確実に切除し、さらに必要と判断される場合は転移の可能性がある首のリンパ節も同時に取り除きます(頸部郭清術:けいぶかくせいじゅつ)。切除が完了したあと、残った粘膜を縫い合わせて傷を閉鎖しますが、切除範囲が広い場合は残った粘膜同士を縫い合わせることができないため、腕や足や腹部の皮膚や筋肉を移植して不足部分を補います。
手術のために切開した部位の感染や、縫い合わせた場所がうまく癒着しないために唾液や食事が漏れることがあります。また、手術前と比べて食事や会話が困難になることがあります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ2~14日程度で食事が取れるようになり、7~28日程度で退院します。術後、外来通院は1~3ヶ月ごとで、約5年間の経過観察を行ないます。
下咽頭(かいんとう)は、喉頭の裏側で中咽頭と食道の間にある臓器です。口を開けても見ることはできません。
下咽頭の手術には、皮膚を切らずに内視鏡を用いて口から手術をおこなう口内法と、首の皮膚を切開しておこなう外切開法があります。外切開法では首を縦あるいはU字型に切開します。
腫瘍だけでなく周囲の正常部分も含めて確実に切除し、さらに必要と判断される場合は転移の可能性がある首のリンパ節も同時に取り除きます(頸部郭清術:けいぶかくせいじゅつ)。がんが進行している場合は切除範囲が声帯周囲に及ぶことも多く、その際には喉頭全摘出も同時におこないます。切除が完了したあと、残った粘膜が多ければ縫い合わせて傷を閉鎖します。切除範囲が広い場合は残った粘膜同士を縫い合わせることができないため、小腸を移植して食事の通り道を作り直します。
手術のために切開した部位の感染や、縫い合わせた場所がうまく癒着しないために唾液や食事が漏れることがあります。また、手術前と比べて食事が困難になることがあり、喉頭全摘出術を同時におこなった場合は声も失われます。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ10~14日程度で食事が取れるようになり、21~35日程度で退院します。術後、外来通院は1~3ヶ月ごとで、約5年間の経過観察を行ないます。
喉頭(こうとう)は、のどぼとけの奥にある臓器です。
喉頭の手術には、皮膚を切らずに内視鏡を用いて口から手術をおこなう口内法と、首の皮膚を切開しておこなう外切開法があります。外切開法では首を縦あるいはU字型に切開します。
腫瘍だけでなく周囲の正常部分も含めて確実に切除し、さらに必要と判断される場合は転移の可能性がある首のリンパ節も同時に取り除きます(頸部郭清術:けいぶかくせいじゅつ)。切除範囲の広さで喉頭全摘出術か喉頭亜全摘出術か喉頭部分切除術かが決まります。切除が完了したあと、残った粘膜を縫い合わせて傷を閉鎖します。
手術のために切開した部位の感染や、縫い合わせた場所がうまく癒着しないために唾液や食事が漏れることがあります。また、喉頭全摘出術をおこなった場合は声が失われます。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ2~14日程度で食事が取れるようになり、7~28日程度で退院します。術後、外来通院は1~3ヶ月ごとで、約5年間の経過観察を行ないます。
唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺等を指し、唾液を作るための臓器です。
耳下腺がんでは耳から下あごの周囲にかけて、顎下腺がんと舌下腺がんでは下あごに沿うような皮膚切開をします。
腫瘍だけでなく周囲の正常部分も含めて確実に切除し、さらに必要と判断される場合は転移の可能性がある首のリンパ節も同時に取り除きます(頸部郭清術:けいぶかくせいじゅつ)。がんが浸潤している場合、やむを得ず顔面神経を切除する場合があります。その場合は首や足の神経を移植して顔面の麻痺症状を軽減する神経再建手術をおこないます。
上記顔面神経麻痺の他に唾液が漏れる症状が長引くことがあります。通常は唾液の分泌減少で困ることはありません。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ3~7日程度で退院します。術後、外来通院は1~3ヶ月ごとで、約5年間の経過観察を行ないます。
甲状腺は首の最下方にある、甲状腺ホルモンを作るための臓器です。
甲状腺がんでは首の下の方で鎖骨に沿うような皮膚切開をします。
腫瘍だけでなく周囲の正常部分も含めて確実に切除し、さらに必要と判断される場合は転移の可能性がある首のリンパ節も同時に取り除きます(頸部郭清術:けいぶかくせいじゅつ)。がんが浸潤している場合、やむを得ず声帯を動かす反回神経を切除する場合があります。その場合は声帯の麻痺が生じて声や食事に影響が出ますので、首の神経を移植して麻痺症状を軽減する神経再建手術をおこないます。
上記反回神経麻痺による声のかすれや食事のむせの他に、甲状腺機能低下症や低カルシウム血症症状になることがあります。その場合は甲状腺ホルモン等の補充療法が必要となります。
術後に合併症がなく順調に経過した場合、およそ3~7日程度で退院します。術後、外来通院は1~3ヶ月ごとで、約10~20年間の経過観察を行ないます。
当センターでは、脳腫瘍に対する開頭腫瘍摘出術が最も多いため、これについての一般的な事項を説明します。
一般に脳腫瘍患者さんは、頭蓋内に腫瘍を認め、周囲の浮腫と共に、正常脳を強く圧迫している場合が多いため、手術の目的は、主に①腫瘍の病理診断、②腫瘍摘出による正常脳の圧迫解除(減圧)にあります。
全身麻酔がかかった後、開頭部位によって、仰臥位・側臥位・腹臥位をとり、頭部はピンで固定します(図1)。皮膚切開は腫瘍を取り囲むように設けることが多く(図2)、筋肉・骨膜を切開すると、頭蓋骨が露出します(図3)。頭蓋骨は、まずドリルで数カ所に穴をあけ、電動鋸でこれらを繋ぐことで、骨片を一塊にしてはずします。次いで、硬膜を開くと脳の表面が観察でき、腫瘍が確認されれば、顕微鏡を使って、正常血管や神経を傷つけないように、可及的に摘出します(図4)。摘出後、十分な止血を確認し、硬膜を閉じ、骨片を戻してプレートで固定、筋肉・皮膚を縫い合わせて手術が終了します(図5)。
図1(右下側臥位)
図2(皮膚切開)
図3(開頭)
図4(顕微鏡下腫瘍摘出)
図5(閉創後)
手術操作により、手術部位によっては、四肢麻痺・知覚障害・言語障害を含むあらゆる神経障害、精神障害を含む意識障害、術中死を含む生命の危険があります。その他、予測不能の障害が生じる可能性があります。
全身の合併症(心肺合併症、臓器不全、静脈血栓症など)に加え、術中・術後の脳内出血、脳梗塞、脳浮腫、感染症(髄膜炎、脳膿瘍、創部感染)、水頭症、髄液漏などの可能性があります。
術後一時的に、脳が腫れ、症状の悪化を見ることもありますが、特に重大な合併症がなければ、術後1週間目に抜糸・抜鉤し、創部の治癒が確認できれば、退院できます。しかし、病理診断の結果で悪性所見が出た場合は、引き続き、放射線や化学療法を行います。また、麻痺・言語障害などでリハビリが必要な方は、リハビリ病院への転院が必要となります。
皮膚がんで低悪性度のものや、高悪性度でも初期のものは、手術治療が選択されます。小さな切除ですむ場合は局所麻酔で、通常は日帰り手術が可能ですが、切除後の皮膚欠損が大きくて植皮(身体の他部位から皮膚を移植)や皮弁(欠損の近くの皮膚をずらす・回す等して修復)を要する場合は全身麻酔、入院が必要です。植皮や皮弁で修復する場合、移動した皮膚が安定するまで患部の安静を要します。
悪性黒色腫などの転移しやすい皮膚がんでは、がん自体の切除に加えリンパ節の切除が必要な場合もあります。がんの種類により、リンパ節が腫れてなくても、細胞レベルの転移を早期に見つけるためリンパ節の組織検査を行う場合もあります。
植皮や皮弁の場合、移動した皮膚の血流が悪くなり壊死することがあります。小範囲であれば軟膏等で治しますが、広範囲の場合は再手術を要します。再手術を要する確率は0.5%以下です。
順調に経過した場合、術後2週程度で退院です。
ただし安静や入院の期間は、顔など動きにくい部位ではより短く、足など動いたり体重のかかる部位ではより長くなります。
整形外科では四肢の骨、筋肉、皮下組織に発生した腫瘍の手術を行います。
周囲の組織を合併切除せずに腫瘍のみの切除を行う手術方法です。良性軟部腫瘍が適応となります。
周囲の組織(筋肉や皮膚、骨など)を腫瘍とともに合併切除する手術方法です。悪性軟部腫瘍が適応となります。皮膚を合併切除した場合は皮膚移植や筋皮弁を併用します。切除範囲内に神経や血管が存在する場合はアルコール処理で神経血管を温存したり、人工血管を使用し可能な限り患肢温存を目指します。
骨腫瘍部に開窓(骨に穴をあける)を行い、腫瘍を肉眼的に見えなくなるまで掻爬します。良性骨腫瘍が適応となります。腫瘍を掻爬すると骨欠損が生じますので欠損が大きい場合には人工骨や骨セメント、自家骨移植を行います。
腫瘍を安全な切除縁(腫瘍が残存していないと考えられる範囲)で骨を一塊として切除します。広範囲の骨欠損ができるため、再建が必要となります。再建方法はいろいろありますが当院では人工関節や放射線処理骨での再建を中心に行っています。
合併症は切除する範囲に含まれてしまう筋肉、神経により筋力低下や関節の可動域制限、神経麻痺が起きます。また、広範囲切除後の感染率が軟部腫瘍の場合3-8%、腫瘍用人工関節再建の場合4-10%程度と報告されています。
耳下腺がんなどで顔面神経が切除された場合は、すぐに他の部位から神経を採取して顔面神経とつなぐ手術を行います。採取する神経は大耳介神経、頚神経ワナ、腓腹神経(下腿の神経)などです。すでに完成してしまった顔面神経麻痺に対しては、大腿筋膜などを採取して口唇や頬部をつり上げ、安静時の対称性を保つための静的再建術や、広背筋という背中の筋肉を遊離皮弁として移植し、動きの獲得を目指す動的再建術の2種類があります。
大耳介神経や腓腹神経を採取した場合には、その神経の支配領域の知覚麻痺がおこります。また遊離皮弁による動的再建を行う場合には初めのところで述べた、血管閉塞による壊死の可能性があります。
がんセンターの形成外科では頭頸部がん(舌がん、歯肉がん、頬粘膜がん、上顎がん、下咽頭がん、頸部食道がんなど)の再建手術をメインに行っています。形成外科が手術に入るのは、それらの部位に径4㎝以上の欠損が生じる場合です。主に遊離皮弁という、顕微鏡下に径1mmから2mmの細い血管をつないで組織を移植することをします。 組織を採取する部位は、前腕、腹部、腓骨、大腿、小腸の一部などです。
遊離皮弁の手術では約4%で血管が詰まってしまうことがあります。その場合、すぐに血管を縫い直す手術を行いますが、それで約60%は助かりますが、残りの約40%は壊死になります。壊死になった場合は、ほかの皮弁を取り直したり、そのまま縫縮したり、様々な対応を行います。
大きく分けて、自分の組織を使う方法と、以前から豊胸術に用いられていた乳房インプラント(人工物)を使う方法があります。現在ではどちらの方法も、乳がん切除後の患者さんには保険が適応されるようになりました。自分の組織を使う場合は、腹部や背部の組織を使います。乳房インプラントを入れる場合は、ほとんどの場合、エキスパンダーという組織拡張器でインプラントが入れられるように組織を拡張してからインプラントを挿入するという2回の手術が必要になります。乳頭・乳輪が切除された場合、乳頭・乳輪の再建手術も保険で行えます。
術後の一般的な合併症である出血・感染の問題はどちらの方法でも起こりえますが、特に人工物を用いた場合は、一端それを取り出して、最初からやり直さなければならなくなることがあります。また乳房インプラントの寿命は10年前後と言われており、10年に一度くらいで新しいものに入れ替える必要があるとされています。